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  • 山本 花香

リモートで新入社員をどう受け入れる? 7社の「オンボーディング・ハック術」を公開!

みなさま、こんにちは。SELECK編集長の山本です。

4月も残すところあと数日。在宅ワークへの移行から、約1ヶ月が経った企業も多いのではないでしょうか。徐々にこの業務環境に慣れてきたり、一方で新しい課題が見つかってきたりと、さまざまな変化が起きている頃ではないかと思います。

SELECKでは、リモートワークにおける課題解決のヒントをお届けすべく、各社の「リモートハック術」を連載でお届けしてきました。

第1弾第2弾では「各社イチオシのハック術」を、第3弾では「マネジメント」に特化にしたハック術をご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。

最終回となる第4弾は、フルリモート環境下で新入社員が組織に馴染み、いち早く戦力化するための工夫を集めた「リモート・オンボーディング術」をご紹介します。

ゴールデンウィーク明けに、中途社員の入社や新入社員の本配属、部署異動などを控える企業も多いかと思います。新卒・中途問わず、新しい環境でスムーズに立ち上がるには適切なサポートが必要です。そのヒントとして、ぜひご参考ください。

今回ご紹介するのは、以下7社のオンボーディング事例です。

  1. 入社初日のウェルカム感を「オンライン寄せ書き」で演出 / ヤプリ
  2. バーチャルオフィスの設置で、コミュニケーションを活性化 / アカツキ
  3. オンライン飲みは「居酒屋ネーミング」で気軽に参加 / GMOペパボ
  4. チームごとの「専用オンラインルーム」でOJTをサポート / キャスター
  5. 雑談? 業務? 音声チャットルームは「目的別」に設置 / RELATIONS
  6. 新卒研修も完全オンライン!「Jamboard」を使ったワークも / DeNA
  7. 「リモートワークの手引」を共有し、働き方をサポート / Sansan

では、早速みていきましょう!

1. 入社初日のウェルカム感を「オンライン寄せ書き」で演出 / ヤプリ

期待と不安を抱いた新入社員の受け入れにおいて、重要な「入社初日の体験」。

この受け入れ初日の工夫として最初にご紹介したいのが、アプリ開発プラットフォーム「Yappli」を提供する、ヤプリ社の事例です。

同社では通常、以下のようなオンボーディングプログラムを実施。

▼ヤプリ社のオンボーディングプログラムの内容

・ガイダンス(PCセットアップ、各種ツール説明など)
・創業ヒストリーや事業の説明
・会社のミッション・ビジョンの説明
・ビジネスモデル研修
・組織体制、各種制度、社内イベントの説明
・アプリ制作研修(※Yappliの管理画面を使ってアプリを制作する研修)
・システム勉強会
・営業やカスタマーサクセスなどの訪問同行、展示会への参加など

リモートワークに移行してからも、訪問同行などの一部のプログラムを除き、基本的にその内容は大きく変わらないそうです。

上記に加えて、上長(+メンター)との目標設定や、入社3ヶ月後の締め会での成果発表、代表やメンターとの1on1などが、オンボーディング時に行われています。

そんな同社では、「入社を待っていました!」というウェルカム感を大切にしており、通常時はウェルカムカード、名刺、ロゴTシャツ等が入った入社キット「Yappli BOX」の配布や、メンターのお迎えを実施しているそう。

リモート環境下では、紙で渡していたウェルカムメッセージを「オンライン寄せ書き」にて代替したり、メンターがZoomでお迎えしたりといった工夫をしています。

▼実際の「オンライン寄せ書き」によるウェルカムメッセージ(一部)

他にも、役員とのランチをZoomで実施するなど、ITツールを活用することで、通常のオンボーディング体験を提供できるように取り組んでいるとのこと。

ウェルカム感が伝わりやすい対面の場がなくても、ちょっとした工夫で、同じような空気感を伝えることができますね。

2. バーチャルオフィスの設置で、コミュニケーションを活性化 / アカツキ

オフィスなどの場所がないと、業務で関わらないメンバーとの交流が少なくなりがち…といった課題はないでしょうか。

その課題解決のヒントとして参考になるのが、モバイルゲーム事業を中心に様々なサービスを展開する、アカツキ社の事例です。

同社では通常、3ヶ月のオンボーディング期間を設けており、新入社員1人ひとりに専任のトレーナーがついて、入社後の立ち上がりをサポートしています。

※同社のオンボーディングの詳細は、ぜひこちらの記事をご覧ください。

リモートワークへの移行後も、オンボーディングの方針や内容は変わらないものの、会社の雰囲気やカルチャーを体感するのが難しい状況を考慮して、追加的にさまざまなコミュニケーション施策に取り組んでいるといいます。

たとえばRemo」というツールを活用して、部署関係なく交流できる「バーチャルオフィス」を用意。全社的なコミュニケーションの活性化を図っているそうです。

▼アカツキ社のバーチャルオフィス

まだ試行錯誤している段階とのことですが、Zoomよりも気軽な形で、業務に関わるメンバー以外とのコミュニケーションを生んでいるとのこと。

また、1on1の頻度を高くして対話の機会を増やす、相談・質問用にメンバーを限定した専用Slackチャンネルを作成する、雑談用のZoomルームを設けてチームメンバーの顔と名前を覚えてもらう、といった施策を行っています。

こうした施策を通じて、コミュニケーションのコンテキストに影響する「同じ場にいる」体験や、対面ならではの気付きを、オンラインでも補っているといいます。

会社のカルチャーや雰囲気を体感しづらいリモート環境においては、「同じ場にいる」と感じられる機会を意図的に設けることが大切ですね。

3. オンライン飲みは「居酒屋ネーミング」で気軽に参加 / GMOペパボ

次は、部署を越えたオンライン交流の場を、ちょっとしたユーモアで社員が参加しやすくしている事例をご紹介します。

数々のインターネットサービスを手掛けるGMOペパボ社では、通常、中途社員向けに3ヶ月間のオンボーディングプログラムを実施。

※同社でエンジニアを中心に実施しているオンボーディングの詳細は、こちらの記事をぜひご覧ください。

2020年4月1日には、オンライン入社式で新卒社員を迎えるなど、リモートワークに移行してからもSlackやWeb会議ツールなどを活用することで、オンボーディングの内容自体には大きな変化はないといいます。

▼同社の新卒研修でのひとコマ

とはいえ、部署をまたいだ交流の場がどうしても減ってしまう…という課題を解決するため、金曜に自由参加のオンライン飲みを開催しているそうです。

実際によく行っていたオフィス周辺の居酒屋の名前でオンラインルームを設定したり、22時から二次会の会場として別ルームを用意しておくなど、通常のオンラインのみを楽しくする工夫を取り入れています

遅い時間の飲み会ルームも開放することで、お子さんのいる社員も、子供を寝かしつけた後に参加しやすくなっているとのこと。

他には、オンラインで実施している新卒研修の一部コンテンツを、全社向けにも開放。在宅ワークが開始した後に入社された方はもちろん、すべての社員が知識を得られて理解を深められる場になっているといいます。

ユーモアとアイデアによって、新入社員から既存社員まで、組織全体の一体感醸成にも効果がありそうです。

4. チームごとの「専用オンラインルーム」でOJTをサポート / キャスター

次にご紹介するのは、常時から全社リモートワークを実施している、キャスター社の事例です。

同社のCASTER BIZ事業部では、入社初日の全体研修、2日目の事業部研修、3日目以降のチーム配属でのOJT、という流れでオンボーディングを実施しています。

全体研修では、リモートワークに欠かせないコミュニケーションツールの使い方などの基本ルールを説明。つづく事業部研修では、研修終わりにGoogleフォームを用いた小テストを実施して理解度を確認した上で、OJTを実施しているそうです。

OJTにおいては、新しいメンバーが孤独を感じたり、誰にも相談できずに抱え込んでしまわないように、相談しやすい環境づくりを第一に心がけているといいます。

▼キャスター社のリモートオンボーディング

具体的には、チームごとに相談専用のオンラインルームを常設しておき、聞きたいことがあれば「チャットで連絡→音声で会話」という体制を作っているとのこと。

Web会議ツールをミーティング以外にも活用することで、相談しやすい環境をうまく構築している事例です。

5. 雑談? 業務? 音声チャットルームは「目的別」に設置 / RELATIONS

気軽な質問や相談を行うことのできる環境づくりとして、Web会議ツールよりも手軽な音声チャットツールを活用することもおすすめです。

SELECKを運営するRELATIONS社では、新卒社員のオンボーディングと社員同士のコミュニケーション活性化のため、音声チャットツール「Tandem」を活用して、気軽に会話できるオンラインルームを設置しています。

その特徴は、「新卒部屋」や「晩酌待機部屋」といった目的別のルームを用意するということ。

▼RELATIONS社のTandemの画面

たとえば「新卒部屋」では、新卒メンバーが業務上の質問や相談があるときにすぐ話しかけられるような環境を作ったり、仕事終わりに飲みたい!という人が「晩酌待機部屋」に集まってオンライン飲みが始まったりすることもあります。

またTandemは、40以上の外部ツールと連携できることも特徴のひとつ。たとえばGoogleカレンダーと連携すれば、各人のステータス(会議中など)がTandem上にも同期されるので、話しかけやすいタイミングがわかりやすくて便利だといいます。

Web会議ツールを使うと、どうしてもコミュニケーションが重たくなりがち。より気軽な環境として、こうした音声チャットツールの活用も検討してみてくださいね。

6. 新卒研修も完全オンライン!「Jamboard」を使ったワークも / DeNA

オンボーディングの一部である「集合研修」を、オンラインでどのように行うか? その工夫として参考になるのが、DeNA社の事例です。

同社では、2020年4月入社の新卒社員に対して、完全オンラインでの研修を実施。

普段より疲労が溜まりやすいオンラインの環境を考慮して、連続でのオンライン会議を行わない、入社時の必須研修(法務など)を各個人の好きなタイミングで受けられるように変更するなど、自由時間や休憩時間を設けるように意識したそうです。

また、グループワーク研修では、Zoomのブレイクアウトルーム機能やGoogleのオンラインホワイトボード「Jamboard」を活用し、オンラインの議論を活性化。

Jamboardは、ラフにブレスト内容を可視化することができるため、まとめを作成する際などに役立っているといいます。

▼実際の研修ボード(※類似した内容に記号をつけて分類)

同社ではもともと、今年度の新卒育成のコンセプトを「一緒に船を漕ぐ仲間になる」として、「自走」「つながり」をテーマに少人数制のワークに変更していたため、それが偶然にも今のリモート環境に適した形で進められているとのこと。

また、執行役員による事業部の説明では、聴講型ではなくパネルディスカッション形式にして双方向のコミュニケーションを取ったり、入社前にZoomのバーチャル背景として使用できる「DeNAオリジナル壁紙」を複数パターン配布したりして、チームワークの醸成を行っているといいます。

一方で、意識をしないと、個別のコミュニケーションがどうしても取りづらくなるリモート環境。その懸念を取り払うため、新卒メンバーが「#times」という個人のSlackチャンネルを自ら作成して、日々の学びやつまずいていることを発信。

同社の人事チームでは「強制しすぎない」「やることを固定しすぎない」を基本として、新卒メンバーの自発的な動きをサポートするように動いているそうです。

通常のオンボーディングプログラムをうまくリモート化しつつ、リモートワーク特有のストレス軽減にも配慮した工夫が参考になります。

7. 「リモートワークの手引」を共有し、働き方をサポート / Sansan

いまのフルリモート前提で新しい環境にジョインする人を迎える上で、リモートワークにおけるコミュニケーションのルールをきちんと伝えることも大切です。

そこで参考になるのが、クラウド名刺管理サービスなどを提供するSansan社の事例。同社では通常、入社後5日間にわたり、以下の全社共通プログラムを実施しています。

▼Sansan社のオンボーディングプログラムの内容

・PCセットアップ、業務ツールのレクチャー
・会社のミッション・バリューズを理解する「カタチ研修」
・人事制度の説明
・プロダクトの説明
・情報セキュリティやインサイダー研修

在宅ワークに移行してからは、業務上必須の研修(PCセットアップ、セキュリティ等)を最初に実施。オンラインでも主体的に取り組んでもらえるように、自社サービスや業務ツールを使った参加型のオンライン研修を増やしているといいます。

また、社内イントラネットに「リモートコミュニケーションのルール」をはじめとした、リモートワークの手引となるページを公開。

リモートワーク自体に不慣れな人も多い環境では、こうした共通ルールを明示しておくと、新入社員の方もスムーズに業務ができそうですね。

まとめ

今回は、テーマを「オンボーディング」に絞って7社の事例をご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

記事ではソフト面を中心にご紹介しましたが、各社共通して、PCのセットアップやネットワーク環境のサポートなど、業務環境を整える工夫もありました。

また、オンボーディングの内容自体は以前と変わらず、それをいかに工夫してオンラインで実施できるか? オフィスがなくてもいかに組織のカルチャーを体感してもらえるか? がリモート環境におけるオンボーディングのポイントだと感じました。

いまだ長引きそうな在宅ワーク環境ですので、新しいメンバーの受け入れ・立ち上がりに、各社のオンボーディングの工夫をぜひご参考になさってください。

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