- ベルフェイス株式会社
- インサイドセールス支援事業部 SDRチーム マネージャー
- 横山 豊
7割のリードをどう「追客」する? ベルフェイスの成長を加速する、SDRチームの挑戦
〜「有効商談」を3つのランクから定義。企業属性と行動データから優先順位をつけ、売上につながる商談を劇的に増加した、SDRのノウハウを公開〜
BtoBのSaaSプロダクトにおいて、マーケとセールスの橋渡し役となり、成長のカギを握るのがSDR(※)だ。
※Sales Development Representative:マーケティングで獲得したリードにアプローチし、有効商談を獲得する役割を担う
営業に特化したWeb会議システム「bellFace」を展開し、急成長を遂げるベルフェイス株式会社では、2018年10月よりマーケティングを強化。同年11月には、オンライン経由のリードを以前の3倍近くまで増加させることに成功した。
一方で、セールスの対応が追いつかず、増加したリードに対して効率よくコールできていないという課題を抱えていたという。
そこで、2018年12月にSDRチームを発足。KPIの設定や、商談基準の明確化、ITツールを活用した顧客ターゲットの管理やコール方法を変えたことで、有効商談数が以前の約2倍に増加したそうだ。
今回は、同社でSDRチームのマネージャーを務める横山 豊さんに、同チーム発足の背景から具体的なノウハウについて詳しくお伺いした。
マーケ強化で約3倍に増えたリードに、たった2人のセールスが対応
私は新卒で入った会社で、地方・中小企業のWebマーケティング支援に携わっていました。
その前職でオンライン営業のツールを探している時に、たまたまリリースしたばかりのbellFaceに出会ったんですね。2015年に導入が決まり、ユーザーとして活用していました。
その後、縁あって2017年の2月にベルフェイス社に入ることになり、以来ずっと営業をしてきました。現在は、SDRチームの責任者を務めています。
bellFaceは、リリース初期からほぼバイラル(クチコミ紹介)で顧客を増やしてきました。オンライン広告やセミナーをやらずとも、月150件くらいの問い合わせがあり、インバウンドのリードでずっと成長してきたんですね。
ただ当時のマーケティングについては、セールスのメンバーが兼務の形でイベントやMAなどに取り組んではいたものの、十分にやり切れていない状況でした。
そこで事業成長を加速するため、会社としてリード獲得に注力する方針となり、2018年の10月にマーケティングチームを発足しました。
4人のメンバーが垂直立ち上げの形で、MAや広告運用、イベント、Webサイト改善やオウンドメディア運営などのマーケティング施策を、次々に実行していきましたね。
さらに、10月に開始した電車やタクシーなどの交通広告との相乗効果もあり、同年11月には、eBookや資料請求などのオンライン経由のリードが以前の3倍近くに増えました。
一方で、セールス側との連携がうまくいかなくなってきて…。当時は初動対応の専任が2人いたのですが、とにかく来たもの全てに対応する形だったので、効率よくアプローチできていない状態でした。
なかなか有効商談につながらず、モチベーションが下がってしまう、という悪循環に陥り始めていましたね。そこでリードをしっかり見極めて商談を創出していくため、2018年の12月にSDRチームを発足しました。
SDRチームの体制は、リードの獲得経路ごとに役割を分担
現在の組織体制は、マーケティング、SDR、セールスでチーム分けし、それぞれの役割を明確にしています。
▼赤枠の部分が、SDRチームの担う範囲
マーケティングチームでは「リード数」をKPIに置いていますが、ターゲット企業へのアプローチに注力するため、サブKPIとして「ターゲット率」をモニタリングしています。
そして、マーケティングチームが獲得したリードから商談を獲得するのが、SDRチームになります。
SDRチームは獲得経路ごとに分担していて、資料請求に2名、eBookに1名、セミナー・展示会に1名という体制になっています。というのも、経路によって商談化する難易度が異なるんですよね。
やはり明確な関心のある資料請求よりもeBookやセミナー・展示会の方が商談獲得が難しいですし、必要なスキルも異なります。
SDRチームでは、メンバー全員がどのソースにも対応できるように、現在は月ごとに担当を変えてコールしています。
また、ノウハウ共有のため、隣の人のコールが聞こえるような席配置にしたり、日々の進捗や刺さったトークなどを共有する場を設けています。
Marketoセールスインサイトを導入し、ユーザー行動を可視化する
リストからアタックする優先順位は、企業属性と行動で決めています。
顧客のターゲットリストは、SalesforceとABM(※)ツールの「FORCAS(フォーカス)」を連携して管理しています。
※Account Based Marketing:ターゲットアカウントに集中し、データを活用してマーケティング戦略を行うマーケティング手法
FORCASでは、成約確度の高いアカウントを特定し、従業員数やMAツールの導入有無などを自動取得したリストが生成されます。
▼「FORCAS」の管理画面
このリストに加えて、行動データを可視化するために活用しているのが、Marketoが提供する「Sales Insight(セールスインサイト)」というツールです。
例えば、資料請求からリードを獲得した際、このツールではどの事例ページを見たのかがデータでわかります。
▼「Sales Insight」の管理画面
SDRでは、コンタクト率やアポ率などの数値をモニタリングしていますが、いずれもカギとなるのがコールのタイミングです。
というのも、コール先が営業マンになるので日中はオフィスにいないことが多いんです。なので、オフィスに戻るお昼と夕方の時間帯が、いわばゴールデンタイムなんですね。
その限られた時間の中で、優先順位をつけてコールしていく必要があって。特に、初回コールでつながる先は全体の20%ほどしかないので、残りの80%をどう「追客」していくかが重要です。
そこでFORCAS上の属性とセールスインサイトの行動履歴からリストを精査し、ホットなリードからコールするようにしています。
例えば、資料請求時に事例ページまで見ている人はアポ率が高い、ということがデータからわかっていますね。
その場合は、どの企業の事例を見たかまでわかるので、コールの際には近しい業種や規模感の企業を数社ほどバイネームで挙げることで、商談獲得の確度をあげています。
また、基本となるコール回数の上限については、ターゲット顧客5回・非ターゲット顧客3回と決めています。ここを明確にしないと追客中のリストが溜まり、効率が悪くなってしまうので、割り切ってマーケティングチームにリードを戻していますね。
商談成立に至らなかった7割のリードを、いかに掘り起こすか
ナーチャリングリストには、一度もコンタクトできなかった企業や、商談後に失注した企業などが入っています。
実際、資料請求による問い合わせの内、商談が決まるのは3割くらいなので、残り7割のリードを掘り起こすことが大切です。
マーケティングの本質は、適切な人に、適切なタイミングで、適切な情報(価値)を届けることだと考えていて。そのリードナーチャリングのため、Marketoを活用したステップアップメールを配信しています。
例えば、商談が先送りになるケースって、ボトルネックになっている部分が複数あるんですよ。
それを週1回のメールで、事例を示してひとつずつ解消していく。ひとつ解決すると「でも」が出てくるので、それを次のメールでまた解消するんです。
そしてメール文の後半に、再商談の申し込みフォームに繋げることで、工数をかけずに商談化につなげることができました。
中にはフォームで離脱する人もいるので、行動データを見ながら「こういう悩みがあるんじゃないか?」といった話し合いをして、マーケと連携しながら仮説検証を行っています。
また、リードスコアが150以上に達するとSDRチームにリードを渡し、再度コールする仕組みにしています。この対応には専任を置いて、マーケティングチームと密に連携しながら動いていますね。
SDRチームのKPIは「有効商談数」。リードランクは3つの基準で明確化
また、セールスチームとの連携のため、SDRチームのKPIは「アポ獲得数」ではなく「有効商談数」に置いています。
この「有効商談」を判断するための基準として、リードランクをLight・Middle・Heavyの3つに分けているんですね。
このうち、有効商談としてカウントされるのは「Middle」以上になります。なぜなら、ベルフェイスは営業活用を想定したプロダクト設計をしているため、「Light」のような非営業活用だと受注ハードルが高いんです。
あくまで営業活用が前提にあるので、この条件をクリアしたリードでないと有効商談としてカウントしないようにしています。
こうしてKPIを有効商談数にしたことで、売上につながる商談獲得の意識が高くなり、SDRとセールスとの連携が強固になったと感じていますね。
新しいツールや仕組みを取り入れて、チームを活性化したい
SDRの業務って、わりとルーティンになりがちだと思うんです。ですが、他チームと連携しながら、新しいツールや仕組みをどんどん取り入れて検証を重ねることが大切だと思っていて。
その新たな検証のひとつとして、この4月から登録フォームの入力項目を変更しました。
もともとリードの「数」を重視していたため、フォームの項目には社名・氏名・メールアドレスといった基本情報だけだったんですね。
そこに従業員数・役職という項目を増やし、リードが発生した時点で優先順位を把握することで、諸条件が揃ったリードにはフィールドセールスでのクロージングを試してみたいと考えています。
今後も様々な挑戦をすることでプロダクトの成長を加速し、1人ひとりが活きいきと働けるチームをつくっていきたいですね。(了)