• 株式会社ビズリーチ
  • デザイン戦略推進室 デザイナーサクセスグループ
  • 佐々木 奈央

デザイナーの役割、社内に正しく伝わってますか? 現場との協業を生むデザイン組織の在り方

〜デザイン組織のフィロソフィー「We DESIGN it.」を定め、 社内外向けにブランディングを推進。デザイナーと現場の協業を生むためのブランディング活動とは〜

「デザイナー」について「デザインワークをする人」という印象を持っている人は、まだまだ多いのではないだろうか。

2009年の創業以来、急成長を続ける株式会社ビズリーチでは、デザイン組織の強みや目指したい姿を言語化するため、「We DESIGN it.」というフィロソフィーを定義。

その浸透を目的に、デザイン組織の「インナーブランディング」の活動を担うデザイナーの佐々木 奈央さんは「良いデザインは、デザイナーだけでは作れない」と語る。

そこで、デザインやデザイナーについて社内に正しく理解してもらうために、新しく入社したメンバーに対する研修資料の刷新や、全社朝会での「相手目線に立った」共有・呼びかけを実施。

さらに、採用候補者など社外のステークホルダーに対しての認知も高めるため、イベント参加などのアウターブランディングの活動も強化しているそうだ。

今回は佐々木さんに、ビズリーチにおけるデザインの在り方や、インナーとアウター両面のブランディング活動について、詳しくお伺いした。

組織の拡大に伴い、デザイナーとしての共通認識が希薄に

私は、新卒で入社したゲーム会社で、3年ほど広報として働いていました。もともとデザイナー志望だったこともあり、改めて学校に通い直して、そこからWebデザイナーとしてのキャリアが始まりました。

そして、Webデザインの受注制作などを中心としたフリーランスや起業を経験し、2010年の8月にビズリーチに入社しました。

当時のビズリーチは10名ほどの組織で、デザイナーとしては1人目の社員でした。即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」のUI設計やLP改善をはじめとして、あらゆるサービスにデザイナーとして携わってきた形です。

弊社では、2013年からデザイナーの新卒採用が始まり、そこから加速度的に人が増えていきました。会社の規模に伴ってデザイン組織も拡大し、現在は70名ほどのデザイナーが所属しています。

現在のデザイン本部は、「プロダクトデザイン室」「コミュニケーションデザイン室」「デザイン戦略推進室」の大きく3つに分かれています。

私は、その中のデザイン戦略推進室で、主にインナーブランディングやデザイナーの人材開発を担当しています。

もともと創業初期は、みんな同じフロアで、上長からもらうフィードバックも周りに聞こえるような環境で。

特に何かを仕組みとして作らなくても、デザイナーの一体感であったり、デザインってこうあるべきだよね、という共通認識が自然と持てていました。

それが人が増えたことで、デザイナー同士の物理的な距離が離れてしまい、このままでは大切にしている価値観が薄れてしまいそうな不安を感じるようになったんです。

デザイン・フィロソフィー「We DESIGN It.」と「5つの約束」を定義

そこでデザイナーが50名近くになった頃、デザイン組織の強みや目指したい姿を改めて言語化するため、デザイン・フィロソフィーを作ることになりました。

最初は「ミッション・ビジョンを作ろう」という話からスタートしたのですが、全社や事業部のミッション・ビジョンと混同してしまわないように、フィロソフィーとして定義することになりました。

その過程で、デザイナー全員が参加するワークショップを複数回にわけて実施し、デザイン組織の強みや課題感、目指したい姿などについてみんなでポストイットに書き出していきました。

そうして半年ほど議論を重ね、決まったのが「We DESIGN it.」です。

▼デザイン・フィロソフィー「We DESIGN it.」(※画像は編集部にて作成)

この「We」はデザイナーだけでなく、ビズリーチのすべての仲間とともに、という思いが込められています。

さらに、その世界観を実現するための行動指針として「5つの約束」を定義しました。

今できていること・できていないことを含めて、大切な価値観を思い出しやすい言葉でまとめたいと思い、ワークショップで多く出てきた言葉をもとに定めました。

現場との協業を生むため、インナーブランディングを推進

フィロソフィーにもある通り、デザインって、私たちデザイナーだけで作れるものではないと思っているんですね。事業部のメンバーとコラボレーションをして初めて、良いデザインが作れると考えていて。

一方で、当時はデザイナーが事業部の中で閉じてしまい、関係するメンバーが限定的になっている、という課題感がありました。

そこで、デザインとはどういうもので、デザイナーがどのような価値を発揮出来るのか、を正しく理解してもらうため、インナーブランディングの活動を始めました。

まずはじめに、発信のタッチポイントをどこに持つべきかを考えるため、入社後の「エンプロイー・ジャーニーマップ」を作成しました。

その中で、「キャリア・新卒入社時研修」と、定期的に行われる「全社朝会」を非デザイナーとのタッチポイントとして、デザイナーの発信強化に取り組んでいます。

中には、今までエンジニアやデザイナーなどのプロダクト開発のメンバーとあまり関わったことがないメンバーもいるので、「アートとデザインの違い」などの基本から伝えるようにしています。

またデザイナーの仕事についても、デザインワークだけでなく、課題の仮説検証から入ることなどを伝えています。

以前は、どちらかというと組織体制のような内容を中心にお伝えしていたのですが、相手の理解度にあわせてひとつずつ地ならしをするような構成に変えました。

全社朝会では、他職種との関係性を意識してメッセージを伝える

もうひとつは、週に1度の全社朝会における発表です。この場では、各事業部やプロジェクトからの発表タイムが設けられていて、1枠10分程度で発信しています。

デザイン組織としては、この場を活用して、隔月ペースで実際にデザイナーが関わった案件について発信しています。

ここで大切にしているのは、毎回伝えたいテーマを決めること、そして他の職種との関係性を意識することです。

例えば、イベント企画を担当するデザイナーが発表した際には「うちの会社のイベントの回数を知ってますか」という導入から始めるんですね。

そして「デザインの力でお客様の満足度をあげましょう」といったメッセージングで、常に「あなたと私」という関係性を意識しています。

また、どのタイミングでデザイナーが関わったのかを意図的に伝えることも重要です。

というのも、要件定義の時点からデザイナーがいるとスムーズだということが、まだまだ浸透しているとはいえなくて。

そのためには、プロジェクトの最初からチームにデザイナーがいることが望ましいのですが、これは現場の理解がないとできないことなので、小さな実績を積み重ねながら、繰り返し伝えるようにしていますね。

アウターブランディングは、インナーのイメージと統一する

また、インナーブランディングだけでなく、社外に対しても正しいイメージを伝えることが重要です。

アウターブランディングでは、BIZREACH DESIGNER BLOGの運営やSNSの発信、デザイナーイベントの企画・運営などを行っています。

テレビCMなどの効果もあり、おかげさまでビズリーチサービスの認知は少しずつ上がってきているものの、デザイナーやデザイン組織についてはあまり知られていないことが課題でした。

そのため、多面的に発信の機会をつくり、私たちのことをより多くの人に知ってもらい、デザイナー1人ひとりが輝くことを活動の目的としています。

そのなかでも、2018年11月に開催された「Design Scramble 2018」は、特に大きなイベントでした。

渋谷にある企業が20社以上参加したのですが、ビズリーチの場合はオフィスを開放して、カフェを提供したり、ライブでのデザインコーディングを行ったりしました。

サービスデザインのワークショップのような「一緒に学ぶ」コンテンツも実施して、1日で500名くらいの方に来ていただけましたね。

この際に、We DESIGN it.のロゴをモチーフにしたステッカーやサコッシュを作り、アンケートを答えてくださった方に配布しました。これらはイベント後にも活用していただけるので、ブランディングに効果的だったと思います。

ひとつずつ実績を重ね、現場とのコラボレーションを増やしたい

2018年の8月からインナーブランディングを始めて、少しずつ、現場とデザイナーとの協業が増えてきたなと感じています。

一方で、まだ事業部に切り込めない部分はあるなと感じているので、実績を積んでいきたいと思っていて。

少しずつでも実例が溜まっていけば、組織全体への理解浸透が進んで行くと思うので、今はその足場づくりのフェーズですね。

最近の例でいうと、人事とデザイナーが共同して社内イントラネットのリニューアルに取り組んでいます。

今までは、サイト構造の要件定義などを人事主導で進めていたのですが、話を聞いてみると「イントラに掲載している情報なのに、問い合わせが多くきて対応工数がかかる」といった課題がありました。

そこで、情報の内容精査や、サイト構造、そして運用方法の見直しなどにもデザイナーが一緒になって着手していく予定です。こうした活動を伝えることで、また次の依頼につながるといいな、と考えています。

今後も施策を増やしながら、社内メンバーとのタッチポイントをもっと増やして、インナーブランディングを推進していきたいと思っています。

そしてアウターに関しては、きれいなものだけ出したとしても、中の人が違うと思ったらそれはブランディングとして成功じゃないと思っていて。

ビズリーチのデザイン組織やデザイナーを、きちんと中と外が一致するような形で、今後も伝えていきたいと思います。(了)

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