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「VPoE」とは? CTOとの違い、必要なスキル、VPoEが主導する活動の事例【4選】を徹底解説!

近年、エンジニア組織において「VP of Engineering(VPoE)」のポジションを設ける企業が増えています。

欧米のIT企業では以前から必要不可欠な存在とされており、先進的な事例を多く取り上げているSELECKではおなじみの役職ですが、日本における認知度はまだまだ高いとは言えません。

国内でVP of Engineering(以下、VPoE)の認知が広がり始めたきっかけとしては、2017年に株式会社メルカリがCTOとVPoEの2頭体制への移行を発表したことなどが挙げられます。

また、テクノロジー系のトップVCのひとつであるUnion Square VenturesのFred Wilson氏は、その存在意義について過去にこのように語っています。

When a company has a strong CTO and a strong VP Engineering that trust, respect, and like each other, you have a winning formula.

(翻訳)企業が強いCTOと強いVP of Engineeringを有し、その2人がお互いに好感を持ち、信頼、尊敬し合っている時、その企業は勝利の方程式を手に入れている。

出典:VP Engineering Vs CTO

本記事では、VPoEについて理解を深めたい方に向けて、その定義やCTOとの役割の違い、国内企業における活動事例などをご紹介します。

<目次>

      • 職種を超えた連携を生む「スクワッド組織」を運営する / READYFOR
      • 採用課題の解決に向けて、英語公用語化を推進する / マネーフォワード
      • 「ユーザーバリューストリーム」に沿ったアジャイル体制を構築する / SODA​​
      • 1年で開発組織を3名→26名へ急拡大した内製化プロセス / Micoworks

【まずは定義から】VPoEとは? CTOとの役割の違いを理解しよう

VPoEとは、「Vice President of Engineering」の略で、エンジニア組織のトップとしてマネジメントを担う責任者です。

VPoEの役割は、CTO(最高技術責任者)と比較して説明されることが多く、前述のFred Wilson氏は、このように語っています。

The CTO makes sure the technical approach is correct and the VP Engineering makes sure the team is correct. They are yin and yang.

(翻訳)CTOは、技術的に正しいアプローチを追求し、VP of Engineeringはチームを正しい状態に導く。両者は「陰と陽」的な存在だ。

それぞれの立ち位置は企業によって微妙に異なりますが、簡単にまとめるとこのような違いがあります。

【CTO】

  • 社内で最も技術に精通している存在
  • 企業全体の技術戦略や方針を描くことに特化している
  • 全社的な技術課題に取り組む
  • 多くの場合、創業期から技術面で企業を支え、CEOやCOOのように経営に参画している
  • 一般的にはVPoEよりも上級職で、より広い責任範囲を持つ

【VPoE】

  • エンジニア組織をマネジメントし、成功に導くチームビルダー
  • 採用、育成、チームマネジメント、開発マネジメントなどの組織課題に取り組む
  • 他部署(ビジネスサイドなど)のリーダーと連携し、上級職メンバーとして業務を行う
  • 高いコミュニケーション能力、課題解決能力が求められる

特に初期のスタートアップでは、CTOがVPoEの役割まで担うケースもありますが、組織の成長に伴って下記のような課題が生まれることで、新たにVPoEのポジションを設ける企業が増えています。

  • CTOが日々の業務に追われると、プロダクトの成長に必要不可欠な技術構想を描くことが遅れる
  • エンジニアの数が増えるにつれ、開発とマネジメントの両立が難しくなる
  • 採用を強化するフェーズでは、面談などに時間を割く必要が出てくる
  • エンジニアを深く理解し、適切なマネジメントを行う存在が必要になる

また、VPoEと名乗ってはいないものの、同様の役割を担うメンバーを選任する企業も珍しくありません。そのような企業では、開発本部長、エンジニア採用責任者、開発人事部長などの名称を使っている場合があります。

ここで、CTOやVPoEと混同されやすい「VPoP」、「VPoT」についても簡単にご紹介しましょう。

【VPoP】

VPoP(Vice President of Product)は、プロダクトの開発、改善、マーケティング、販売戦略の策定などに責任を持つ「プロダクトの最高責任者」です。企業によっては、プロダクトオーナーやプロダクトマネージャーと呼ばれています。

具体的には、プロダクトの品質向上および顧客満足度向上を目的として、顧客のニーズや市場動向を分析し、プロダクトの開発方針や成長戦略を決定する重要な役割を担っています。

【VPoT】

VPoT(Vice President of Technology)は、CTOが定めた戦略に則って自らプロダクト開発や運用を実践し、組織をリードする「システムの最高責任者」です。企業によっては、テックリードやアーキテクトと呼ばれています。

VPoTは、組織の目標にあわせた技術戦略の策定やコードレビュー、アーキテクチャの選定、イノベーション推進、ITインフラストラクチャの管理などを行います。また、開発チームだけでなく、他部門や外部パートナーとの連携も推進するなど、開発現場において幅広い役割を担っています。

VPoEが担うマネジメントの責任とテクニカルリーダーシップの役割

前述の通り、VPoEは組織をマネジメントし、CTOが全社の技術面を受け持つという協力体制ですが、当然ながらVPoE自身も、業務を遂行するにあたって技術の知識と経験を持っている必要があります。

そこで、ここではVPoEの責任と役割についてより詳しく説明します。組織の規模や複雑さによって異なりますが、一般的にVPoEは以下の領域に対して責任を持ちます。

チームマネジメント
事業戦略に基づいた開発チームの人材採用やメンバー育成、チームビルディング、評価や目標といった組織制度の設計、生産的な職場環境の整備などを含めたマネジメント全般を担当します。

テクニカルリーダーシップ
CTOが全社の技術方針を決定し、VPoEは開発チームに対して技術的なリーダーシップを発揮します。ここには、技術的な方向性の設定や標準・プロセスの定義、最新の技術やベストプラクティスを使用しているかの確認などが含まれます。

開発マネジメント
開発チームのエンジニアがプロダクトの実開発を進め、VPoEはプロダクトマネージャー、デザイナーなどのステークホルダーと密接に連携し、製品が期限内に、予算内で、最高の品質基準で提供されているかを監督します。また、プロジェクト要件の調整やアサイン管理も担います。

開発プロセスの継続的な改善
開発チームにおけるエンジニアリングプロセスおよび方法論を継続的に改善する責任を持ちます。これには改善すべき領域を特定し、変更を実施し、その効果を測定することが含まれます。

このようにVPoEは幅広い分野と責任範囲を持っていますが、その中でも特に重要なものは、チームマネジメントとテクニカルリーダーシップの2つと言われています。

なお、VPoEの担う業務はプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーの業務と近しいイメージがありますが、プロジェクト単位ではなく開発チーム全体をマネジメントするという点から、VPoEの方がより広い責任範囲を持っています。

また、小規模な開発チームでは、VPoEが直接エンジニアをマネジメントしますが、組織の規模が大きくなるにつれて、VPoEとメンバーの間にエンジニアリングマネージャーを配置する体制を敷く企業が多いようです。

VPoEになるために必要なスキルとは

VPoEになるまでの一般的なキャリアプランは、エンジニア→テックリード→VPoEという流れになります。エンジニアがVPoEへのステップアップを目指す場合は、業務において以下のスキルと経験を身につけることを意識すると良いでしょう。

リーダーシップスキル
VPoEは開発チームの技術的な方針を決定し、リードすることが求められるポジションであるため、強いリーダーシップスキルが不可欠です。また、開発チームの目標達成を鼓舞したり、積極的に模範を示しながら組織文化を作り上げ、必要な時には厳しい決断を下すことも必要となります。

このようなスキルを身につけるには、チームをリードするポジションを経験したり、リーダーシップ・トレーニングに参加したり、経験豊富なリーダーから指導を受けたりすることが有効です。

チームマネジメントスキル / プロジェクトマネジメントスキル
VPoEは管理職でもあるため、チームメンバーのモチベーションを高め、成果を最大化するために、マネジメントスキルを磨くことが重要です。また、複数のプロジェクトを同時に管理する必要があるため、プロジェクトの優先順位を決定し、リソースを最適化する能力も求められます。

例えばサイドプロジェクトなどで小規模なチームをマネジメントすることで、これらの経験を積むことができます。

コミュニケーションスキル
VPoEは、エンジニア・非エンジニアの両方のステークホルダーに対して、技術的な情報を明確かつ簡潔な方法で伝えなければなりません。そのため、非エンジニアとコミュニケーションを取る際には、できるだけ専門用語ではなく伝わりやすい表現で説明する配慮も必要となります。

プロフェッショナルネットワークの構築
VPoEは、業界の人脈の中でのリファラル採用やダイレクトリクルーティングで採用されることが多くなる傾向があります。

そのため、業界イベントへの参加や専門的な組織への参加、ソーシャルメディアの活用によって、プロフェッショナルな人材とのネットワークを構築することが有効でしょう。もちろん、転職ではなく社内でステップアップしていく道もあります。

【事例4選】VPoEが主導し、多様な取り組みを実施する企業

ここからは、SELECKにて先進企業のVPoEに取材した現場の事例を4つご紹介させていただきます。ぜひ自社での活動の参考にしていただければと思います。

職種を超えた連携を生む「スクワッド組織」を運営する / READYFOR

日本初のクラウドファンディングサービス「READYFOR」を運営する、READYFOR社。

同社でVPoEとして組織づくりを担う伊藤 博志さんは、ビジネスメンバーとエンジニアといった職種が異なるメンバーが一体となって、スピード感を持って業務を遂行するために、「スクワッド組織体制」を導入しました。

ビジネスメンバーとエンジニアが共通言語を持って業務を遂行することで、スピード感を持ってミッションの実現へと前進できるようになったそうです。

従来は開発チーム全体でひとつの共通目標を追う形でしたが、エンジニア組織が拡大して10名を超えた頃から、フロントエンド・バックエンド・プロダクトマネージャーといった役割ごとにチームを分け、異なる目標を持つ必要性が出てきました。

しかし、役割単位でチームOKRを設定すると、必ずしも全社的なミッションに紐付かない部分が出てくるんです。メンバーによっても注力すべきミッションが異なっているので、適切なOKRを設定することが難しい側面がありました。

そこで、より良い組織の形を模索して行き着いたのが、Spotifyなどの先進的な企業で取り入れられていた「スクワッド組織」です。

スクワッド組織では、職種が異なるメンバーを「ミッション単位」で集め、スクワッドと呼ばれるチームを編成します。そして、スクワッドごとにミッションに基づいて意思決定をし、業務を遂行するのが特徴です。

この組織体制とOKRをかけ合わせることで、目標設定を最適化できるとともに、メンバーの自律性が促進され、意思決定スピードの向上も期待できると考えました。

現在は、半期もしくは四半期ごとに各スクワッドのOKRを決めて運用するフローとなっています。(本文より)

▼スクワッド組織の導入によるミッションとOKRのアラインメント(イメージ図)

こちらの記事ではより詳しくマネーフォワード社の取り組みをお読みいただけます:
組織の「乳化」を目指す。職種を超えた連携を生み出す「スクワッド組織」運営とは

採用課題の解決に向けて、英語公用語化を推進する / マネーフォワード

日本国内のみならずベトナムとインドにも海外拠点を持ち、法人向けバックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」をはじめ、さまざまなサービスの開発・提供をおこなう株式会社マネーフォワード。

さらなる事業成長を見据えた時に、エンジニア人材の確保が目下の最重要課題となっていた同社では、中長期的に世界中から優れたエンジニアを採用するために、2021年秋から英語公用語化をスタートしました。

その施策を推進し、現在はベトナム拠点にてVPoEを務める小牧 将和さんは、「開発組織で英語公用語化を進め、2024年度末までに完全英語化する」「Non-Japanese Speakers(非日本語話者)を採用し、一緒にチームを作っていく」という目標の達成に向けて、主に下記の取り組みを実施しました。

  • ロールモデルとなる多国籍開発チーム「Team Nikko」を立ち上げ、英語で業務するイメージを社内に伝える
  • メンバーが自分で取り組めるコーチング形式の英語学習を提供
  • 英語学習は4〜5名の班を組み、孤独にならない工夫を行う
  • 毎日業務内で3時間も学べるルールを設ける

このような施策によって、非日本語話者を含めた採用活動による組織拡大とともに、社内エンジニアの38%を外国籍人材が占めるほどにグローバル化を進めることができたといいます。

「英語公用語化」でエンジニアの38%が外国籍に。世界中から人材を採用するノウハウとはこちらの記事ではより詳しくマネーフォワード社の取り組みをお読みいただけます:
「英語公用語化」でエンジニアの38%が外国籍に。世界中から人材を採用するノウハウとは

「ユーザーバリューストリーム」に沿ったアジャイル体制を構築する / SODA​​

2022年に海外進出も果たしたCtoCフリマアプリ「SNKRDUNK(スニーカーダンク、通称スニダン)」。

その運営を行うスタートアップであるSODA社は、創業から3年で100億円以上の資金調達を達成し、企業評価額は380億円を超える急成長を遂げています。

さらに、組織全体は直近1年で3倍強の規模になり、中でもエンジニア組織は、採用活動を始めて2年間で「2名から20名体制」へと急拡大しているといいます。

同社でVPoE兼エンジニアリングマネージャーを務める林 雅也さんは、1人目の正社員エンジニアとして入社し、直近まで月30件ほどに及ぶカジュアル面談をすべて担当するなど、エンジニア組織における採用と組織づくりを牽引

採用に関しては、HR専任メンバーがいない中、エンジニアの9割が熱量高く採用活動に参加し、見極めなどの属人化に対する打ち手として「半構造化面接」を開始したそうです。

加えて、「ユーザーバリューストリーム」に沿ったアジャイル開発体制を構築した上で、「全員リードエンジニア」の姿勢で、課題解決力に長けたチームを作るといった特徴的な組織づくりも行っています。

こちらの記事ではより詳しくSODA社の取り組みをお読みいただけます:
スニダン」で100億超の調達!SODA社のエンジニア組織が2名→20名に急拡大した裏側とは

1年で開発組織を3名→26名へ急拡大した内製化プロセス / Micoworks

2019年2月よりLINEを活用したマーケティングツール「MicoCloud」を提供し、シリーズAで累計20億円の資金調達を達成したMicoworks(ミコワークス)株式会社。

同社でVPoE 兼 SRE Engineer Managerを務める竹田 昌男さんは、外注に依存し開発組織自体がなかったゼロベースから内製化の推進を担い、特に採用面での工夫によって1年で26名の開発組織を構築することに成功しました。

特に、「カジュアル面談から選考に進んでもらえない」「内定承諾がもらえない」といった課題に対するある工夫によって、内定承諾率を70〜80%に向上。

現在は、外部パートナーと協働してマルチプロダクトの開発を進めながら、社内外合わせて90名を超える規模にまで組織を拡大させ、徐々に内製化比率を高めているといいます。

1年で開発組織を3名→26名へ拡大。スピーディな機能開発を目指す内製化推進プロセスとはこちらの記事ではより詳しくMicoworks社の取り組みをお読みいただけます:
1年で開発組織を3名→26名へ拡大。スピーディな機能開発を目指す内製化推進プロセスとは

今回は、「VPoE(VP of Engineering)」をテーマに、その定義からCTOとの役割の違い、各社の事例までをご紹介させていただきました。

海外企業の動きにならって、国内企業でも英語名の役職が増えていますし、VPoEを起用する企業もますます増えていくことと思います。

当媒体SELECKでは、引き続き開発組織に関する取り組みの取材記事や、各社の事例から学べるイベントを開催していきますので、ぜひチェックしていただけますと幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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