• 株式会社 大丸松坂屋百貨店
  • 本社 MD・チャネル開発統括部 部長 インバウンド担当
  • 熊本 俊介

訪日客4,000万人の「2020年」へ。WeChatを駆使した、百貨店のインバウンド施策とは

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〜インバウンド(訪日外国人)の増加に向けて、「WeChat」での情報発信、決済サービス「WeChat Pay」の導入など、多くの施策を実施する大丸松坂屋百貨店の事例〜

2016年3月、政府は訪日外国人を、現在の2倍の「4,000万人」とする目標を掲げた。中国からの訪日客の「爆買い」も話題になる中、国内の百貨店業界は、彼らを逃すまいと、ありとあらゆる策を講じている。

その中でも、中国市場に早期に目を向け、中国で主に使われてるメッセンジャーアプリ「WeChat(ウィーチャット)」を活用したマーケティングを行っているのが、株式会社 大丸松坂屋百貨店だ。

近年のインバウンドマーケットは、「『モノ』から『コト』に変化している」「リピーターへの施策が重要になってきている」と、同社でMD・チャネル開発統括部の部長を務める熊本 俊介さんと、木村 秋斗さんは語る。

今回は、熊本さんと木村さんの2人に、WeChat、そして2015年に導入した決済サービス「WeChat Pay(ウィーチャット ペイ)」を活用したインバウンドへの取り組みについて、詳しく伺った。

(FinTech市場、決済領域のプレイヤーについてまとめた記事はこちら

一時は過熱するも、変化を続けるインバウンド市場に打ち手を

熊本 私は、バイヤーに始まり、大丸東京店の増床プロジェクト、販売促進、売場運営などを担当してきました。販促時代には、集客のために「DJイベント」や「街コン」を開催したこともあります(笑)。エンターテインメント性のあるものが好きなんですよね。

現在は、訪日外国人(インバウンド)マーケットの拡大を担当しています。

大丸松坂屋百貨店の熊本 俊介さん

弊社では、2013年ごろからインバウンドに取り組んでいます。最初は担当者をつけていただけでしたが、2015年には免税売上高が前年比の約2倍に伸び、体制をより強化するため、今では1つの部門になっています。

ですが、2015年の8月ごろからは、免税売上は減少傾向にありまして。円高や、中国当局の内需拡大策(※)の影響ですね。

(※ 海外で購入した商品が、一定額を上回る場合に課税される政策など)

そのような状況の中でも、持続的に成長するため、弊社では色々なインバウンド施策を実行しています。「WeChat(ウィーチャット)」の活用も、その1つです。

中国向けの情報発信には「WeChat」を活用!

木村 私は、インバウンドのプロモーションを主に担当しています。

弊社では、2014年の7月から、メッセンジャーアプリ「WeChat(ウィーチャット)」のアカウントを立ち上げました。中国版のLINEのようなものですね。企業のアカウントを作成して、情報発信に活用しています。

▼中国発のメッセンジャーアプリ「WeChat」のWebサイト

中国発のメッセンジャーアプリ「WeChat」

「今こういうイベントをしています」といった情報から、観光客が買うことの多い、化粧品の情報などを発信しています。特に、美容や健康に関連したコンテンツの注目度は高いです。試行錯誤を重ねながら、発信する情報を変えたり、企画を実施しています。

今までに実施した企画の中でも、WeChatと相性の良いカメラアプリCamera360を活用したものは、ヒットしました。Camera360は、セルフィー(自撮り写真)のデコレーションができるということで、中国の20代から30代の人たちの中で人気があるんです。

そのアプリ上に、弊社の公式キャラクター「さくらパンダ」のデコフレームを用意したのですが、その反響は大きかったですね。WeChatには、LINEと同じくタイムラインの機能があるのですが、そのタイムライン上で弊社の記事をシェアしていただけたりしました。

▼Camera360で配信した「さくらパンダ」のデコフレーム

Camera360で配信した「さくらパンダ」のデコフレーム

そのイベントを実施した月は、300万PVほどを記録しましたね。

「刺さる」コンテンツは変化。中国市場ならではの難しさも...

熊本 2015年までは、「これが買いたい」と来店されていたお客様が多かったのですが、最近ではリピーターも増え、お客様のニーズが細分化されてきています。中途半端なコンテンツを配信しても、心に刺さらなくなってきているんです。「モノ」から「コト」に関心が移ったとも言えますね。

木村 中国市場の一番難しいと思うところは、日本と違って単一民族でないという点ですね。来日されるのは、やはり上海や北京など、沿岸部の人が多いのですが、一方で内陸部の人たちも増加傾向にあります。

その中で、トレンドも中国国内の地域ごとにかなり違ってくるので、一概に「こういう情報を発信したらいい」「こういう施策を打てば中国全土に広まる」というものが、なかなか見つからないんです。

「WeChat Pay」も活用し、お客様の利便性を高めていく

熊本 2015年の9月に、一部の売場で決済サービス「WeChat Pay(ウィーチャット ペイ)」を導入しました。 WeChat Payは決済サービスなので、決済を簡略化して利便性を高めるという目的はもちろんあります。ですが、どちらかというと「お客様とつながるツールとして活用したい」という思いで導入しています。

▼中国人向け決済サービス「WeChat Pay」のWebサイト

中国人向け決済サービス「WeChat Pay」のWebサイト

木村 少し前だと、日本でも「VISAカードは使えるけどマスターカードは使えない」状況ってあったじゃないですか。でも使う側としては、どちらも使えたほうがありがたいですよね。モバイル決済の領域でも同じで、ユーザーの利便性を考えると、いち早く対応したほうが喜ばれると思うんです。

また、WeChat Payは支払いが成立したタイミングで自分の携帯に通知がきて、決済内容が間違っていないことが確認できるので、海外旅行でも安心感が高いです。

▼「WeChat Pay」を活用し、支払いをする様子

「WeChat Pay」を活用し、支払いをする様子

導入当時は、日本でWeChat Payが使える店舗というものはほとんど無かったので、話題性という意味での効果もありました。弊社から「WeChat Payが使えるようになりました」という情報を発信すると、「あのお店なら使えるらしいよ」と拡散してくれる人もいました。

4,000万人に増える訪日客に向け、ファンを増やしていく

熊本 ファーストビジットの訪日客も一段落して、今後はリピーターを集めるための施策も重要になってきます。そこで弊社では、2016年の3月から海外のお客様向けの「エクスクルーシブカード」の取り組みを強化しています。免税手続きを優先したり、荷物預かりや、ホテルまでの配送サービスを特典にしています。

2015年に訪日した外国人が2,000万人ほどなのですが、政府は2020年には倍の4,000万人に訪日してもらうことを目標にしています。今後、東京〜大阪間のゴールデンルート以外のエリアにも、足を運んでいただくことになるはずです。

弊社は全国に店舗を展開しているので、お客様がどのエリアでも恩恵を受けられるように、全店舗共通の特典に加えて、エリア限定の特典を付けることで特徴化していきたいですね。

木村 WeChatで発信する情報は、利用ユーザーの年齢などのイメージを考慮して決めています。今後は、その情報がきちんと思い描いている層に届いているのか、追っていきたいですね。来店したことがあっても無くても、「何だかこの百貨店は面白いね」と思ってくれるファンを増やすため、コンテンツを発信していけたらと思います。

大丸松坂屋百貨店の木村 秋斗さん

中国の「爆買い」が話題になりましたが、団体ツアーなどで来られる中国の方って、旅行前に親戚や友だちに買ってきてほしいものを聞いて、「買い物リスト」を作っているんです。ですので、そのリストのものを「どこで買うのか」という部分で、大丸松坂屋百貨店を選んでいただけるように、利便性を高め、ファンを増やしていきたいですね。(了)

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