• スナップマート株式会社
  • 代表取締役 CEO
  • 江藤 美帆

「やりすぎ」厳禁!えとみほ流・失敗しないインフルエンサーマーケティングの方法とは

〜Instagram上でインフルエンサーマーケティングを実施し、CPI130円でダウンロード数を7倍に伸ばした、スナップマート株式会社。インフルエンサーの選定法やコンテンツの作り方など、そのノウハウを大公開〜

TwitterやInstagramといったSNSで多くのフォロワーを持ち、周囲に影響力を持つ「インフルエンサー」。彼らをマーケティングに活用し、ターゲットに直接サービスや商品をアピールする企業が増えている。

しかし、「インフルエンサーマーケティングをやってみたが、どうも効果が上がらない…」と感じている人も多いのではないだろうか。

誰でも持っている「スマートフォンで撮影した写真」を、手軽に売り買いできるアプリ「Snapmart(スナップマート)」。

2016年6月にリリースした同アプリでは、Instagramを中心としたインフルエンサーマーケティングを実施。結果的に、1ダウンロードあたり130円という低コストで、ダウンロード数の実績を7倍近くまで伸ばすことに成功した。

その成功の背景にあったのは、「偽物を見分ける」適切なインフルエンサーの選定や、あくまでも「やりすぎない」PRの手法だ。

「最終的にはインフルエンサーマーケティングも、商品にパワーがあるものしか通用しない」と語るのは、スナップマート株式会社の代表を務める、「えとみほさん」こと江藤 美帆さん。今回は江藤さんに、Snapmartの「広告は使わず、SNSでユーザーとの信頼関係を作る」マーケティング戦略について、詳しくお話を伺った。

Instagramで100名のテストユーザーを招待

Snapmartは、誰でも簡単に写真を売り買いできるスマートフォンのアプリです。2016年の6月にiOS版アプリをリリースして、おかげさまでその後、順調にダウンロード数を伸ばしています。

▼スマホの写真素材をユーザーから直接購入できる「Snapmart」のホームページ


マーケティングに関しては、新しい事業でまだお金もないので(笑)、とにかくお金をかけずに、最初はWebメディアを中心に仕込みました。事前にインタビューなどを受けておいて、ローンチのタイミングで一気に掲載してもらったのですが、結果的にその記事がバズったんですね。

もうひとつの施策としては、リリースの4ヶ月ほど前から、Instagramでベータ版のテスターユーザーを100人ちょっと集めました。

最初にSNSを使って拡散しようということは元々考えていて、その中でも、写真なのでやっぱりインスタだよなと。また、ローンチの際にある程度クオリティの高い写真を集めておきたいと思っていたので、Instagramで初期ユーザーを集めました。

具体的には、写真が特にキレイで、フォロワーが1万人以上いるような、いわゆるインフルエンサーに直接DMを送りましたね。「今度こういうアプリを作るんですけど、使ってみてもらえませんか」という感じで、写真を売ったときのコミッション率を上げる「プレミアユーザー」という形で招待しました。

1通1通ちゃんと名前も入れて送ったのですが、意外に、レスポンスはすごく良かったです。背景にあったのは、インフルエンサーの人たちはみんな、写真を無断転用された経験があって、それがすごく嫌だったと。


ですので、私たちが考えていた「少ない金額でもちゃんと正当に報酬がバックされる」という仕組みに共感していただける方が多かったです。

宣伝広告費は、ほぼゼロ!広告を使わず、SNSに注力する理由は…

このように、最初はメディア戦略とInstagramで、初期ユーザーの囲い込みを行いました。そこから、実はほとんどお金をかけたマーケティング活動をしていなくて。自然流入がほとんどで、広告は一切打っていません。宣伝広告費は、ほぼほぼゼロですね。

広告も効果がありますし、全否定ではないのですが。ただ、あまり広告をガンガン打つと、うさん臭くなると感じている部分があるので。それより、まずは信頼感を植え付けるためにも、メディアPRとSNSを使ったファンづくりに力を入れているというところです。

活用している主なSNSは、Facebook、Twitter、Instagramの3つです。いまの従業員数は7名なのですが、その少ない人数の中でも、SNS専任の担当をつけて注力しています。その担当者は、実際に個人のInstagramでフォロワーが6万人以上いるくらい、色々なノウハウを持っているメンバーです。

各SNSの棲み分けですが、Facebookには、購入者であるビジネスユーザー向けの情報を流しています。例えば「この写真を使うと、コンバージョン率が上がりました」というような投稿ですね。

▼ビジネスユーザー向けの情報をメインで発信するFacebookページ

最初からそのように切り分けていたわけではなかったのですが、Facebookインサイトで訪問者を見ると、明らかにビジネス向けの投稿の方がリアクションが良かったので。さらに、Facebookの非公開グループを活用して、「プレミアユーザーの集い」のようなコミュニティも運営しています。

Twitterは、主に写真の出品者向けのコミュニケーションに使っています。出品者の方が、Snapmartに出している写真をツイートしていれば、それをリツイートしたり。あとは本当にユーザーサポートに近いような形で、「Snapmart」というキーワードでエゴサーチをして、ユーザーの声を拾っています。

例えば「Snapmart落ちてる」とか、「アップできない」とか。普通のお問い合わせには上がってこないようなちょっとした不満もTwitterには流れているので、そこは積極的にフォローしていますね。

実は高コスパ!Instagramでインフルエンサーマーケを開始

Instagramに関しては、Snapmartに投稿されている方の写真をピックアップして、編集部セレクションのような形でアップしています。

私はInstagramに関してはそこまで詳しくないので(笑)、運用の担当者の感性に任せていますね。とくにタイムラインの見た目が重要らしくて、フォロワーを増やすために、ぱっと見たときの9枚のバランスを考えているそうです。1枚1枚の写真で勝負するというよりも、雑誌みたいなイメージです。

▼雑誌のように魅せる。Instagramに投稿された写真


またInstagramは、インフルエンサーマーケティングでも活用を始めています。

最初は、インフルエンサーマーケティングも効果があるのか半信半疑だったので、テストで3人だけ選んでやってみたんです。すると、その人たちに投稿をしてもらった日に、ダウンロード数がいきなり7倍近くなったんです。

しかも、CPI(1ダウンロードあたりのコスト)が130円くらいだったんですよ。普通CPIは、すごく成功しているアプリでも、200円以上はかかります。他にもTwitterでインストール保証の広告を出すと、1インストールで700円くらいかかるんです。そう考えると、とても安いですよね。

「偽物」を見分ける!インフルエンサー選定のカギとは?

このような結果を出せた理由は、そのインフルエンサーとフォロワーの信頼関係にあると思います。つまり、インフルエンサーの選定がとても大事なんですね。

結構インフルエンサーって、偽物も多いと思っていて。最近は、フォロワーを買っているような人たちも多いですし。また、Twitterであれば、文字のコミュニケーションなので、投稿を見るだけで何となくその人のことがわかりますが、Instagramだとそうはいかない。フォロワーとコメント欄までを見ないとわからないですね。

フォロワーを見てチェックするのは、まず外国の人の比率です。多すぎると、フォロワーを買っている可能性が高い。それに、Instagramは写真なので、国境を簡単に超えちゃうんですよね。

Snapmartはまだ日本語版しかないので、外国の方のフォローが多いインフルエンサーにお願いしても、ターゲットにリーチしないということが起こってしまいます。そういった点も注意して見ていました。

また、フォロワーの数については、多すぎないほうがいいと思っていて。数十万フォロワーになってくると、やっぱり熱心なフォロワーの比率が低くなっちゃうんですよね。それよりは、本当に身近な人に対する影響力がある、マイクロインフルエンサーを選びました。具体的に言うと、フォロワー数が5,000から3万人くらいまでが、一番コスパが良いと思っています。

さらに、同じカテゴリではなくて、ちょっとターゲットが違う感じの人にばらして依頼をすることも大事です。同じようなカテゴリの人だと、フォロワーがかぶっていることも多いので。3万フォロワーの人3人に依頼しても、9万リーチにはならないんですね。

さらにもう1個見ているポイントとしては、広告投稿の数です。ちょいちょい広告が挟まっている人だと、フォロワーの人たちも「またか」と感じてしまうので、基準のひとつにしていますね。

やりすぎは厳禁!Instagramの強みを理解することが大切

インフルエンサーを使うときに重要なのは、こちら側でコンテンツを作りすぎないことです。基本的に私は、投稿内容も、時間も指定しません。

「必ずこういうふうに書いてください」というようなガチガチの依頼って、よくあるんです。でもそれって、素人の人に要求することじゃないですよね。それはちょっと勘違いだと思っていて。その人がどう思ったか、ということを、なるべく率直に書いてもらう方が良いはずなんです。

それは、必ずしもポジティブな内容ばかりではありませんが、逆にポジティブなことしかないと、すごくステマ色が強くなってしまいますよね。SNS上では、8対2ぐらいで、2ぐらいネガティブな情報が混じってるほうがリアルでいいなと思ってるんです。


Instagramの強みはやはり、ビジュアル訴求できることですよね。だからこそ、Instagramのインフルエンサーマーケティングは、商品を選ぶなとも思っています。

ファッションや旅行は、ものすごく相性がいいですね。ただその一方で、例えばシャンプーのような物撮り系は、あんまり向いてないかなと。

撮る方も難しいんですよ。依頼されるインフルエンサーの人たちも、いつものタイムラインを汚さずにどうやってコレを取ろうかと、すごく苦心していて。見ている側も、同じ商品を「愛用しています」といった投稿がタイムライン上にいっぱい出てくると、明らかにステマだなと思うじゃないですか(笑)。

ステマだとわかると、「それが欲しいな」という憧れの気持ちにもなりませんし。本当に、やりすぎ厳禁だと思いますね。

最も大切なのは、顧客の声を活かし、必要とされる商品を作ること

マーケティング関しては、最終的にはテレビCMに辿り着きたいんですけれど(笑)、それはずっと先の話ですね。それまではSNS軸で、地道にユーザーとの信頼関係を作っていくことを続けると思います。

SNSのいいところは、やはり顧客の声が聞けることです。顧客の声を聞いて、それを商品に活かすことで、人が望むものをきちんと作っていくサイクルを作ることができます。テレビCMでは、それはできないので。

最終的にはインフルエンサーマーケティングも、商品にパワーがあるものしか通用しないと思っています。押しつけで宣伝してくださいって言っても、その熱量のなさは絶対にフォロワーの人にも伝わるんです。

見ている人はそんなにバカじゃない。「お金をもらってやってるんだな」っていうことはわかっちゃうんです。結局、商品が良くなかったら、ユーザーもすぐに離れてしまうので、意味がないですよね。どんなマーケティングをするにせよ、やっぱり大切なのは、プロダクトの力だと思っています。(了)

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