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採用力を圧倒的に高める「スクラム採用」とは? 最新事例と成功のポイントを徹底解説!

全社員で採用活動を行うスクラム採用という言葉を知っていますか?

近年、エージェントや採用媒体を経由する転職活動だけでなく、リファラルやTwitterなどを経由した転職活動が盛んになってきたことで、より社員との接点を増やした「面」での採用活動が、重要になってきています。

特に成長の著しいスタートアップでは、採用力が企業の成長を左右するため、この転職活動の変化に対応していく必要があるでしょう。

そうした背景から、もはや人事担当者だけでは、優秀な人の採用が難しい時代になってきています。そこで注目されているのが、現場の社員主導による「スクラム採用」です。

今回は、スクラム採用とは何か、なぜ今必要なのか、それを成功させるためのポイントは何かについて、SELECKで取り上げた事例3選と、3月13日に開催された「Scrum Recruiting LABO #1」のイベント内容をもとに解説します。

<目次>

  • 「スクラム採用」とは? リファラル採用との違いを解説
  • なぜ、スクラム採用が必要なのか?
  • スクラム採用の実践による、5つのメリット
  • スクラム採用を成功させるポイントとは…?【事例3選】
  • 最新のスクラム採用の実践例(メルカリ社、hey社)【イベント】

「スクラム採用」とは? リファラル採用との違いを解説

スクラム採用とは、「社員主導型の採用活動」のことを意味します。株式会社HERP代表の庄田 一郎さんにより、以下のように定義されたものです。

「この言葉は、チーム開発の手法としてインターネット系企業で広く取り入れられている、スクラム開発と同様に、共通のゴール(採用目標の達成)のために、全社員が一丸となって採用活動に取り組むことを意図して、弊社がネーミングしたものです。」

引用元:現代の要請を満たすースクラム採用という考え方とその実践ー

スクラムとは、アジャイル開発のひとつとして、エンジニアチームなどで広く取り入れられている手法です。

その特徴として、

  • 共通のゴールに向かって、チーム全員で作り上げる
  • 経験に基づき、生じた課題に対して柔軟に対応していく
  • プロダクトオーナーが、全体のプロジェクトマネジメントを行う

ことが挙げられます。この思想を取り入れたのがスクラム採用であり、「人事はプロダクトマネージャー(以下PM)、現場の社員が主体」となって採用活動を推進します。

数年前から、社員が知人を紹介する「リファラル採用」が注目を高めていますが、これもスクラム採用の実践例のひとつだと言えます。

スクラム採用では、声掛けによるリファラル採用だけでなく、求人要項やスカウト文面の作成なども含め、採用に関するすべての活動が対象範囲になります。

HERP社の定義によると、スクラム採用には「現場への権限委譲」「成果の可視化」「採用担当のPM化」という3つの要素があります。

人事の目線から見ると、採用業務のワークフローを分解した上で、社内の最適な担当者に権限を委譲します。そして自らは、採用に関する知見を現場にインプットし、各プロジェクトをマネジメントする役割を担います。

さらに、採用活動に関する情報をオープンにし、成果も可視化することで、採用のPDCAを現場主導で回すことが可能です。

なぜ、スクラム採用が必要なのか?

では、今なぜ、スクラム採用が企業に必要なのでしょうか?

採用のマーケットは、従来と比べて変化の激しい時代になっています。その中で、スクラム採用のニーズが高まる背景としては、以下が考えられます。

 

1:採用のチャネルが多角化している

従来の採用活動は、転職エージェントや採用媒体などが主流でした。ですが、最近は「Twitter採用」などのSNS経由や、副業からの転職、リファラル採用の高まりなど、採用のチャネルが多角化しています。

一方で、各チャネルには特性があるため、採用単価・即効性・定着率の観点で、はっきりとしたメリット・デメリットが存在します。

上図は、各手法のメリット・デメリットを比較した表になります。それぞれの特性を全社員が理解し、職種や状況に応じて最適な施策を打つことが大切です。

 

2:優秀な人ほど「リファレンス」が重要な時代

また、特にIT・ベンチャー界隈では、転職のフローに変化が出てきています。

従来の転職活動は、レジュメを書き、転職エージェントの紹介やスカウトサービスへの登録によって、次の職場を探すことが一般的でした。

ですが、この転職顕在層は、実際には氷山の一角にすぎません。特に優秀な方ほど、今の職場でも活躍されていることから、従来の採用手法では接点を持つことが困難になってきています。

一方、リファラルやSNS経由など、より個人がつながりやすくなった時代においては、表立った活動をしていない転職潜在層にいかにアプローチできるかが重要です。

そこで、人事だけでなく社員1人ひとりの接点を増やし、企業としての「面」を広くすることが、採用力を高めることにつながります。

 

3:現場が人材要件やポジションを一番理解している

また、優秀な方にアプローチできたとしても、採用のミスマッチによる離職が起こっては意味がありません。それを防ぐためにも、現場の社員が採用業務に関わっていくことが大切です。

なぜなら、募集ポジションの人材要件や業務内容を最もよく理解しているのは、現場の社員だからです。

こうした背景から、全社員が採用活動に参画する「スクラム採用」のニーズが高まっています。

 

スクラム採用による、5つのメリット

ここで、スクラム採用の導入によるメリットを、以下にまとめます。

1:人事だけではリーチできない、優秀な人に会える

2:分散化したチャネルに対し、効率的な採用活動を行うことができる

3:人事担当者の「疲弊」を防ぐ

4:「誰と一緒に働くのか」を社員自ら考え、実行できる

5:社員のエンゲージメントを高める

つまり、1〜4を通じて「企業の採用力を高める」ことが最大のメリットになります。

また、スクラム採用の実践により、自社の魅力の言語化にも取り組むことになります。その活動を通じて、社員のエンゲージメントが高まり、自発的な採用広報につながるというメリットもあります。

スクラム採用を成功させるポイントとは…?【事例3選】

スクラム採用という言葉の定義は新しいものですが、それに近い取り組みをすでに実践されている企業があります。

そこで、SELECKで過去取材した企業の事例から、「スクラム採用を成功させる4つのポイント」について、解説したいと思います。

<スクラム採用を成功させる4つのポイント>

1:経営陣のコミットメントが高く、全社に意義を浸透させる

2:現場に権限を委譲する

3:採用関連の情報が一元管理され、必要に応じて社員がアクセスできる

4:現場社員が採用活動に参加しやすい環境や仕組みがある

① ヘイ株式会社

まず、ヘイ株式会社では、人事と現場の役割を明確にし、現場への権限委譲を徹底しています。

採用って、基本的には「各チームの責任」だと思うんですね。「どういう人が欲しいのか」「どの人を採るか」を決めるのは、その人と一緒に働く各チームの人たちがコミットすべきだと考えています。

なので、一次面接を設定した後は、採用管理などのサポートはしていきますが、候補者の惹きつけや、合う合わないの判断は、すべて各チームに任せています。

また、「採用は全員の仕事」という考えをベースに、毎週「Hello hey」という会社説明会を開き、社員の9割が参加しているそうです。

▼実際の「Hello hey」の様子

参考記事:採用チームの役割は「hey」という名のプロダクト開発!年60人の採用を目指す戦略とは

 

② 株式会社PR Table

株式会社PR Tableでは、全社PRパーソンという思想に基づき、採用活動に対しても、全社で取り組んでいます。

その取り組みをスムーズに行うため、面接のフィードバックや選考プロセスなど、オファー時の給与を除くすべての情報を、全社員にオープンにしています。

また、HERP上のすべてのコミュニケーションは、全社員にオープンにされています。

例えば、面接のフィードバックや選考のプロセスなど、オファー時の給与を除くすべての情報が開示されています。

そして、情報が更新されると関係者へのメンション付きでSlackに通知されるので、見逃すことなく社内のやり取りも円滑に行えていますね。

▼実際に公開されているフィードバック

現場に権限委譲するためにも、社員への情報オープン化はひとつの重要なポイントだと考えられます。

参考記事:企業は「モテる努力」をせよ!「好き・嫌い」を判断軸に、採用ミスマッチを減らす方法

 

③Fringe81株式会社

また、Fringe81株式会社では、全社的な取り組みをプロジェクト化し、人事がPMの役割を担っているといいます。

現場主導の採用や組織改革を行うため、人事担当者が工数の調整をしたり、スケジュール管理をしたりして、活動しやすいような環境を整えています。

さらに、事業部の成果だけでなく、組織貢献も評価軸に取り入れることで、目標として追いやすい体制を作っています。

一方で、ブレーキ的な役割も、プロジェクトマネージャーの仕事です。例えば、主業務の仕事とサイドプロジェクトの活動のバランスを、私が間に入って調整することもあります。(中略)

こうした活動は任意ではありますが、「組織貢献」という軸できちんと評価される仕組みになっています。

そのため、上長とメンバーとの月イチ面談の中でも、主業務だけでなく、「組織貢献」に対する目標も設定するようにしています。

▼実際の「目標管理シート」の一部(項目のひとつに、「組織貢献目標」がある)

参考記事:人事は組織の「プロマネ」。社員の8割がサイドプロジェクトを推進する自律型組織とは

最新のスクラム採用の実践例(メルカリ社、hey社)【イベント】

こうしたスクラム採用を加速するため、HERP社とYOUTRUST社が共催するイベントが「Scrum Recruiting LABO」です。

SELECKでも早速、先日3月13日に開催された第1回のイベントに参加してきました。

会場は80名ほど参加する大盛況をみせ、Twitter上でも「#scrum_recruiting」のハッシュタグで、盛んに実況が行われていました。

スクラム採用を実践する、メルカリの石黒さん、heyの佐俣さんのパネルディスカッションから、両社のスクラム採用の取り組みとそのTipsについて、抜粋してお伝えします。

① 株式会社メルカリ 石黒卓弥さん

株式会社メルカリでは、創業の初期から「リファラル採用」を推進してきました。入社経路におけるリファラル比率は、50%〜60%の割合で推移していると言います。

採用だけでなく、あらゆる人事施策において、ミッション実現のための「バリュー」に基づいた設計をしています。

▼同社の掲げるバリュー

・Go Bold – 大胆にやろう

・All for One – 全ては成功のために

・Be Professional –  プロフェッショナルであれ

そして、スクラム採用の実践においては、各領域のプロフェッショナルがそれぞれの価値を発揮することで、人事担当以外のメンバーが活躍しているそうです。

また、経営陣のコミットメントも非常に重要で、週1で開催される全社会議の場においても「一緒に働きたいと思える人を連れてこよう」という発信があると言います。

スクラム採用を進めるためには、バリューからの落とし込みと、経営陣のコミットメントが重要そうです。

 

② ヘイ株式会社 佐俣奈緒子さん

ヘイ株式会社では、「組織づくりはプロダクト開発と同じ」という思想のもと、採用においてもマーケティング思考で施策を考えています。

スクラム採用の実践においては、人事を現場の役割と明確にしていることがポイントとして挙げられます。

その役割分担とは、人事は「選考に乗るまでのリード獲得」を担い、人材要件の定義や、選考フローにおける意思決定などは、現場に委譲するということです。

また、EX(従業員体験)を高めることで、社員が自発的に採用活動に参画するような組織風土を作っていることも特徴的だと言えます。

メルカリ社、hey社ともに、スクラム採用を推進するためには「経営陣のコミットメント」「現場主導で行うための権限委譲」などが鍵となっているようです。また、前提として、「いい会社である」ための組織づくりも重要です。

現代の転職活動に合わせた「スクラム採用」、ぜひ先進企業の事例をご参考に取り組まれてみてはいかがでしょうか。

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