- 株式会社リスティングプラス
- 代表取締役
- 長橋 真吾
広告運用のテクニックを使うのはまだ早い!?Web広告の5つのフェーズと3つの壁
〜Web広告は単なる集客ではなく、「ビジネスの頭脳・参謀」である!Web集客に必要な、「5つのフェーズ」と「3つの壁」とは?〜
私たちの情報との接触点がますますWebに移るにつれ、ビジネス上の重要度を増している「Web集客」。
しかし、Web集客の代行業を営む株式会社リスティングプラスの長橋 真吾さんによれば、Web集客の意義はもはや単なる集客手段には留まらないという。
少額で出稿でき、素早い変更が可能なWeb広告は、「そもそも何が売れるのか」の検証も可能な「ビジネスの頭脳・参謀」だというのだ。
今回は長橋さんに、Web集客についての考え方から、重要な「5つのフェーズ」と、売り上げをはばむ「3つの壁」まで、詳しくお話を伺った。
Web集客の役割は、「集客」だけではない!?
私は2011年にリスティングプラスを創業しました。当時はリスティング広告業界も始まったばかりで、仕組みも整っておらず、大きなチャンスがあると思って独立したんです。
▼株式会社リスティングプラスの長橋さん
それから5年経ち、業界全体が成熟してきたことで、ようやくWeb広告・集客も、ひとまとまりのスキルとして教えられるようになってきました。
Web集客は、もはや単に強力な集客手段であるというだけではなく、「ビジネスの頭脳・参謀」です。
店舗を出したり、テレビに広告を出すとなると、初期投資が膨大ですし、内容も簡単に変更できませんよね。
それに対して、Webの広告は少額で出せますし、内容もすぐに変更できます。そのため、すでにあるものを売るためだけでなく、どのようなものが売れるのかを調べる、ビジネスのニーズ検証にも使えるんですよ。
「まだ物件が決まっていない」ジムが広告を出す意味とは?
例えば、化粧品や健康食品の業界では、実際に商品を作る前に広告で売ってみる方法が「ドライテスト」としてすでに広まっています。
弊社が扱った面白い事例としては、パーソナルトレーニングジムがあります。
ジムの物件を借りる前の段階で、「〇〇駅徒歩〇〇分」ということだけを決めてランディングページ(LP)を作り、予約受付の広告を出してみたんです。
さらに、単にニーズの有無だけではなく、どのような年齢層に、どのような価格帯で出すのが一番レスポンスが良いのかも検証しました。
結果として、経営的に成り立つほどのレスポンスが得られたので、その場所に出店を決めました。
Web集客の5つのフェーズ。まずは商品が「売れる」状態に
私は、Web集客を「初期運用期」「分析期」「集約期」「改善期」「拡大期」の5つのフェーズに分けて考えています。
▼Web集客の5つのフェーズ
それぞれのフェーズでやるべきことは異なるので、すべてのフェーズに当てはまる正解はありません。
Web集客を考えている多くの人にとって、初期運用期になすべきことは、しっかりと売れるビジネスモデルを構築することです。つまり、「広告を出して顧客にリーチすれば、商品が売れる」という前提を作ることです。
具体的には、自社が提供しようとするサービスに需要があるのか、そして競合に対して優位性があるのかをしっかりと分析することです。もしそれが無いのであれば、市場でのポジショニングを変える必要があります。
例えば、ある化粧品の訴求ポイントを「くすみに効く」から「ほうれい線に効く」に変えただけで、ほとんど売れなかったものが月に1,000本も売れるようになったという事例もありました。
コスト度外視の「分析期」、運用効率を高める「集約期」
そうして商品が売れる仕組みを作った後は、さまざまなキーワードや媒体を使って、手広く広告を運用してみる「分析期」に入ります。
ここでは、どこに強い需要があり、どこで効率の良い広告運用ができるのかを分析することが目的になります。
そのため、一旦は費用対効果の面では割り切って、運用を広げてデータを取っていきます。でないと、潜在的なニーズの見落としが増え、逆に機会損失が大きくなってしまうんです。
次に、ここで得たデータに基づいて、広告運用を費用対効果の大きいものに集中していく「集約期」に入ります。
ここまできてようやく、Web広告関係のセミナーなどでよく言われる、「キーワードを厳選しましょう」といったテクニックが必要になります。
通常、Web広告のテクニックと言うと、このフェーズのものが多いという印象を受けます。ですが本当は、「初期運用期」と「分析期」なくして、ここに行き着くことはできないんです。
取れていない顧客を取りにいく「改善期」、そして「拡大期」
こうして効率の良い部分に広告運用を集中すると、自分たちが取れている顧客と取れていない顧客がはっきりしてきます。
ここで、まだ取れていない部分をどう取っていくかを考え、サービスや広告の訴求内容を改善していく「改善期」に入っていきます。
その後は、改善して特に上手くいった部分に広告を集約し、その上でまた改善を加えるという、「集約」と「改善」のサイクルを繰り返していきます。
この最終段階を、私たちは「拡大期」と呼んでいます。
LPで「読まない・信じない・行動しない」の3つの壁を越える
こうしてWeb広告を運用していくわけですが、実際に売上を立てる上では、集客から売上につなげるLPの存在も極めて重要です。
このLPでは、ユーザーが持つ「読まない」「信じない」「行動しない」という3つの壁を乗り越えなければなりません。
▼ユーザーが持つ3つの壁
そのためにも、最初に目に入るキャッチコピーは、普通のキャッチコピーとは違い、「売る」ことではなく「読ませる」ことにだけ集中します。
そこでは商品のことには触れません。というのも、ここで例えば15,000円といった価格を出してしまうと、「あ、今お金ないな」と、一瞬で「読まない」という判断をされてしまうからです。
実際によく使うのは、コンテンツを含むキャッチコピーです。例えば不動産系のLPでは、「不動産での失敗ベストスリー」といったコンテンツを作りました。これなら、不動産に関心がある人はつい読みたくなってしまいますよね。
充実したコンテンツで「信頼」を獲得。「行動」を促すには…?
キャッチコピーでユーザーに疑問を抱かせ、「読みたい」という気持ちを作ったら、あとはコンテンツでその疑問を解消しつつ、実際の商品を提示し始めます。
ですが、ユーザーは商品の価値を簡単には信じません。そこで、実績や研究結果、お客様の声などのコンテンツによって、説得を試みます。コンテンツを読むことで、商品の価値を信じてもらうことができるんです。
そこから、最後に行動を促す売り込みを行います。
商品がいつまで売っているのか、限定何個なのか、いま申し込まないデメリットは何かといった情報を提示して、最後の「行動しない」という壁を壊すわけです。
顧客目線で試行錯誤を繰り返すことが何より大事
このように、5つのフェーズに分けるという考え方と、3つの壁を壊すスキルが、Web広告の基本です。ただ、これらはあくまで枠組みで、実際の現場では顧客の目線を基準に、実際に試行錯誤を繰り返していくことが最も重要です。
その姿勢を身につけるには、「隣の席の人が買ってくれるようなLPを作りましょう」というワークを実施すると良いですね。
ワークが始まると、みんなが一生懸命パソコンに向かって何かを書くのですが、一通り書き終わったところで「なんで隣の人に聞かなかったんですか」と尋ねると、皆はっと気付くんです。
顧客が隣にいても自分の主観で書いてしまうなら、顧客が隣にいない実践の現場では、なおさら主観に囚われてしまう。そのことに気づいてもらうためのワークになっているんです。
このようなワークを通じて、単にWeb集客を「知っている」だけではなく、実際に現場で試行錯誤して「改善ができる」人を増やしていければと思っています。(了)