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【事例7選】ビジネスや教育にも!「Unreal Editor for Fortnite(UEFN)」を徹底解説!

近年、世界中で圧倒的な人気を誇るゲームFortnite(フォートナイト)。1人でのプレイはもちろん、友人とチームを組んで楽しめることから、ゲームにあまり馴染みがない層にも広く知られているタイトルの一つです。

このFortniteの開発元であるEpic Gamesが2023年3月に公開したのが、Unreal Editor for Fortnite(以下、UEFN)」という無料アドオン(拡張機能)です。UEFNはあらゆるアイデアをゲーム上で実現できる次世代の開発ツールとして注目を集め、ゲームとしての利用用途に留まらず、ビジネスや教育といった分野への活用も見込まれています。

そこで今回は、UEFNの概要から機能の詳細、活用事例までを徹底解説いたします。ぜひ最後までご覧ください。

<目次>

  • 「Unreal Editor for Fortnite」とは?
    • 概要 / インターフェース / 使用言語 / アセットストア / 収益システム
  • UEFNと「フォートナイト クリエイティブ」との違い
  • 【厳選7】「Fortnite」や「UEFN」の企業活用事例

※本記事に掲載している情報は、記事公開時点のものになります。サービスのアップデートにより情報が記事公開時と異なる可能性がございますので予めご了承ください。最新の情報については、各サービスの公式ページをご参照ください。また、記事の内容についてご意見や修正のご提案がございましたらこちらまでお願いします。

「Unreal Editor for Fortnite」とは?

UEFNの詳細をお伝えする前に、まずはFortniteについて簡単におさらいしておきましょう。

Fortniteは、パソコンだけでなくPlayStationやXboxといった機器で遊べる無料オンラインアクションゲームです。ジャンルとしては、3人称視点でプレイするサードパーソン・シューティングゲーム(TPS)に分類されます。

発売されたのは2017年7月で、米国の大手ゲームパブリッシャーであるEpic Gamesが開発・提供しています。当初はパソコン向けにリリースされましたが、その後間もなくPS4やiOS版も登場し、全世界で爆発的なブームを巻き起こしました。

ゲーム分析サイト「ActivePlayer」によると、現在でもなんと2億3,000万人以上ものアクティブユーザー数を誇ります(※2023年9月時点)。今も世界中で遊ばれており、その人気が不動であることを、この数字が如実に示しています。

このFortniteには三つのゲームモードが存在し、中でも特に人気が高いのは「バトルロイヤル」モードです。最大100人が集まる大規模ステージで、プレイヤーはフィールド上のアイテムを集めてクラフトしながら、敵と銃撃戦を繰り広げます。マッチごとに変化するステージで、「ビクトリーロイヤル(マッチで1位になること)」を目指して争うゲームです。

そして、今回の記事でご紹介するUEFNは、Fortniteの「アドオン(ソフトウェアの拡張機能)」で、Epic Gamesの公式ストアを見ると、説明欄には次のような記載があります。

「ゲームや体験を設計、開発し、フォートナイトに直接公開するための新しい PCアプリケーションです。」

※参照:Epic Games Store

つまりユーザーは、UEFNを使ってFortnite上にオリジナルのゲームや「ワールド(島)」と呼ばれるステージをつくり、それらを全世界に公開することで、多くのユーザーにプレイしてもらえるということです。アイデア次第でいかようにもカスタマイズできることから、ゲームとしての側面だけでなく、ビジネスや教育に役立つツールとしても注目されています。

このUEFNはリリースされて間もないツールですが、すでにユニークでクリエイティブな活用事例も現れ始めています。実際の活用事例については記事の後半で紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

続けて、UEFNの仕組みや機能面、そして新たに追加された収益システムについてもう少し掘り下げて見ていきましょう。

1)インターフェース

UEFNは「Unreal Engine」をベースにしたインターフェースであるのが特徴です。

Fortniteはゲームエンジンの「Unreal Engine」を元に作動していて、具体的には「Unreal Engine 5」から提供されているツールを利用できます。Unreal EngineもEpic Gamesによって開発されており、ゲームだけでなく3Dやアニメーションの制作もできることから、映画やVR作品などにも広く活用されています。

UEFNはUnreal Engineを基礎としたインターフェースで構成されているほか、同エンジンの機能を多く採用していることから、同エンジンを使用した開発経験のある人にとってはより扱いやすくなっており、すぐ使いこなせるようになるでしょう。

もちろん、Unreal Engineに触れたことがなくても大丈夫です。UEFNは誰でも直感的に操作でき、ゲーム開発初心者でも問題なく扱えます。またEpic Gamesの公式サイトでは、UEFNの使い方をマスターするための用語集チュートリアルが用意されているので、ぜひチェックしてみてください。

2)使用言語

UEFNでは、プログラミング言語「Verse」を使用して開発を行います。

この言語を初めて耳にする方がほとんどではないでしょうか…?それもそのはず、VerseはUEFNのためだけに生まれた、独自のプログラミング言語です。ゲーム開発および、それに付随するコンテンツ制作を念頭に設計されています。

習得のしやすさもVerseの特徴です。Epic Gamesが公開しているドキュメントは、プログラミングが未経験のユーザーでもわかるように、丁寧に解説されています。基本的なコードの書き方から、少し発展的な手法まで、実際に手を動かしながら体系的に学習できるので、ぜひ活用してみてくださいね。

Verse※出典:Unreal Editor for Fortnite が パブリック ベータ版でご利用いただけるようになりました! – Epic Games公式サイト

また、このVerseはゲーム開発のためだけでなく、メタバース用のプログラミング言語としても設計されています。

というのも、Fortniteは将来的に「オープン・メタバース」としての進化を目指しています。オープン・メタバースとは、異なるプラットフォーム間での自由な行き来が可能になる、つまり「相互運用性がある」世界です。

この相互運用性を担保し、オープンな世界の実現を目指した形での開発が進められており、実際にこの機能が実装されれば、ユーザー体験や利便性の向上に加え、何百万人ものクリエイターの共創による新たなコンテンツや、様々なビジネスモデルの誕生が期待されます。

▼メタバースについて詳しくは、こちらの記事もご覧ください
誰でもわかる「メタバース」とは? 歴史や定義、参入プレイヤーも徹底解説【Microsoft、Meta、Roblox他】 – SELECK(セレック)

3)アセットストア

また、UEFNでは「FAB」と呼ばれるコミュニティから、さまざまなアセットを取り込んでプロジェクトに実装できます。

FABとは、3Dモデルやマテリアル、サウンドなどゲームやメタバースの開発に必要な様々なデジタルコンテンツを公開・販売できるオープンマーケットプレイスです。個人のクリエイターの開発を促すだけでなく、彼らに対する利益の還元も目的としています。

具体的には、「Unreal Engine マーケットプレイス」の利用経験がある方は、それをイメージするとわかりやすいでしょう。数千個の中からバラエティに富んだアセットをインポートし、使いたいものを自由に選んで組み合わせ、自分だけのアイデアを実現できます。FABには優れたブラウズ機能があるため、プロジェクトに合ったアセットを簡単に見つけることも可能です。

先ほどお伝えしたように、Fortniteは「オープン・メタバース」としての構想を掲げていることから、インポートされたアセットは、サポートされている任意のプラットフォーム上でも同様に機能し、オリジナルの体験を構築するのに役立ちます。

2023年中には、クリエイターがデジタルアセットを公開・販売できるマルチプラットフォーム・マーケットプレイスとして「Fab.com」がリリースされ、同プラットフォームにて扱うアセット数は数百万に達する見込みだとされています。

さらに、2023年3月にEpic Games Japanによって公開されたプレスリリースによると、クリエイターは同プラットフォーム上でコンテンツを販売した場合、売上の88%を収益として受け取れるとも発表されており、新たな市場が生まれる可能性があるといえるでしょう。

4)収益システム

Epic GamesはUEFNと同時に、「Engagement Payouts」と呼ばれる収益分配システムを発表しました。

これはFortniteの発展に貢献したクリエイターを金銭的にサポートする「Creator Economy 2.0」に基づく仕組みです。従来提供されてきた「クリエイターサポートプログラム」とは別に開始されました。

Engagement Payoutsでは、ユーザーが島をつくって公開すると、その人気度やエンゲージメント獲得数に応じて、Fortniteが生み出した純利益の40%を配当する形で収益を受け取れます。なお、対象者にはバトルロイヤルモードなどのマップを作成したEpicの開発者も含まれており、個人ユーザーとEpic Gamesで収益を分け合う形となるようです。

Epic Gamesでは、収益を受け取る条件として「18歳以上であること」「過去90日間で一定額以上のゲーム内購入があること」などを定めています。また資格を得られるのは個人のみならず、企業などの法人やチームも対象です。

まだスタートしたばかりのプログラムであり、内容がアップデートされる可能性も考えられることから、今後の動向が注目されます。

UEFNと「フォートナイト クリエイティブ」との違い

ところで、「フォートナイト クリエイティブ」の存在をご存知でしょうか。

これは、Fortnite上で2017年に公開されたゲームモードの一つで、自分で建物や仕掛けを配置し、オリジナルのワールド(「島」「マップ」)をつくって遊べるモードです。また、他のユーザーが作成したワールドに遊びに行くこともでき、これまでに累計100万以上のワールドが公開されています。

上記のような機能をみると、「UEFNと何が違うの…?」と感じられたのではないでしょうか。たしかにコンセプトはよく似ているものの、UEFNでは、クリエイティブとは一線を画した開発体験ができます。

大きな違いとしては、クリエイティブモードは建築やデザイン面に特化している一方で、UEFNはゲーム開発の要素が強く、充実した機能と操作性の高まったエディタによって、より洗練されたデザイン、ロジックに基づいたゲーム体験を作ることが可能です。

以下、UEFNで新たに搭載された開発機能について解説していきます。ここでは、なかでも特徴的な機能を3つピックアップしました。

1)アセットのインポート

UEFNでは既存のアセット以外にも、カスタムコンテンツをインポートして使用できます。アニメーションやサウンドエフェクトなど、自分が持っている素材を取り込めるほか、UEFN上で新たに背景をつくることも可能です。

補足として、UEFNを使用して独自に作成・公開した制作物の所有権はクリエイターに付与され、いつでも削除可能とされています。

2)ランドスケープ機能

UEFNのランドスケープモードでは、豊富なツールを使って一から背景や景観を制作できます。作業プロセスは「Manage(管理)」「Sculpt(スカルプト)」「Paint(ペイント)」の3段階に分けられます。

それぞれにツールが割り当てられており、それらを使い分けることで、細部までこだわったランドスケープの制作が可能です。Photoshopと連携してペイントをしたり、インポートするための画像生成を行ったりすることも可能です。

3)ライブ共同作業

複数人のチームで開発にあたる場合、UEFNでは同時に共同作業を行うことが可能です。個々人の編集内容はリアルタイムで反映され、常に最新のバージョンを適用しながらテストを繰り返し、開発を進められます。

さらには他のチームとの共同作業も可能で、より効率的で、自由度高く作業を進められるようになりました。

【厳選7】「Fortnite」や「UEFN」の企業活用事例

これまでお伝えしてきた通り、Fortniteは元々、ゲーム体験の構築を目的として開発されたされたコンテンツでした。しかし近年においては、ビジネスや教育といったゲーム以外の領域での活用事例も増えています。

たとえば教育の現場では、子供たちのモチベーションを保ち、楽しみながら学習に取り組める環境を提供する学習ツールにもなり得ます。

さらにビジネスシーンにおいては、やはりメタバース領域への関心が高まっている中、Fortniteは「リアルとデジタルの融合」を体現したユーザー体験を長らく提供してきたことから、個人に限らず企業での活用も期待されています。

そこで最後に、UEFNおよびFortniteの活用事例を7つご紹介します。特にUEFNは登場して間もないツールながら、誰もが知っている大企業のプロジェクトにも取り入れられており、今後の展開が非常に楽しみです。

1.NIKE×UEFN「Airphoria」

世界的スポーツブランドNIKEとEpic Gamesがタッグを組んで制作されたプロジェクトが、「Airphoria」です。NIKEの人気製品Air Maxをモチーフにした仮想世界で、ユーザーは新感覚の「スニーカーハント」をUEFNで開発された「Airphoria島」で楽しめるとして、日本では2023年6月28日まで期間限定で公開されていました。

また、条件をクリアしたユーザーに対しては、美しくスタイリッシュにデザインされた限定コラボアイテムが、ゲーム内および現実世界(北米地域のみ)で配布されるなど、新たなマーケティング施策として注目されました。スポーツカルチャーの発信における中心的存在であるNIKEが、UEFNを活用した新しい体験の提供に乗り出した意義は大きいでしょう。

2.JTB×Fortnite「Island Resort e-Travel」

「Island Resort e-Travel」は、日本の大手旅行会社JTBの企画による、Fortniteを活用したオンライン旅行体験プログラムです。「オンライン・デジタル空間だからこそ楽しい旅」をコンセプトに、これまで4回にわたって開催されました。沖縄やハワイといったリゾートを模したマップで、観光スポットを巡ります。

また、有名配信者とマッチできたり、ゲーム大会などのイベントが開催されたり、実在する地域をモチーフにしたクリエイティブMAPに遊びに行けるといったプログラムも用意され、コロナ禍でも旅行気分を味わえると非常に話題となったプロジェクトです。

3.O2×Fortnite「O2 Arena」

イギリスの通信大手O2が、Fortnite上で建設したオリジナルの音楽アリーナが「O2 Arena」です。本プロジェクトの実施に際して、Epic Gamesも協力にあたっています。イベント期間中、プレイヤーはO2 Arena内の探索や、イギリス発ポップバンド「Easy Life」のバーチャルライブを楽しみました。

また仕掛けとして、ファンはライブが始まるまでの間ミニゲームに参加して友人と時間を過ごしたり、アルバムの収録トラックにちなんだ6つのエリアを散策したりするといったコンテンツも用意されていたようです。

現在は上記のエリアは閉鎖されていますが、Fortniteが音楽、エンターテインメントと結びつき、マーケティングに活用できることを示した最たる例です。

4.ソニー×UEFN「SHIBUYA MULTIVERSE」

「SHIBUYA MULTIVERSE」は、ソニーによるマルチバースプロジェクトで、映画「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」の公開にあわせて制作されました。同映画がマルチバースをテーマとしていることもあり、UEFNで東京・渋谷の街並みを再現し、Fortniteのマップとして公開されています。

このプロジェクトを監修したヤノス氏は、アニメーション作品「エヴァンゲリオン」の「第三新東京市」を、Fortnite内で表現したクリエイターとして注目を集めた人物です。

ソニーの高度な技術力とUEFNを掛け合わせ、きらびやかな渋谷の世界が巧みにつくり込まれているのが魅力です。新感覚のゲーム体験をもたらしただけでなく、映画の宣伝広告としても重要な役割を果たしました。

5.D-SHiPS32×Fortnite「D-SHiPS JOURNEY」

特定非営利活動法人D-SHiPS32が中心となって発足した教育プロジェクト「D-SHiPS JOURNEY」も、Fortniteを活用しています。

このプロジェクトは、障がいのある子どもたちへ、体験学習を通じたICT(情報通信技術)教育の機会を提供することを目的に立ち上げられました。病院に入院している子どもや特別支援学校に通う子どもが集い、ゲーム内のアクティビティに参加したり、島の制作に挑戦したりしています。

身体の不自由な子どもでもアクティビティを体験できるよう、ユニバーサルアクセスを実現している点がポイントです。2023年7月には、実際に子どもたちのつくった島が2つローンチされました。Fortniteを活用したICT教育と障害福祉が、形あるものとして出来上がってきている事例です。

6.キャドセンター×UEFN「TOKYO JAPAN REALMAP」

「TOKYO JAPAN REALMAP」は、株式会社キャドセンターが制作した、現実の東京駅周辺エリアが忠実に再現されたマップです。同社は20年以上にわたって3D都市データの整備と利活用を行う企業で、自社データを利用したコンテンツ制作を手掛けています。

メタバースやVR空間に最適化された3D都市データ「街バース」とUEFNを駆使することで、フォトリアルな東京駅前・丸の内エリアがフォートナイト上に再現されています。そのため、レンガ造りの見慣れた駅舎をバックに、プレイヤーは自由にバトルやドライブを楽しむことができます。

7.GLITCH RAVE

最後にご紹介するのは、UEFNを活用した様々な作品を手がける新鋭の個人クリエイター、MISOSHITA氏(@Misositaworksが主導するプロジェクトGLITCH RAVEです。

同氏は日本発のメタバースNFTプロジェクト「Metaani」の制作に携わったことでも知られていますが、すでにUEFNで制作した第一弾Fortniteマップの「GLITCH RAVE ZERO」がXRクリエイティブアワードでも評価されているなど、メタバース分野での幅広い活躍が期待されています。

この「GLITCH RAVE」は、メタバース、ブロックチェーン、AIなどのテクノロジーを活用した、音楽・漫画・ゲーム・テクノロジーが融合する次世代型IPプロジェクトです。

株式会社5project、株式会社ササクレクト、マイスエンタテインメント株式会社の手がける次世代音楽IPプロダクション「volve creative」ともコラボレーションしており、その第一弾ではアーティストのRINNEEE(吉田凜音)氏とコラボしてUEFNを活用した限定ライブを実施し、2023年9月にはリアルイベントも開催されました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はUEFNの概要からFortniteの「クリエイティブモード」との違い、活用事例までをお伝えしてきました。

メタバース領域への注目が高まる昨今、今後も引き続きビジネスシーンでの活用事例が生まれてくるツールかと思います。今後の展開も非常に楽しみです。引き続き、注目していきたいと思います。(了)

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