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PwC流「リモート・オンボーディング」の全貌。個人の力を100%発揮できる組織の作り方

新しく組織に参加するメンバーが早期に成果をあげられるよう、組織としてサポートをする取り組みである「オンボーディング」。その性質上、対面コミュニケーションを中心に施策を組み立ててきた企業も多い中、テレワーク時代においてはその多くを「リモート」に移行する必要が生じている。

大手コンサルティングファームであるPwCコンサルティング合同会社のPeople Transformationチームでは、2020年から完全リモートでのオンボーディングをスタートし、累計でおよそ30人に提供してきたという。(※完全リモート移行前も含めると、累計60人以上)

同チームのオンボーディングでは、「Voice of New Joiner」と呼ばれるサーベイを起点に、新しくジョインした社員1人ひとりが抱える課題を抽出。それに応じて、オンボーディングチームから個別にコミュニケーションをとるなど、一律ではなく「個人の課題」にフォーカスした仕組みを構築している。

他にも、「Buddy」や「Career Coach」といったサポーター制度、何でも聞ける「よろず相談Chat」の開放、動画を駆使したコミュニケーションなど、リモート環境でも提供可能な施策を次々と打ち出しているのだ。

今回は同オンボーディングチームの責任者である池谷 和之さんと、メンバーである大谷 奈々さんに、PwCのPeople Transformationチームにおけるリモートオンボーディングについて、詳しいお話を伺った。

 

「組織中心」から「個人中心」に。人材マネジメントの潮流が変化

池谷 私はPwCのPeople Transformationという、お客様に人材マネジメントコンサルティングを提供するチームのシニアマネージャーを務めています。また兼務という形で、チーム内のオンボーディングと、コーチングの取り組みの責任者も担っています。

新卒で入社したのはPwCではないのですが、会社の合併等を経て、18年間この組織に所属しています。

長く人材マネジメント領域に関わってきましたが、ここ4、5年で、世の中の考え方が大きく変わってきたことを実感していますね。簡単に言うと、組織中心から、個人中心の考え方へと、グーンとシフトしてきたと思います。

さらに、新型コロナウイルスの影響で、これまでフェイストゥフェイスで行ってきたことをリモートでいかに効率的・効果的に行うのか、ということに悩まれている企業も増えています。それに伴って、我々のコンサルティングに対するニーズも非常に増えている状況です。

「人の回転が早い」がゆえに、組織的な施策が浸透しづらい

池谷 我々のようなコンサルティングファームでは、1人ひとりのメンバーが会社にとっての重要な資産そのものです。ですから、個人がいかに自分の専門性を磨き、活躍するか、ということへのサポートはもう10年以上前から強化し続けてきました。

ただ、コンサルティングファームというと、昔から「人の回転が早い」というイメージがあると思います。実際に以前はそうだったので、組織的な施策が浸透しづらい面もあって。特に人材育成においては、1人ひとりがより短い時間で、より強く成長できるサイクルをつくる必要がありました。

それに対して全社的に具体的な施策を始めたのが、新卒採用のオンボーディングと育成を強化し始めた2014年前後のタイミングです。まずは新卒採用の育成を体系的に強化し、そこから中途採用も含めた組織全体へと進化させたことで、組織が変わってきたという実感を持っています。

その中でも、私の所属するPeople Transformationにおいて直近で特に力を入れている取り組みのひとつに「リモートオンボーディング」の強化があります。

もともと社内はフリーアドレスでしたし、各自が色々な場所で働いていたので、バーチャルな環境でコミュニケーションを取ること自体は当たり前ではありました。

ですが以前のやり方は、「リアルの場で起こったことを、そこにいない人にもきちんと伝える」ことが中心で。それだけではなく、新しく入社されたプロフェッショナルの方が、リモートでもすぐに活躍できる環境を用意できているのか、という課題があったんです。

入社したばかりの頃は、困りごとを誰に相談すればいいか、どこに座ればいいか、資料がどこにあるのか…とわからないことがたくさんありますよね。その状況から自分であがく時間が必要なのは、とてももったいないと。

そこで可能な限り、自分の仕事そのものに集中するための環境を組織的に、かつ遠隔でサポートすべく、2020年より、リモートオンボーディングの強化を始めました。

6ヶ月で「自分の力を100%発揮できる状態」をつくる

池谷  「Onboarding Journey」の全体像としては、入社後6ヶ月で既存のメンバーと同じように「自分ひとりであらゆることに対応し、組織の中で自分の仕事ができる状態」になることをゴールにしています。

前半の「Baseline Management」では、主に困り事に対するケアや、コミュニケーション、リレーションの構築が中心になっています。最初に、この組織の中でどういう目標を持ってキャリアを作っていくのかをしっかり考えられる環境をつくります。

このフェーズでは、全員に「Buddy」と「Career Coach」がつきます。Buddyは、年次、前職の業界、社内のランク等の類似性が高い人がアサインされます。「気軽に何でも相談できる人」という立ち位置ですね。

「Career Coach」は、会社として要件が決まっており、マネージャー以上で、その人よりも2つ以上ランクが上の人です。キャリアを作っていくにあたり、後ろからサポートをする人ですね。

そして、後半が「Professional Work」です。ここでは、専門的な知識をどうインプット・アウトプットしていくのか、そしてフィードバックをもとにどう成長するのか、ということがフォーカスになります。

こうした取り組みをすべてつなげて、サポートするための役割として、横軸のオンボーディングチームがあります。

それぞれフェーズに応じて、誰かが寄り添いながら、誰もが6ヶ月後にはこのコンサルティングファームで自分の力を100%発揮できる状態を作れる、ということがこのオンボーディングの考え方です。

サーベイでアラートを拾い、1人ひとりと直接コミュニケーション

大谷 私は2018年4月に、新卒でPwCに入社しました。入社当時から、People Transformationチームに配属されたのですが、昨年からオンボーディングチームにも携わっています。

個人としては、「Baseline Management」の中の「Care」や「Communication」の領域の施策を担当することが多いです。例えば具体的な施策でいうと、入社後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のタイミングで実施するサーベイ「Voice of New Joiner」の運用があります。

内容は、1〜5点の選択式の設問18問に加えて、フリーコメント2問という構成です。入社後6ヶ月の時点で選択式の設問の平均点が3以上になっていれば、ゴールに達していると判断しています。

設問は「従事している業務は、入社前に想像していた内容と合致している」「自分に足りない知識・スキルが明確である」といったベーシックなものもあれば、「(※コンサルティング業務以外の)チーム貢献活動に参加できている」といった弊社ならではのものもあります。

▼実際のサーベイ集計結果(一部を抜粋)

Voice of New Joiner

チーム貢献活動の参加はもちろん任意ですが、そこに入ってないと、人とのつながりや、情報を得づらくなってしまうんですね。

しかし、チーム貢献活動には自動的にアサインをされるわけではないので、中途で入ってくると、どのチームに入ったら良いかわからないという問題もあります。そこで、個別に興味があるものがないかを聞いてみたり、コンタクトできそうな人を紹介したり、といったコミュニケーションも私たちがとっています。

池谷 実はオンボーディングチームの役割として、この「1人ひとりと直接コミュニケーションする」ことがすごく重要で。ただサーベイを行って終わりではなく、その内容を見ながら、アラートを拾って、個別にサポートをしています。

特に今は完全にリモートワークで仕事をしているので、何に困っているのかがわかりづらいんですよね。ですので、なるべく我々がアラートを拾って、直接話したり、BuddyやCareer Coachに連絡をとったり、といったアクションにつなげることが大事だと思っています。

大谷 アラートを捉えるという意味合いだと、「よろず相談Chat」というチャットルームもあります。ここでは、誰でも気軽にわからないことを質問できるだけでなく、Voice of New Joinerを通じて届いた意見を参考に、オンボーディングチームからの発信という形で情報共有をしています。

▼「よろず相談Chat」での実際のやりとり

これまで、このオンボーディングプログラムを受講したメンバーは累計60人を超えています。昨年、1年間オンボーディングを受けてくださった方にアンケートを取ったのですが、その際にも「よろず相談Chatでちょっとした質問を聞きやすいのが良かった」という声がありましたね。

インタビュー動画やスライド資料も。新しい施策も次々に投下

大谷 他にも、トライアンドエラーで新しい取り組みを色々と行っています。Voice of New Joinerを通じて課題が抽出されたら「まず解決できるかやってみよう」というスタンスなので、施策の数は多いかなと思いますね。

例えば「1年目の体験記」「成功・失敗の分岐点~過去プロジェクトに学ぶ~」といったテーマの資料を作成したり、チームメンバーの人となりがわかる「PT Small Talk」というインタビュー動画を配信したりしました。

▼「成功・失敗の分岐点~過去プロジェクトに学ぶ~」資料の一部

これはキャリアディベロップメントに近いのですが、新しく入社された方に伝えたいことをまとめて発信したものです。自身の体験や、プロジェクトでの失敗事例を共有したり、他には互いの人となりを知れるような企画もありました。

池谷 他にも、Voice of New Joinerで「他の人が何をしているかわかりづらい」という課題があったので、社内SNSで「プロジェクト紹介リレー」という形で自分たちのプロジェクトを紹介する施策も実施しましたね。

大谷 今後のチャレンジに関していうと、大きく2点あるかなと思っていて。まずひとつめの課題は「どこまでをチームとしてサポートすべきなのか」ということです。

弊社では、基本的には主体的に動くことで誰かしらサポートしてくれる…という文化は根付いていると感じています。ですので、新しく入られた方にも「主体性が大事だ」ということをいかに感じていただきながらサポートができるか。これがまずチャレンジになるかなと思ってます。

もうひとつは、やはりメンバーが兼務で行っている活動なので、なるべく効率化して負荷を軽くしていきたいです。個別に連絡をする、アンケートを分析する、といった仕事もきちんとやれば時間もかかりますし、できる限り自動化していきたい。けれどその一方で、関係性の構築も重視していきたい。省エネしつつ、手間をかけるところはかけるというバランスをより上手くとりたいですね。

池谷 今は、理想形として定義したOnboarding Journeyを達成するための基礎的な部分が、最低限揃えられた状態かなと思っています。

ただ、Journeyの中の各プロセスは、それを受ける人によってやり方を変えるべきなんですよね。例えば「コーチングのベストプラクティス」がひとつあるわけではなくて、その人のキャリアや能力、性格によって、受けるべきコーチングは異なるはずです。

そういった多様性に対するサポートをいかにできるかということに、もっとフォーカスしていきたいですね。(了)

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