• Anyflow株式会社
  • 代表取締役CEO
  • 坂本 蓮

新規事業の「成功確率」をどう高める? 数々のピボットから学んだ、市場選定の3軸とは

〜ピッチコンテストで連続優勝!「マネタイズ・市場の成長性・チームの得意領域」から戦う領域を選定し、バズを科学して市場を啓蒙する、新規事業の勝ち方〜

毎年、多くの新規サービスが生まれる中で、その成功確率を高めるにはどうしたら良いのだろうか。

国産初のクラウドネイティブiPaaS(※)「Anyflow(エニーフロー)」を展開し、2019年に開催されたピッチコンテストで3度のファイナルラウンド出場、うち2度の優勝を飾ったAnyflow株式会社。

iPaaS(アイパース):integration Platform as a Service の略で、SaaSのようなクラウドサービスと、オンプレミス型のサービスを統合する製品のこと

同社では、過去に数々の事業のピボットを経た経験から、事業を成功させるための3つの軸として「明確なマネタイズポイント」「市場の成長性とタイミング」「チームの得意領域」を置いた。

さらに、プレスリリースやLP、SNSなどを活用して市場のニーズを検証。最終的には、営業ヒアリングも含めてたどり着いた「iPaaS」市場で戦うことを決意した。

しかし一方で、iPaaS市場が国内では認知されていない、という問題があった。

そこで、ピッチコンテストの2日前に、代表自らのnoteで「iPaaSが今、来ている」ことを伝える記事を公開。また、サービスをわかりやすく伝えるため、ピッチコンテストでは「動画」を流す時間を長めにとったそうだ。

その結果、「Incubate Camp 12th」と「B Dash Camp 2019」で連続優勝をおさめ、VCからの資金調達の目処を獲得。さらに、採用やマーケティングにも効果が現れ、本リリース前ながら150件以上の問い合わせを獲得しているという。

今回は、同社代表の坂本 蓮さんに、事業ピボットの変遷から新市場の切り拓き方までを詳しくお伺いした。

4万リツイートの大バズを得た「Dish」リリースからの苦難…

僕は2017年4月に、友人と3人で起業しました。全員エンジニアだったので、アイデアを持ち寄り、小さく作っては壊してを繰り返して、創業からの2年で20以上のプロダクトを開発してきました。

そんな中、ひとつの転機になったプロダクトが、2018年の8月にリリースしたグルメアプリの「Dish(ディッシュ)」です。2018年5月にプロトタイプをTwitter上で公開したところ、4万リツイートを超える大バズになり、正式リリース後も順調にダウンロード数を伸ばしていました。

ですがその後、キャッシュポイントが見つからないという壁にぶつかって。Dishは「誰かとランチに行くとき、お店探しが面倒」というペインを解決するサービスだったので、そもそもアプリを使う頻度が1週間に1、2回ほどしかなかったんですね。となると、広告でのマネタイズもサブスクリプションでの課金も難しい。

今振り返れば、そもそもマネタイズを考えてから始めるべきでしたが、当時はユーザーのペインを解決することを真っ先に考えていて。事業としての限界を感じ、ピボットせざるを得ない状況でした。

そこで次なる事業を見つけるため、みんなで新しいアイデアを考えては、LPを作ってTwitterに投稿し、ユーザーの反応をみる、といった感じで小さく試すことを繰り返していました。

たとえば、「夜の方が客単価が高いからマネタイズしやすそう」という着想から生まれた飲み会予約アプリや、技術ブログのプラットフォームなどをリリースしました。でも、全然跳ねなくて(笑)。

当時は、複数のエンジェル投資家から資金調達をしていたのですが、会社のキャッシュはどんどん減っていくし、自分たちのモチベーションも続かないし、必死に次のアイデアを考えるけど思い浮かばないしで、会社の雰囲気も悪くなっていって…一番つらい時期でしたね。

勝てる事業をどう見つける?「3つの軸」から選択した市場とは

ただ、そうして試行錯誤を重ねていくうちに、事業選定において考えるべき軸がわかってきて。

マネタイズの他にも、結局チームメンバーがモチベーション高く続けられるかどうか、が結構重要だなと気づいたんですね。「俺らって、ランチや飲み会のサービスを作りたかったんだっけ?」と問い直してみると、正直そうでもないなと。

そこで改めて事業を考える際に、3つの軸を意識することにしました。まずはDishの反省から、マネタイズポイントが明確であること。次に市場の成長性とタイミング。そして、メンバーのモチベーションが続く領域かどうかです。

この3軸から、幅広くマーケットを見ていきました。たとえばヤフオクって、靴からゲームまで、めちゃくちゃカテゴリがあるじゃないですか。これってたぶんビジネスでも同じで、アパレルとか建設とか、事業のカテゴリがたくさんあるわけですよね。

その業界別に、まずは成長性のある市場を絞っていきました。たとえばD2CやVR・ARなど、今後も成長を続けていきそうな市場に注目し、それに自分たちが熱量を注げるかどうかという観点を掛け合わせていって。そして最終的に行き着いたのが、RPAでした。

RPAは、コンピュータ内のロボットで定型業務を自動化する仕組みです。当時、RPAに関する記事が多く取り上げられていたのですが、その背景を調べるうちにこれはもう絶対に伸びるはずだなと思いました。

日本の労働人口がどんどん減っていく中で、業務の効率化はひとつの解決策になるものでした。また僕ら自身も、普段からプログラムを書いて自動化していたので、この当たり前を民主化するためのテクノロジーだと考えると理解しやすく、得意な領域にも重なっていました。

さらに、BtoBなのでマネタイズポイントも明確でした。つまり、3軸すべてが当てはまっていたんです。2018年10月には、このRPA市場でプロダクトを開発する決意を固めました。

プレスリリースからの反響が続々!でも営業はボロボロだった…?

事業の方向性が決まってからは、開発と検証を同時並行で進めていきました。

クラウド型RPAの「Anybot」というサービス名で、まだプロダクトがない段階でLPを制作し、事前登録の受付開始を伝えるプレスリリースも打ちました。最初に、世間の反応を見たかったんです。

開発途中でしたが、実際の操作をイメージできるようなGIF動画を埋め込んで出したところ、結構な数の問い合わせがきて。これはイケるかもしれないという感触を得たので、1〜2週間ほどかけて作ったプロトタイプと簡易的な営業資料だけ携えて、3〜4ヶ月をかけて30社ほど回りました。

ですが、営業先での反応は総じて「何がいいのかわからない」といった感じで、かなりボロボロでしたね(笑)。というのも、プレスリリースで反響のあった企業と、僕らがターゲットとしていた企業の属性が、実は違っていたんですね。

RPAにはオンプレミス型とクラウド型があるのですが、ルーティン業務の自動化を目的として当時広まっていたのは、主にオンプレミス型でした。実際にプレスリリースからお問い合わせをいただいたのは、オンプレミス型のRPAと相性のよい、地方の中小企業が多かったんです。

一方で、僕らが作っていたサービスは、SaaSを使いこなすようなIT企業をターゲットにしたクラウド型のRPAでした。なので、一見ニーズがありそうに見えたのですが、実はそうではなかったと。

そして、ターゲット企業へのヒアリングを重ねていくと、そもそもRPAのニーズが少ないことがわかってきました。

なぜかというと、RPAは人のコンピュータ操作をプログラムで作業をシミュレーションしているので、たとえばGmailでボタンの位置が変わるといった仕様の変更が起こるとすぐに壊れてしまうんです。

つまり、業務システムが定型化された大企業では有用でも、SaaSを多用するIT企業には使い勝手が悪いものでした。代わりに使われていたのが、SaaSのAPIをつないでワークフローを作成する「Zapier」などのiPaaSでした。

そこで途中からAnybotの営業ではなく「Zapierの使い心地はどうですか」というヒアリングに変えたところ、英語のUIなので社内展開がしづらいとか、エラーが起きたときに解決できる人がいなくて困っているといった話がでてきて。すごくいいインサイトを得られましたね。

そこから、日本人にも使いやすいUIで国内のSaaSを網羅したサービスを作れば、すごく伸びるんじゃないかという仮説を立てました。

RPAからiPaaSにピボット。ピッチコンテストで新市場を切り拓く

そして、国産初のクラウドネイティブiPaaSとして「Anyflow」の開発を始めました。このプロダクトで戦っていくという覚悟を決めて、2019年1月には社名も「Anyflow株式会社」に変更しました。

市場のポテンシャルも高いし、自分たちの開発力も活かせる。ただ問題は、国内におけるiPaaSの認知が全くなかったことでした。

2019年の春頃から資金調達に動いていたのですが、当時は全然見向きもされなくて。VCに何社かあたっても、「RPAは知ってるけど、iPaaSは聞いたこともない。本当に伸びていく市場なのか」といった反応で、1社を除いて他はすべて断られましたね。

僕らがサービスの構想を詰めきれていなかったこともありますが、まだ国内で市場が形成されていないiPaaSの未来に賭けてくれる人は、ほとんどいませんでした。

そんな中、今年7月に行われた「Infinity Ventures Summit 2019 Kobe(以下、IVS)」のピッチコンテストに出場することが決まり、それに向けた準備をする中で、ある投資家の方に「人は知っていることでしか評価できない」というアドバイスをいただきました。

特にピッチは5〜7分ほどの限られた時間しかないので、ほぼ100%の人が知らないワードを使っても伝わらないと。なので事前に「iPaaSが今、来ている」ということを伝える必要があったんですね。

そこで「日本に本当に必要とされているのは、RPAではなく、iPaaSだと思う」という記事をnoteで書き、ピッチコンテストの2日前に公開しました。

▼実際に公開したnote(冒頭)

多くの人に届けるため、文章は何度も推敲した上で、公開の際にはnoteのお題企画にのせて投稿したり、影響力のある人にツイートを依頼したり、NewsPicksで記事をピックしたりと、とにかくできる手段をすべて使いました。

結果的にnoteでは500スキを超え、RPA業界の人から危機感をもった発信があったり、RPAとiPaaSに関するテーマの議論が巻き起こったりして、ものすごく反響がありました。

こうして審査員へのインプットができた状態で、IVSのピッチに臨めました。結果的に、優勝こそ逃しましたが、それから世間の風向きもガラっと変わりましたね。

業界認知をとることが先決!資金調達から採用、アライアンスまで

続いて、国内有数のピッチコンテストである9月の「Incubate Camp 12th」と、10月末の「B Dash Camp 2019」にも出場しました。逆に、この期間は他の施策をうちませんでしたね。

まずは、業界の認知を取ることを第一に考えていました。「iPaaSと言ったらAnyflowだよね」というマインドシェアを取ってしまえば、資金調達でも営業でも採用でも有利になります。

もちろんアイデアを真似されるリスクは怖いですが、業界認知を取りきることが先決だったので、立て続けにピッチコンテストに出たんです。その裏では、最悪真似されてもブーストできるくらいの資金調達の準備ができていたのは大きかったと思います。

また、いずれのピッチコンテストでも「動画」をかなり多用しました。もともとDishを通じて、LPやツイートに動画を使ったときにすごく跳ねた経験があったんです。

イベントによっても違いますが、大体ピッチの長さは5〜7分程度になります。その中でめちゃくちゃイケてる感をだして、審査員にいいサービスだと思ってもらえるかどうか。そこで有用なのがサービス動画だと思っています。

特にBtoBのプロダクトは、いかにわかりやすく見せられるかどうかが重要だと思っていて。実際、Incubate Campの時は5分中2分ほど、またB Dash Campの時は5分中1分半ほどを動画にして伝え、どちらも優勝することができました。

▼実際のサービス動画

こうして一連のピッチコンテストで結果を残せたことで、数億単位の資金調達の目処が決まっただけでなく、リード数も増えましたし、採用の内定承諾率も上がりましたね。

さらに、他社とのアライアンスもインバウンドで決まるようになりました。これはピッチの影響だけでなく、Twitterを使ったPR活動も大きかったと思います。

Anyflowは、SaaSを自動連携したいというユーザーと顧客の活用率をあげてチャーンを防ぎたいSaaSベンダーという双方の課題を解決するサービスなので、アライアンスをすればするほど三者ハッピーになります。

そうした潜在的なペインがあることはわかっていたので、個人のTwitterアカウントからGIF動画をつけてツイートしてみたところ、14万インプレッションを超えるほどバズって。これをきっかけに、アライアンスのお声掛けを数社からいただきました。

強いチームをつくり、プロダクトの完成度を高めていきたい

iPaaSにおける認知が取れてきたことで、正式リリース前ではありますが、現在150社以上のお問い合わせをいただいています。

今は社員3名で、業務委託の方々を含むと20名ほどのチームなのですが、全然手が回っていない状態で。エンジニアを中心に、積極的にメンバーを増やしているところです。

SaaSはやはり、どれだけ顧客の成功にコミットできるかが大事だと思っていて。

まずは理想の顧客にサービスを提供し、Slackを使ってガンガンフィードバックをいただきながら改善サイクルを回していく。ここでしっかり成果を出して、事例をつくり、パブリックに広げていきたいと思います。

今はまだ、ハイタッチなCSが必要なプロダクトになってしまっているので、今後もUIUXを磨いて、プロダクトの完成度を高めたいですね。

将来的にはセルフサーブ型にしていきたいという構想もあるので、強いチームをつくり、スピードをもって開発していきたいと思います。(了)

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