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世の中に大変革をもたらす「ディープテック(Deep Tech)」とは?その定義や注目領域などを徹底解説

世の中に大変革をもたらす「ディープテック(Deep Tech)」とは?その定義や注目領域などを徹底解説 DXノウハウ スタートアップ ディープテック

ディープテック(Deep Tech)」とは、根深い社会問題に対して高い問題解決力を持つ、非常に革新的で専門性の高い技術を指します。

具体的には人工知能(AI)や量子コンピュータ、ブロックチェーン、クリーンエネルギー、ナノテクノロジー、ロボティクス、IoTなどの幅広い領域が当てはまり、昨今のSDGsへの関心の高まりやディープテック・スタートアップの増加によって、世界中で注目を集めています。

近年は特にChatGPTをはじめとしたAI技術の台頭が目覚ましく、将来的に人々や環境にとってより良い社会を構築していく上で、ディープテックが果たす役割は大きいといえるでしょう。

これらのディープテックの取り組みは、成功できれば科学振興と国際競争力の向上にも貢献できるほどの大きなメリットが得られる一方で、莫大な資金や研究・開発時間が必要になるため、新たに参入するのが難しいといったさまざまな課題も残されています。

そこで今回は、ディープテックの概要や注目されている背景、企業に向けた支援制度やディープテックに取り組む企業事例などを解説します。ぜひご参考ください。

<目次>

  • ディープテック(Deep Tech)の概要と注目されている背景とは?
  • ディープテックに取り組む企業に向けた支援制度
  • ディープテック領域に取り組む際のリスク
  • 【事例6選】ディープテック企業の取り組み

ディープテック(Deep Tech)の概要と注目されている背景とは?

ディープテックは「Deep Technology」の略で、英語で深さを意味する「Deep」と科学・工業技術を指す「Technology」を組み合わせた造語です。この言葉には、世の中のライフスタイルを大きく変えたり、現代に深く定着している社会問題を解決したりする技術という意味が込められています。

ディープテックの研究領域の例としては、前述のようにAIや量子コンピュータ、ブロックチェーン、クリーンエネルギー、ナノテクノロジー、ロボティクス、IoTなどの分野が挙げられます。

例えばAIで言えば、ビジネスシーンや翻訳、医療などに幅広く活用されており、生活の利便性向上や病気の早期発見に役立っています。ChatGPTといった生成AIを日常的に活用する人も増えたことでしょう。

また、ロボティクスの分野では、施設案内のためのサービスロボットから、宇宙空間などの人が行けないエリアで作業するロボットまで、どのようなシーンでロボットを人のために役立てられるかが深く研究され、多くの領域で実用化されています。

そして、IoTの技術は消費者の身近なところでも活用されており、自宅にスマートスピーカーやスマート電球などのIoT家電を設置し、音声やボタンひとつで操作を効率化している人も多いのではないでしょうか。

このようにビジネスシーンから日常生活に至るまで、ディープテックによって社会問題が解決に向かったり、生活の利便性が向上したりしている最中ですが、近年は特に、スタートアップ企業の間でディープテック事業が注目されています。

その背景には、2015年9月に国連サミットで掲げられたSDGsがあります。貧困や健康、産業と技術革新の基盤づくり、気候変動などの根深い社会課題を解決するために、ディープテックが今まで以上に注目されました。

また、近年に起業した企業の事業テーマとして、技術的な進歩が少ないシェアリングエコノミーなど、ビジネスモデルの改良を狙うものが多くありました。これに対して、技術革新に立脚したスタートアップ企業があらためて評価されたことも、注目された理由のひとつです。

ディープテックに取り組む企業に向けた支援制度

前述したような時代背景を受けて、現在はディープテックに取り組むスタートアップ企業に向けた支援制度が増えつつあります。

その代表的なものとして、経済産業省(産業技術環境局)が行う「ディープテック・スタートアップ支援事業」が挙げられます。主なスコープは「実用化研究開発支援」と「量産化実証支援」で、対象企業の研究開発や事業化を支援するための助成金が設けられています。

具体的に解説すると、まず「実用化研究開発支援事業」では、試作品の開発や他社と協力する共同研究開発について、それらの成果を活用し、事業化の判断を行うための詳細な調査実施や生産技術開発などの支援を行います。

また、「量産化実証支援事業」は、量産化に向けた生産設備や検査設備などの設計・製作・購入・導入・運用費用に加えて、これらの設備を設置する建屋の設計、工事費用までを支援しています。

そのほか、これらの事業をワンストップで行う「一気通貫支援」や、政府機関や協力国と連携し行う「国際共同研究開発事業」、海外展開事業を支援する「海外技術実証」を実施しているとのこと。

これらの事業は、ディープテック・スタートアップの事業成長加速を成果目標にしており、その事業性を担保するためにベンチャーキャピタルとの連携を重視して、企業を長期的かつ効果的に支援できる体制を整えています。

※出典:ディープテック・スタートアップ支援事業について(経済産業省 産業技術環境局)

ディープテック領域に取り組む際のリスク

ディープテックは、常識や慣習にとらわれない新しい発想と技術を業界に取り入れるため、成功すると大きなインパクトを社会に残せるメリットがあります。その反面、取り組む際の資金調達に苦労するというリスクも存在します。

というのも、ディープテックの各分野ではその時々の先進技術を扱うため、比較する先行事例がほとんど存在しません。

さらに、ベンチャーキャピタルには、それらの先進技術に関する専門知識を持った人材が少ないため、開発期間中の投資をするための判断材料が見極めにくいという問題があります。そのうえ、プロダクトが完成するまでの研究開発に10年かかることも珍しくありません。

それらの理由から、一般的なスタートアップと比べてベンチャーキャピタルからの資金調達が限定されるため、ベンチャーキャピタルとは違う行動原理や投資判断をする多様な資金調達先が必要です。

具体的には、「ディープテック分野の取り組みを応援したい」「社会的意義を重視して投資したい」など、金銭以外のリターンを欲する投資家を見つけなければなりません。このような投資家や政府からの補助金・助成金は、事業成立が展望できるまでの資金支援として非常に重要な役割を果たします。

しかし、特に日本では、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家の層が薄く、慈善・社会貢献活動をしているフィランソロピー組織や、富裕層の資金管理をするファミリー・オフィスの数も限られています。そのため、アメリカのように成長ステージごとに資金調達先を変化させることは困難です。

このように長期間の開発期間や設備投資負担の重さ、技術的なリスクの高さが、ディープテック分野の事業化への難易度を高めているといえるでしょう。

【事例6選】ディープテック企業の取り組み

ディープテックに取り組む企業は世界中に数えきれないほどあります。例えば、電気自動車の「テスラ」もその一例です。

そこで、ここからは主に国内企業のディープテックの取り組み事例をご紹介します。

京都フュージョニアリング

京都フュージョニアリング株式会社は、「核融合」によって地球の課題を解決し、人類に新たな未来をもたらすことを目指しており、その内容として以下の3つを目標に掲げています。

  • 核融合発電によってエネルギーの安定供給を常態化させ、世界のエネルギー問題を解決する
  • 核融合によって生まれる莫大な熱エネルギーを脱炭素技術に応用し、永続的にエネルギーが循環する社会を実現する
  • 核融合産業自体を継続的に成長させ、地球環境との調和を前提条件に、そのエネルギーをほかの産業にも応用可能なソリューションとして完成させる

同社は核融合特殊プラント機器の開発に強みを持っており、世界中の核融合プロジェクトに対して主要な装置やコンポーネントを供給するビジネスモデルを提供したことが、世界中で大きな話題となりました。

過去に世界最大級のディープテックコミュニティ「Hello Tomorrow」で、特に有望な企業として「Deep Tech Pioneer」に選出されたこともある注目企業です。

Synspective

株式会社Synspective(シンスペクティブ)は、内閣府の革新的研究開発プログラム「ImPACT」の研究成果を社会に実装するため、2018年に設立されました。

同社は自らSAR衛星開発を行う衛星データのソリューションプロバイダーで、生成したデータの提供や、会社独自の解析能力を用いて、世界が抱えるさまざまな課題解決を目指しています。(※SAR=マイクロ波を照射するレーダーの一種)

具体的な取り組みの一例として、フクロウにちなんで名付けられた小型SAR衛星「StriX(ストリクス)」は、複数の研究機関や大学と連携し、性能・コスト・製造容易性を意識した開発が進められています。

また、折り畳み可能なSARアンテナや高出力化と高度な熱制御などにより、大型のSAR衛星と遜色のない撮影能力を実現しました。開発と打ち上げ費用を合わせたコスト面でも、大型のものと比較して約20分の1に抑えられています。(画像はイメージです)

Telexistence

Telexistence(テレイグジスタンス)株式会社は、ロボットが活用可能なあらゆる領域において、ロボットの設計・製造・オペレーションを目的として2017年に設立されました。世界中の人々に、ロボットがもたらす恩恵を届けることを使命としています。

具体的には、場所を選ばずに遠隔で接続できるロボットや、AIによる自動制御と人間による遠隔操作技術を組み合わせたロボットなどを開発しています。

そのうえ、連続操作性や堅牢性を備えた機械設計であり、低コストで大量生産が可能です。これらの技術を活用することで、省人化・無人化の推進や経営戦略の多様化を図れます。

例えば、同社の独自AIシステムを搭載した新型ロボット「TX SCARA」は、コンビニのバックヤードなどにおいて飲料の陳列作業ができます。さまざまなサイズのペットボトルやすべての缶飲料に対応可能なため、これによって商品陳列業務の代替を実現して、店舗の人件費削減や労働力不足を解決しました。

AMI

AMI株式会社は、急激な医療革新を目指して研究開発を続けています。技術を極限まで高め、革新的で質の高い医療が受けられる世界を目指しています。

具体的には、「超聴診器」と呼ばれる「心疾患自動診断アシスト機能付遠隔医療対応聴診器」を開発し、人体の可聴領域を大きく超えて医師が診断できるようになりました。この聴診器は、心電・心音の同時計測と独自アルゴリズム及びデータ処理により、心臓聴診において周囲の環境に左右されず、精緻かつ素早い診断が可能です。

この開発は、これまで200年近く基本構造が変わってこなかった聴診器に革新をもたらすとして注目を集めました。将来的には、超聴診器にAIを使用した診療アシスト機能を搭載し、医師が見逃す可能性がある部分を補えるのではないかと期待が高まっています。

ジェリクル

ジェリクル株式会社は、東京大学の酒井 崇匡教授が開発した「テトラゲル(tetra-gel)」の医療領域での応用を目指すバイオベンチャーとして、2018年に創業しました。

前述の通り、ディープテックに携わるスタートアップ企業は資金面で壁にぶつかることが多いといわれますが、同社はエクイティ調達をせずに、創業3期目で数億円の営業利益を創出。「成功するまで赤字を出し続ける」というバイオベンチャーの従来のイメージとは一線を画す経営に成功しています。

同社の代表取締役CEOである増井 公祐さんは「シード・アーリー段階のバイオベンチャーは、資金調達をした時点でほぼ失敗する」「上場することで投資家や経営者は儲かるかもしれないが、そうなると技術を使って患者さんを救うという本来の目的が達成できない」と話します。

こうした背景から、黒字を出しながら成長できる「基盤技術型」というビジネスモデルを選択したということです。

こちらの記事では、より詳しくジェリクル社の取り組みをお読みいただけます:
バイオベンチャーこそ資金調達を踏み止まれ。3期目で億単位の利益をあげるジェリクルの軌跡

Idein

2015年に創業し、サービスを提供するための市場すらほぼ存在しない段階から累計33億円の資金調達を実現したIdein(イデイン)株式会社。

同社は、「エッジAIプラットフォーム」という領域で、画像や音声などの解析技術を用いて、実世界にある様々なデータを自動で収集・分析するプラットフォーム「Actcast」を開発。2020年1月に正式ローンチするまで、事業をピボットすることなく、5年に渡りプロダクト開発を行ってきたそうです。

現在では小売業や製造業を中心に、国内No.1シェアのエッジAIプラットフォームへと急成長を遂げており、同社の代表取締役 / CEOの中村 晃一さんは「私たちのビジョンに共感して、リスクマネーを投資してくださった投資家の方々が存在しなければ、このプロダクトを世に出すことは出来なかった」と語ります。

さらに、2024年2月には、東京都の「ディープ・エコシステム」支援対象企業に採択されたと公表。エッジAIのプラットフォーマーとしてユニコーン級の成長を目指しているとのことです。

こちらの記事では、より詳しくIdein社の取り組みをお読みいただけます:
投資家「Googleがそれをやらないのはなぜ?」市場ゼロから33億を調達したIdein社の裏側

さいごに

今回は、ディープテックをテーマに、その概要や注目されている背景、企業に向けた支援制度やディープテックに取り組む企業事例などをご紹介させていただきました。

このほかにも多種多様なディープテック事業が世界中で展開されており、その一つひとつが人々の未来を大きく変える可能性を秘めています。

本記事では紹介しきれない注目企業もたくさんありますので、興味をお持ちの方はぜひ調べてみていただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました!(了)

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