【RPA事例解説】どのツールを選ぶべき?「2種類の型」から比較するRPAツールと事例5選
近年、働き方改革が叫ばれるなかで、大きな注目を集めている「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」。
IT関連の調査会社である米Forrester Research社によれば、世界のRPA市場は、2021年までにUS$2.9B(円換算で約3,190億…!)規模まで拡大することが見込まれています。
現在では、IT・非IT問わず、多くの国内企業でも普及しつつあり、年間で数千時間の業務工数の削減を実現するなど、大きな成果をあげる企業も出てきています。
そこで今回は、RPAの歩む「3つの段階」を解説し、RPAツールの「2種類の型」の視点から、各種ツールの違いや選定の仕方を、導入事例とともにお伝えします。
<目次>
- RPAとは
- AIとの違いは?RPAの歩む「3つの段階」
- RPAは「2種類」ある?サーバー型とデスクトップ型のメリデメを解説!
- 国内の導入事例から学ぶ!RPAツールの選び方
- RPA導入・定着のコツとは
RPAとは
「RPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)」とは、ホワイトカラーの業務を、人間に代わりロボットが処理することで、作業を自動化する取り組みを指します。
例えば、
- 朝会社に着いて、勤怠システムにログインし、打刻する
- 主要製品の売上データを集計し、速報レポートを作成する
- 経理の締め作業で、BSの借方・貸方の残高消込をする
といったルーティン業務は、RPAによりすべて自動化することが可能です。
AIとの違いは?RPAの歩む「3つの段階」
現在、国内外で普及が進んでいるRPAは、「Class 1」と呼ばれる「定型作業の自動化」であり、AIとは異なるテクノロジーです。
上述したRPAに代替される業務例も、このClass 1に相当します。
ですが実際には、RPAには「3つの段階」があると言われており、それぞれの違いはその「学習・判断能力」にあります。
▼RPAの「3つの段階」
※参考資料:KPMG
現在、導入が広まり、一部企業で業務時間の削減といった大きな成果をあげているRPAの取り組みは、ほぼすべてがClass 1に該当するものです。
この段階では、
- 人為的なミスを防ぎ、タスクの品質向上につながる
- データ入力などの物理的な作業が発生せず、作業スピートが上がる
- 膨大な作業をロボットが代替することで、人件費を削減し、より高付加価値な業務に集中することができる
といった利点がありますが、決められたこと以外はできないため、単純作業を一部自動化する、ということに留まる傾向にあります。
ですが、「コグニティブAI(認識技術)」と連携する「Class 2」の段階では、人間が行う「判断」の領域を一部代替することができます。
例えば、カスタマーサポートで顧客からの問い合わせを「音声認識」し、その回答をデータベースから抽出する、といった作業が可能です。
さらに、将来的には、「Class 3」にあたる「自律型AI」との連携が進むことで、プロセスの分析・改善や、意思決定までも自動化できるようになると言われています。
RPAは「2種類」ある?デスクトップ型 ・サーバー型のメリデメを解説!
こうした時流の中で、国内外問わず、多くの「RPAツール」が開発され、企業に提供されています。
米Forrester Research社の調査によると、世界のRPA市場では、シェアトップの「Automation Anywhere(オートメーション エニウェア)」、次いで「Blue Prism(ブループリズム)」そして「UiPath(ユーアイパス)」が3強となっています。
また、国内市場では、RPAテクノロジーズ社の提供する「BizRobo!(ビズロボ)」や、NTTデータ社の提供する「WinActor(ウィンアクター)」が有名です。
ですが、ツールごとにどのような違いがあるのか、そもそもどういった視点で選べばよいのか分からない、といった方も多いのではないでしょうか?
その疑問に対するひとつの答えは、デジタルレイバーの働く「場」の違いです。
実は、RPAのシステムは、大きくわけると「デスクトップ型」と「サーバー型」の2つの型に分類することができます。
上図のとおり、デスクトップ型とサーバー型は、それぞれにメリット・デメリットがあります。
そのため、「導入の目的」「対象となる部署や業務」「運用・管理体制」といった視点から、自社に合う最適なツールを選ぶ必要があります。
国内の導入事例から学ぶ!RPAツールの選び方
例えば、株式会社DeNAでは、海外ツールの「Blue Prism」を導入しており、その選定理由を次のように語っています。
Blue Prismは、ロボットをサーバー上で集中管理することができ、且つ、作業の実行も仮想デスクトップ上で行うことができます。そのため、ロボットの管理が容易で、幅広いアプリケーションに対応することができます。
また、ロボット開発における変更履歴の記録や、新旧の変更内容の比較、細やかなユーザー権限の管理も可能です。このようにエンタープライズ向けの機能が豊富に備わっていたこともあり、Blue Prismが最適だと判断しました。
サーバー型であるBlue Prismを導入することで、集中管理し、幅広いアプリケーションへの対応を実現しています。
また、サントリービジネスシステム株式会社では、いくつかのツールを比較検討した結果、「Automation Anywhere」を採用しています。
同社では、Blue Prism同様にクラウド型のRPAを導入することで、4台のパソコンで40体のロボットをフル稼働しています。
そしてRPAツールは、最終的に「Automation Anywhere」を選定しました。その理由はまず、サーバーがクラウド型だったことです。
ひとつのパソコンを9時から10時はA部署、10時から11時はB部署、といった形で共有して動かすことを想定していたので、クラウド型であることは必須でした。
一方、デスクトップ型のRPAを導入している企業もあります。
株式会社リクルートテクノロジーズでは、デスクトップ型の海外ツール「UiPath」を活用しています。
最終的には「UiPath(ユーアイパス)」を導入したのですが、選定の際に重要視した項目は大きく3点です。
まずは、ロボットの「野良化」を防ぐ中央集権的な仕組みがあるか、次に、スモールスタートで導入することができるか、そして最後に、弊社独自のアプリケーションの操作ができるか、という点です。
「スモールスタートで、まず試してみる」といった導入の場合には、コストも抑えられるデスクトップ型ツールとの相性が良いようです。
さらに、国産のRPAツールを活用している企業もあります。
そのなかでも先進的に取り組んでいるのが、住友林業情報システム株式会社です。
サーバー型のRPAツール「BizRobo!」を2015年4月から導入し、その仕組みをグループ会社へと展開しています。
他社製品と比べ、BizRobo!は性能が優れていましたし、サポート体制や導入実績も多く安心感がありましたね。半年かけて起案を通し、xoBlos導入から約1年後の2015年4月に、BizRobo!のパイロット導入が実現しました。
また、同社では、RPAをExcel業務効率化ソフトの「xoBlos(ゾブロス)」と組み合わせることで、人の介在する作業を最小に留め、業務時間を大幅に削減しています。
RPA導入・定着のコツとは
最後に、先進事例を参考にした「RPAの導入・定着のコツ」について、ポイントをまとめたいと思います。
まず、RPAの導入ステップを簡単に図示すると、以下のようなフローになります。
それぞれのステップにおける工夫を、以下に整理してみます。
① 目標の設定
まずはじめに、「何のためにやるのか?」という目標設定が重要です。
株式会社ソフトバンクでは、「Half & Twice」を目標に掲げ、「業務工数とコストを半分に、生産性と創造性を2倍にする」ために、RPAを活用しています。
▶︎参考記事:RPAを活用し、「現場起点」で生産性をUP!ソフトバンクの働き方改革
② 対象業務の洗い出し
次に、RPA(Class 1)には「得意・不得意」があるため、どの部署で、どのような作業にRPAを導入すべきか? を検討するため、対象業務を洗い出す必要があります。
株式会社DeNAでは、対象業務をシートに一覧化し、「自動化した際の効果が大きく、開発の難易度が低いものから取り組んだ」そうです。
▼実際に「自動化する業務」を洗い出したシート
ここで言う「効果」とは、削減される工数と、開発後にそのロボットを利用できる期間で判断すると言います。
そのため、業務プロセスや扱うツールの「変更頻度」がどの程度あるかを、事前に確認することが大切になります。
▶︎参考記事:ロボットで8つの業務を自動化し、月128時間の工数を削減。DeNAのRPA活用ノウハウ
③ 対象業務のルールを決める
上述の対象業務を決める際に、明確なルールを定める方法もあります。
例えば、サントリービジネス株式会社では、「ロボットだから何でもできる」と思われないように、3つのルールを決めたそうです。
<3つのルール>
・毎日15分か、週で1時間、もしくは月で5時間以上かかっている業務
・社外システムに依存しないということ
・基本的に変わらずにずっと続く業務であるということ
▶︎参考記事:ロボット40体がルーティンを代行!3.5万時間の削減を目指す、サントリーの働き方改革
④ リーンに始める
最後に、スムーズに定着・運用させるためには、トライアル時点でどういったハードルがあるかを洗い出し、それを解除しておく必要があります。
住友林業情報システム株式会社では、「あえてプログラミング経験のない3名」をパイロット導入のメンバーに選出し、現場の推進を担っているそうです。
▶︎参考記事:ロボットが月320時間の業務を遂行!住友林業グループの、RPAを活用した業務改革の裏側
このように、現在はまだ第一段階のRPA活用ではありますが、着実な運用で大きな成果をあげている企業も続々と出てきています。
Class 2やClass 3のステージを目指し、さらなる発展が見込まれるRPA。今後の展開にも、目が離せません。
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