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個人のWillと会社のMustを合わせる!入社後の納得度を高める採用プロセスの作り方

〜「会社が提供できる価値の発信」や「マッチングインタビュー」を通じて、採用のミスマッチを防ぐ。スタディストの「Willを尊重し、納得度の高い組織」の創り方〜

年々厳しさが増すエンジニア採用において、自社にマッチする人材を見つけ、人が定着する組織を創るためにはどのような施策が有効なのだろうか。

2010年に創業し、クラウド型マニュアル作成・共有ツール「Teachme Biz」を提供する、株式会社スタディスト。

同社の開発チームでは、採用からオンボーディング体制までを見直し、個人のWillと会社のMustを継続的にすり合わせる仕組みを構築したことで、「人が定着する組織」を実現しているという。

具体的には、採用サイトや開発ブログでのEVP(※)の発信に加え、選考時の「マッチングインタビュー」を通じて、候補者と会社のニーズがきちんと合致しているかを確認。

※EVP(Employee Value Proposition)…「企業は従業員にどのような価値を提供できるか」という企業視点で語られる提供価値のこと

さらに、入社後の「ポートフォリオ研修」や1on1でもWillとMustをすり合わせ続けることで、メンバーの自己実現を図り、エンジニアが40名ほど在籍する組織において、5%以下の低い離職率を維持しているそうだ。

今回は、同社で人事を担う田部井 勝彦さんと、開発チームの組織づくりを担うエンジニアの北野 勝久さんに、どのように候補者とのマッチングを高め、組織に定着させているのかを詳しくお伺いした。

「会社が提供できる価値」を言語化。応募時のマッチングを高める

田部井 私は、元々Webエンジニアとしてのキャリアを歩んできましたが、2019年にスタディストに入社後は、採用や評価制度の運用などの人事業務全般を担当しています。

北野 私は、2016年にエンジニアとしてスタディストに中途入社し、現在は主にSRE(※)領域の業務を担当しながら、マネージャーとして組織づくりにも携わっています。

※SRE(Site Reliability Engineering)…ウェブサイトやサービスの信頼性を制御するために、システム全体の改善を行うこと

▼左:田部井さん、右:北野さん

田部井 以前より、入社前後の「期待値のズレ」を防ぐべく、採用活動に取り組んできました。そこで、候補者の方のWillと弊社のMustのマッチングを強化するため、2019年9月から開発チームにおける採用プロセスの改善に着手しました。

まず、応募前のフェーズで行ったのが、「会社が従業員に提供できる価値」を表すEVPの整理と、その発信です。

というのも、それまでの求人タイトルは、業務で使用するツールに興味を持つ方に向けて「AWSを使った自社サービスのSRE Wanted!」といった内容にしていたのですが、実際のチームの選考基準ではAWSのスキルは必ずしも求めていなかったこともあり、このような訴求がミスマッチに繋がるのではと考えました。

そこで、募集する採用枠に応じて、そのポジションに所属するメンバーが感じているEVPを、ヒアリングしてまとめました。例えば、SREチームのEVPのひとつは、「学んだことを業務で活かすサイクルが高速でまわせるため、技術者として成長しやすい環境」といった内容です。

そして、「会社としても訴求したいEVPかどうか」を確認しながら、想定される候補者のペルソナに対して提示するEVPを決め、採用ページのタイトルや訴求内容を変更していきました。

このプロセスによって、人事側だけでは拾いづらかった「実際に働く中で感じている業務の魅力や価値」を、メンバーから吸い上げられるようになったのが良かったですね。

このEVPは開発ブログのテーマを検討する際にも活用し、それぞれのEVPを裏付けるような社内の取り組みを記事にしています。

また、それを見ての応募も増えているので、どの応募経路でも記事に触れてもらえるように、各求人サイトにリンクを貼ったり、選考中にも候補者の方の関心に沿った記事を紹介したりしています。

最も重視するWillを知るため「マッチングインタビュー」を開始

田部井 続いて、選考を通じてマッチング精度を高めるため、選考フローを見直しました。

現在の基本的な選考フローは「カジュアル面談→カルチャーマッチ選考・マッチングインタビュー→スキルマッチ選考→部門・組織マッチ選考→内定オファー」となっています。主な変更点は、一次選考にあたるカルチャーマッチ選考の後に、5〜10分ほどの「マッチングインタビュー」を追加したことですね。

まず、カジュアル面談でお互いに求めているものを伝え合った上で、カルチャーマッチ選考では「開発部が求める人材像」とマッチしているかを確認しています。

その後に行うマッチングインタビューで重視しているのは、「転職軸トップ3」の確認です。それによって候補者の方が最重視していることを確認し、その希望に弊社がどれだけ応えられるかを、その場で真摯にお伝えするようにしています。希望年収や求める福利厚生といった踏み込んだ質問も、このタイミングで伺っていますね。

次のスキルマッチ選考では、各チームに作ってもらった実務を想定したワークなどで、課題に対するアプローチや、専門スキルとして特に重要な項目を満たしているかを見ています。

最後の部門・組織マッチ選考では、CTOが「組織としてこの候補者にジョインしてもらうのが有効かどうか」を判断します。時には複数の選考を同日にまとめて実施することもあるので、選考過程で見きれていなかったところも含めて、きちんとマッチングしているかどうかを見極めてもらっていますね。

その上で、オファー時には短期や中長期的にどのような役割を期待しているかと、今自社が抱えている課題に対して何をして欲しいかを、候補者の方のWillも踏まえた要素をとりこみつつ、明確にお伝えしています。

ポートフォリオ研修や1on1で、WillとMustをすり合わせ続ける

北野 加えて、入社後のオンボーディング体制の見直しも行いました。

それまでは「分からないことをその都度教える」という対症療法的な体制だったので、入社後にできるだけ早く活躍していただけるように、新たに「ポートフォリオ研修」を始めました。

これは、GMOペパボ社が実施している「キャリア・ポートフォリオ オリエンテーション」を参考にしたもので、新メンバーがこれまでの経歴やスタディストで成し遂げたいことをチームメンバーに発表し、自身のWill・Can・Mustを言語化する取り組みです。

これは自己開示の場としても機能しているので、チームでの率直なコミュニケーションを促進する手助けにもなっていますね。

オンボーディング後は、1on1で継続的に「やりたいこと・できること・やるべきこと」が重なる部分を探求するようにしています。その中でメンバーの希望を把握しているので、組織体制の変更があった際にも適切なアサインができていると思います。

他にも、Willに基づいて希望職種を体験できる「社内留学制度」を設けています例えば、この制度でデザイナー業務を経験したエンジニアがいるのですが、他の職種を経験することで横断的な知識やスキルを身につけることができるので、新しいプロジェクトにアサインされた時にも役立っていると感じますね。

ただ、どれだけオンボーディングやフォロー体制を万全にしたとしても、組織に定着するか否かの8割は採用の段階で決まると思っていて。なので、仕組みによって優秀な人の活動を縛ることのないように、各チームで対話しながら自由にカスタマイズできるような制度設計を心がけています。

中には「スキルマップ」と称して、メンバーの強みやWillをまとめた資料を作成し、それを踏まえてオンボーディングの内容をカスタマイズしているチームもありますね。

▼実際の「スキルマップ」の一部(同社提供)

組織の透明性を高め、入社後の「納得度」を向上させる

北野 現在は、組織運営の中での「納得度」を向上させ、定着率を高める施策として、「マネージャーの任用プロセスの透明化」に取り組んでいます。

これまでは、次期マネージャーが確定した際にその事実をメンバーに伝えるだけだったので、「どんな議論をして、何を理由に任用されたのかが不明瞭」という課題があって。サーベイでは「組織体制の議論の過程がオープンか?」という項目に対し、約半数が「わからない」と回答している状況でした。

そこでまず、開発部のマネージャーが集まって「各々がどのように任用されたのか?」「その時どう思ったか?」といった意見交換を行いました。その際に判明したのが、任用された理由や経緯が全員違ったということです。

例えば、社長やCTOと面談して任用された人もいれば、入社の段階からマネージャーになることを期待されていた人もいたので、全員に共通している任用プロセスを抽出して、言語化していきました。

そういった議論の過程を可視化するために、GitHubにドキュメントをまとめているので、疑問点や改善案がある人が誰でもプルリクエストを投げられるような、そんな文化を作っていきたいと思っています。

▼GitHubでの実際のやりとり

これらの一連の活動が良い影響をもたらし、現在の内定承諾率は70%を超えています。弊社のような小さな企業では、どれだけ母集団を形成できるかはあまり重要ではなく、「ひとりが選考にきて、そのひとりを採用する」という状態を作るのが理想的だと考えていますね。

候補者が「スタディストの未来」を感じるような発信を増やしたい

田部井 人材の定着度も向上し、2016年には11名だった開発部も40名まで増加しましたが、離職率は5%以下に抑えることができています。また、25%ほどのメンバーがリファラル採用にも協力してくれています。

情報発信の成果もあって、徐々に弊社のことを知ってくれる方も増えていると実感しています。開発ブログの中でも、組織のビジョンや課題に関する記事がよく読まれるので、「スタディストの未来」を感じられるようなコンテンツを、より一層発信していきたいですね。

北野 今回の活動で開発チームの採用マッチングはある程度改善できたので、今後はそのノウハウを全社にも浸透させていきたいです。そのためにも、「組織の可観測性」を高める施策をやっていきたいなと思っていて。

例えば、コミュニケーションパスの頻度や、GitHubの活動状況などが可視化されると、マネージャーがチームの改善策を考えるための材料になると思うので、スタディスト独自の仕組みを新たに構築していきたいですね。(了)

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