【5社まとめ】オンボーディングとは? 新入社員がいち早く活躍する組織づくりの秘訣

※2020年9月更新

組織を成長させる上で重要な、採用活動。しかしそのゴールは、あくまでも採用した人材に活躍してもらうことです。

新しく組織に参加するメンバーは、ゼロから人間関係を構築したり、組織のルールや業務を理解するなど、初期に様々なハードルを乗り越えなければなりません。

そこで、これらの問題につまずくことなく、新入社員が早期に成果をあげられるように組織としてサポートする仕組みが「オンボーディングです。

今回はオンボーディングを成功させるためのポイントについて、SELECKで過去取材した5社の事例をふまえてご紹介します。

目次

  1. オンボーディングとは?
  2. オンボーディングは、なぜ重要なのか
  3. 【事例①】受け入れ資料を作成し、期待値を調整する
  4. 【事例②】現場の上司に加えて、役割ごとにメンターをつける
  5. 【事例③】困った時に気軽に相談できる「駆け込み寺」を作る
  6. 【事例④】「行動規範の正しい理解」と「横の繋がり」を強化する
  7. 【事例⑤】入社3ヶ月後の目標とアクションプランを表明する
  8. おまけ:オンボーディングに使えるITツール「Kahoot!」

オンボーディングとは?

オンボーディングは、新しく組織に参加したメンバーが早期に活躍できるよう、組織としてサポートする仕組みのことです。

例えば、「組織や業務内容に関するインプットを進める」「ランチを設定してメンバーとの交流を深める」「専属のメンターがついて疑問に答える」などの施策があります。

オンボーディングは、なぜ重要なのか

働き方が多様化し、優秀な人材を採用する難易度が高まっている中で、採用した人材が活躍できる環境を作り、いかに組織に定着させるか? は重要なテーマです。

しかし、特に組織に参加した初期の段階では、「不明点が多い」「それを誰に聞けば良いのか、どこに情報があるのかわからない」など、多くのハードルが発生します。

そこでつまずくことなく、成果をあげるまでの体験をスムーズに進める仕組みがオンボーディングであり、「従業員体験(Employee Experience)(※)」を良いものにするためには不可欠です。

※従業員が働くことを通じて得られる体験

参考記事:「Employee Experience(EX)」とは? 企業が「従業員体験」を向上させるべき理由

一方、オンボーディングを現場任せにしてしまった結果、事業部の状況によってサポート体制にバラツキが生じてしまう…というのも、ありがちなケースです。

そのため、組織として体系立ったオンボーディングを設計し、初期の従業員体験の質を一定以上に保つことで、その後、活躍できる可能性を高めることが大切です。

このような背景で重視されるオンボーディングですが、具体的にどのような施策がなされているかについて、SELECKで取材した事例をふまえてご紹介していきます。

※テレワーク環境下でのオンボーディングの工夫については、ぜひ以下の記事をご参考ください。

参考記事:リモートで新入社員をどう受け入れる? 7社の「オンボーディング・ハック術」を公開!(2020年4月公開)

【事例①】受け入れ資料を作成し、期待値を調整する

参考記事:オンボーディングに「奇策」なし。仕組みとハートを両立させる、アカツキの取り組み(株式会社アカツキ)

新しく組織に入ったばかりのメンバーは、慣れない環境のなかで、早くパフォーマンスをださないと…という焦りや不安を感じている人も多いです。

そこで参考になるのが、中途社員の受け入れ時に、その人に対してどのような期待値をもっているかを明確にしている、株式会社アカツキの事例です。

同社では、中途社員1人ひとりに現場のトレーナーがつき、その受け入れ資料を必ず作成することになっています。

▼実際の受け入れ資料(一部)

資料の冒頭には、以下のような理由から、トレーニーにどのような期待をしているかについて、願いや感情を込めて文章を書いているといいます。

というのも、トレーニーやトレーナーが今後迷ったり悩んだりした時に立ち戻れる「原点」になるようなものにできたらと思っていて。会社としてハートドリブンを掲げているので、人の感情に寄り添い、支えることを大切にしたいと考えています。

また受け入れ資料の作成は、現場のトレーナーに任せているそうですが、その質が一定の水準以上、担保されているかを確認するため、HRBPが目を通しているそうです。

さらに、オンボーディングで大切なことを、以下のように話していただきました。

私はオンボーディングにおいて、誰もが驚くような革新的な取り組みってそうそうないと思っていて。 仕組みを用意するだけでなく、現場の受け入れをフォローし、バトンを渡す風土を作る。そして、トレーナーの覚悟も大事です。

オンボーディングの仕組みづくりも大切ですが、現場で受け入れるマネージャー側の覚悟も大事ですね。

【事例②】現場の上司に加えて、役割ごとにメンターをつける

参考記事:会社の印象は1ヶ月で決まる!?社員エンゲージメント85%に挑む、日本オラクルの挑戦(日本オラクル株式会社)

新しいメンバーにとって、頼りになるのが上司の存在です。しかし、プレイングマネージャーも増えている中で、全てを上司がサポートしきるのは難しいケースもあるのではないでしょうか。

その解決策として参考になるのが、現場の上司に加えて、2人のメンターが役割をわけて新入社員をサポートする、日本オラクル株式会社の事例です。

同社では、上司に聞く必要のない細かい質問への対応を「ナビゲーター」という現場の先輩社員が担います。

ナビゲーターは、現場の先輩社員が務めます。経費精算や勤怠管理の方法から、この件はこの人に聞くとよいなど、わざわざ上司に聞かなくても良いような細かい部分をサポートする役割です。

また、現場だけでなく、社員エンゲージメント室の社員が「サクセスマネージャー」として週1時間のミーティングを実施し、新入社員をサポートしています。

そしてサクセスマネージャーは、社員エンゲージメント室が担当しています。入社者の「成功」にコミットする役割で、研修期間である5週間の間は毎週、1時間ずつ全員とミーティングをし、上手くいっていること、そうでないことを共有します。

このようにメンターを役割ごとに複数人つけることで、新入社員にとしては「誰に何を相談すればよいか?」が明確になり、且つ、メンター側の負担も分散させることができます。

【事例③】困った時に気軽に相談できる「駆け込み寺」を作る

参考記事:急拡大する組織でも「チャレンジ」できる環境を。LINE社のマネジメントを支える仕組み(LINE株式会社)

また、社内制度の利用ルールや、備品の管理場所など、とにかくわからないことが多い… というのも、新メンバーにとって大きなハードルになります。

新しく入ってきた人って、わからないことがたくさんありますよね。その時のための「駆け込み寺」として、なんでも気軽に聞ける場があるだけですごく安心感があると思っていて。オンボーディングの重要な一部だと捉えています。

そこでLINE株式会社では、あらゆる質問の受付窓口をオンライン上で作り、バックオフィス部門が新メンバーの疑問に回答をしています。

「周囲のメンバーは皆忙しそうだから、些細なことは逐一質問しづらいな…」という時でも、気軽に質問できる体制を敷いています。

LINEを通じて社員がわからないことをなんでも聞ける、「LINE CARE」という社内サービスを2017年3月から本格運用しています。

「PCの調子が悪いです」というシステム系の質問から、「このサービスにこういう要望を投げたいです」といったことまで、本当になんでも投げてもらっていますね。

▼気軽にオンライン上で相談が可能

さらにオフィス内に専用のサービスカウンターが設置してあり、対面でのサポートが受けられる環境も用意されています。

メッセンジャーを通じてだけではなく、オフィス内にLINE CAREのサービスカウンターも設置しています。そこにふらっと行って相談しても、同じサービスが受けられるようにしているんです。

▼相談窓口として、サービスカウンターも設置

このように、オンラインとオフライン双方に相談窓口を設置することで、人によって問い合わせたいチャネルを選択できるようにしています。

【事例④】「行動規範の正しい理解」と「横の繋がり」を強化する

参考記事:メルカリをコピーするだけではダメ。設立9ヶ月で200名を超えた、メルペイの組織づくり(株式会社メルペイ)

組織によって異なるカルチャーや求められる行動規範を早期に知ってもらうことも、オンボーディングに必要な要素です。株式会社メルペイのオンボーディングプロセスでは、ミッションとバリューの理解が非常に重視されています。

例えば、「All for One」は「皆で助け合って頑張ろうね」ではなくて「ミッション達成のため・成功のために全員があらゆることをやっていく」という考え方ですよ、といった話をするイメージです。

これは、誤ったバリューの解釈で動かないように、オンボーディングの中でも全社的に特に大切にしている部分ですね。

また、よりフラットに意見を共有しあえる横の繋がりを強化するため、食事会を設定したり、チャットツール上で同期グループを作ることで、コミュニケーションが生まれる仕掛けを作っています。

他にも、同じ入社タイミングの方に「同期会」を開いてもらっていたりします。「月に2回、同期でごはんに行ってください。ランチで2,000円まで補助します」といった形で、コミュニケーション施策のひとつとして実施していますね。

また、社内コミュニケーションツールのSlack上に「同期のチャンネル」も都度作成しています。

【事例⑤】入社3ヶ月後の目標とアクションプランを表明する

参考記事:組織への「帰属意識」を育てる!オンボーディングプログラム「ペパボカクテル」の全貌(GMOペパボ株式会社)

オンボーディングでは周囲がサポートするだけでなく、早期に成功経験を積めるような、本人のコミットと行動を促していく必要があります。

そこでGMOペパボ株式会社では、新メンバーが入社3ヶ月後のゴールとそのためのアクションプランをシートに書いて、意思表明をしています。

こちらから目標を与えるのではなく、自分自身でやっていきたいことを表明してもらうんです。やっていきシートには、入社3ヶ月で「どのような状態になっていたいか」というペパボカクテル終了時のゴールと、そこから落とした月ごとの目標と具体的なアクションプランを書きます。

▼目標設定とアクションプランのイメージ

そうすることで、入社時の意思表明を後から振り返ったり、他メンバーのシートを見ることで、モチベーションを生むきっかけを作っています。

入社した時って、「自分はこういうことをやっていくんだ」という気持ちが最も高まっている時だと思うんです。

(中略)それを「文字にする」ということが結構大事だと思っていて。残しておくことで、入社当時の思いを振り返ることができますし、他の人のシートも見られるので、自身のモチベーションにも繋がるのかなと思っています。

各社の事例をご参考に、ぜひ自社のオンボーディングにも取り入れてみてくださいね。

おまけ:オンボーディングに活用できるITツール「Kahoot!」

最後に、日本語で使えて、オンボーディングに活用できるITツールをご紹介します。

Kahoot!」は、誰でも簡単にクイズが作成できるツールです。この使い方次第では、オンボーディングにも活用することが可能です。

参考記事:Facebook社も愛用!社内教育からプレゼンにも、楽しく学べるクイズツール「Kahoot!」

例えば、オンボーディング期間にオフィスの使い方に関するクイズを作成して、新メンバーのインプットを楽しくサポートすることもできます。

▼クイズを通した、インプットにも活用できる

Facebook社でも営業チームの研修に導入されており、組織や業務の理解度をするトレーニングに活用されているとのこと。日本語で簡単に使えるので、オンボーディング 体験の向上に、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?

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