• コラボレーター
  • 中野 康平

「正しい1on1」は存在しない? 1on1のプロ4人が、読者のリアルな悩みに答える!

昨今、マネジメントの一手法として、多くの企業が導入を進めている「1on1」。

2017年頃から急速に広まってきた1on1ですが、「導入してみたものの、いまいち効果がわからない」「現場で運用がまわらず、形骸化してしまっている」といった企業も多いのではないでしょうか。

そこでSELECKでは、1on1にまつわる悩みの解消を目的に、現場のナレッジをシェアするイベント「SELECK LIVE!」の第2回を、11月28日(木)に開催いたしました!

今回ご登壇いただいたのは、いずれも1on1のプロフェッショナルな方々ばかり。各社の1on1を紹介するライトニングトーク(以下LT)、SELECK読者の1on1の悩みに答えるパネルディスカッション、さらに1on1の実演ワークショップまで行いました。

▼RELATIONSの社員同士で行った、1on1実演の様子

今回のイベントレポートでは、登壇4社によるLTと、パネルディスカッションの全内容をお届けします。ぜひご覧ください。

<目次>

  • LT①:「経験学習モデル」を回す、ヤフーの1on1を紹介
  • LT②:Sansan社員250人が経験した、社内コーチング型「1on1」
  • LT③:1on1の本質は「コミュニケーション」。ヤプリの1on1事例
  • LT④:メンバー主体でペアが自然発生。RELATIONSの1on1運用
  • 「1on1メンターの悩み」に答える、パネルディスカッション!
  • おわりに

LT①:「経験学習モデル」を回す、ヤフーの1on1を紹介

はじめに、ヤフー株式会社で人財開発・組織開発を担当している小金 蔵人さんに、1on1の運用全般についてお話いただきました。

同社では、1週間に1回・30分程度を目安に、全社で1on1を行っているそうです。そしてその目的は「上司が部下のために定期的に時間を割き、部下の話に耳を傾けることを通じて、目標達成と成長を支援する場」としています。

ここでの「成長支援」とは、同社の人財開発の軸である「経験学習モデル(※)」を回すことを意味しており、そのプロセスのなかで1on1は「内省」と「概念化」をサポートする場になっているそうです。

※経験学習モデル…組織行動学者のデイビット・コルブが提唱したモデルで、「経験→内省→概念化→実践」のサイクルから学ぶプロセスのこと

また、1on1で扱うテーマは、タイミングと目的に応じて変化するといいます。

例えば

  • 毎期ごとの「目標設定→期中フィードバック→評価」に関する1on1
  • 上記の進捗を確認し、内省を促すための週次の1on1
  • メンティの話したいタイミングで適時扱う「キャリア」や「組織戦略」についての1on1

といったものがあります。

また「1on1に正解はない」と話されていた一方で、守破離の「守」にあたる基本の型をご紹介いただきました。

特にマネジメント経験の浅いメンバーには、まず基本の型を理解してもらった上で、実践の場で試行錯誤してもらうそうです。

1on1の実践を通じて、対話の量が増加するだけでなく、他の人事施策との組み合わせによりマネジメントレベルが向上し、組織全体に変化の耐性がつく、といった様々な変化が起きているといいます。

LT②:Sansan社員250人が経験した、社内コーチング型「1on1」

次に、Sansan株式会社で社内コーチを務める三橋 新さんより、1on1(社内コーチング)についてお話いただきました。

三橋さんに過去取材した「システム・コーチング」の記事も、ぜひご覧ください。

三橋さんは、1on1における最も大事なポイントは「メンターがメンティの可能性を心から信じられるかどうか」だと話します。

コーチングの目的は「本質的な変化を促すこと」であり、1on1における課題の明確化や意思決定、行動・学習などは、あくまで手段です。

同社には、社内コーチング制度「コーチャ」があり、希望制でコーチングを受けられるといいます。また、リーダーとメンバー間の1on1は制度ではないものの、約7割が自主的に実施しているそうです。

メンターとして意識すべきことは、メンティにとっての「エッジ」を意識させて越えさせること、そして自らもエッジを越え続けることでメンティの成長を促すことだといいます。このエッジとは、コンフォート・ストレッチ・パニックという3つのゾーンの中で、ストレッチゾーンとパニックゾーンの境界を指しています。

さらに、コーチングに飽きさせない工夫として、バリューカードやリフレクションカードなど、様々なツールを活用しているそうです。

▼実際に活用されているツール

このような社内コーチングを通じて、メンティの本質的な変化が見られており、今後は「他者依存から自己主導へ」、さらに「自己主導から自己変容・相互発達へ」の変化まで後押ししていきたいとのことでした。

LT③:1on1の本質は「コミュニケーション」。ヤプリの1on1事例

次に、株式会社ヤプリで人事責任者を務める高橋 寛行さんに、1on1の本質についてお話いただきました。

高橋さんは、1on1に対して「こうしなければいけない」と身構えるのではなく、「普通のコミュニケーション」と捉えることが大切だといいます。

そのため、1on1の目的を固定せず、1on1を始める前に、その場の目的についてメンターとメンティで確認することが重要だと話します。

現在、高橋さんとメンバー間では週1回・30分程度で1on1を設定し、毎回の話した内容はGoogleドキュメントに残しているそうです。

▼実際に残している1on1のログ

同社では、これから1on1を導入・浸透させていくフェーズとのこと。ですが、長年の人事経験から「1on1により生じた変化」についても考えをお伺いしたところ、先のおふたりとは違った視点でのお話をいただきました。

それは、1on1によって変化が起こるわけではなく、起こった変化を1on1でキャッチアップする、というものです。マネジメントにあたって、部下の変化をキャッチアップするために、1on1が有用だといいます。

LT④:メンバー主体でペアが自然発生。RELATIONSの1on1運用

最後に、SELECKの運営会社であるRELATIONS株式会社で、組織改善コンサルタントをされている飯岡 幹雄さんにお話いただきました。

飯岡さんの1on1を全文書き起こしたブログも、ぜひご覧ください。

2017年頃から、マネージャーとメンバー間で任意で実施してきた1on1を、2018年に「自律的成長を支援すること」を目的として制度化しました。

現在、1on1の実施率は90%を超えており、すべてのペアが2週に1度・30分程度をベースに実施しているそうです。

具体的な運用としては、自社ツールの「Wistant」を活用し、メンティ側が「事前アンケート」に毎回答えているとご紹介いただきました。

その内容は、前回からの2週間における「よかったこと・悪かったこと」の振り返りと、今回の1on1で話したいトピックを選択する、というものです。

▼実際に活用されている「事前アンケート」

メンターは予めこの事前アンケートに目を通した上で、1on1に臨むそうです。

また同社では、マネージャーとメンバー間だけでなく、他部署のメンバー同士で行う「斜め1on1」も活発だといいます。

もともとオンボーディング施策のひとつとして始まった「斜め1on1」ですが、今では必要性を感じたメンバーが主体的にペアを組み、新しい1on1が生まれているそうです。

実際、「好きなように課題を話せるだけでも頭の中が整理される」「タイムリーに相談できて軌道修正のスピードが上がる」といった社員の声をご紹介いただきました。

「1on1メンターの悩み」に答えるパネルディスカッション!

各社の取り組みをお伺いした後は、SELECKの読者アンケートで収集した「1on1メンターの悩み」に答えるパネルディスカッションを行いました。

実際に212件あつまった回答の中から、特に多かった「5つの悩み」を抜粋して、4人の登壇者の方々に討論いただきました。そのリアルな答えとは…?

▼1on1メンターが抱える「5つの悩み」

  1. 1on1で話す内容が、直近の業務のことに偏りがち…
  2. ティーチングとコーチングをうまく使い分けられない…
  3. メンティの課題をうまく引き出せない…
  4. 評価面談のように場が固くなってしまう…
  5. 忙しくて1on1の時間がなかなか確保できない…

ーーまずは、一番多かった悩みですね。「1on1で話す内容が、直近の業務のことに偏りがち…」これからいきましょうか。

飯岡 僕はこれを見て、正直「いいんじゃない?」って思いました(笑)1on1のテーマとして、直近の業務を取り上げることは全然いいかなと思っていて。むしろ、30分使って十分に振り返ることも大事だと思うので、僕の答えとしては「全然悩む必要ない」です。みなさんはどうです?

一同 いいと思います(笑)

ーーなるほど。みなさん一致ですね(笑)補足のある方、いらっしゃいますか?

高橋 僕も1on1の目的はなんでもいいと思っていて、直近の業務に話が偏ってしまうくらい業務が逼迫している状況であるなら、それは話した方がいいと思います。

ただ、1on1は閉ざされた空間でもあるので、場合によっては1on1ではなく業務ミーティングの場を別で設けることも検討しますかね。

三橋 コーチングでいうと「意図的な協働関係」という言葉があるのですが、メンターとメンティの意図にズレがなければ、問題ないと思います。

ーーそのコーチングの文脈ですが、2つめに「ティーチングとコーチングをうまく使い分けられない…」という悩みが挙がっていました。

三橋 これは「SL(Situational Leadership)理論」という古い理論にもあるのですが、「相手の発達度合い」に応じて関わり方を変える、ということを意識するといいと思います。

たとえば僕の場合であれば、新卒に対してコーチングをする際には、比較的オープンクエスションにして考えを引き出しつつも、ティーチングを多めにします。逆に、僕の先輩や上司を相手にする場合には、コーチング中心になりますね。

小金 端的に言うと、コーチング、ティーチング、フィードバックの3つのスキルは明確に分けられるものではないと思っています。

「よし、コーチングをしよう」といって話すのではなく、今発した言葉を振り返ったらたまたまコーチングになっていたり、「僕からみると順調じゃないように見えるんだけど、どう思う?」みたいな形で、フィードバックをした後にコーチングを添えたりもしますし。もっと自然にするようなものかなと思いますね。

飯岡 そもそもこの悩みって、実は使い分けられていないんじゃなくて、コーチングのやり方を知らないだけかもしれないですね。

そうした方は、自分の1on1を振り返り、メンターとして教えたことを何かひとつでも思い出していただく。それを教えてないで伝えるためには、どうすればいいのかを考える。みたいな方法で、徐々に慣れていくといいかなと思います。

ーー次の悩みも少し似ているんですが、「メンティの課題をうまく引き出せない…」これに対してはどうしたらいいでしょうか?

高橋 僕が思うのは、コーチングの悩みというよりも、ベースにあるコミュニケーションの問題が大きいのかなと。たとえば僕が突然、はじめて1on1をする相手に冒頭の5分で「今、現場で感じている悩みとかあります?」と聞いてもそれは出てこないと思うんです。

特に慣れないうちは、メンティ側もどんな内容をどれくらいの粒度で話していいのかわからなかったりするので、冒頭に1on1の目的を伝えたり、こちらから課題の粒度を変えたり、プライベートの話を織り交ぜたりしています。

ーーたしかにメンティ側の心理的ハードルを解除することは大切ですよね。コーチングの観点からはいかがですか?

三橋 まず1on1の考え方として、継続的に行っていくものなので1回でメンティの課題を出しきる必要はないかなと思っています。質問とフィードバックを中心にしていますが、何回かにわけてタンスの引き出しから服をすべて出すような感覚です。

服を全部引き出してから並べてみると、要るもの要らないもの、虫食いがあるものなどが見えてくるので、そこから課題をつかみますね。

ーーその「引き出す」という行為のために、なにを意識しているのでしょうか。

三橋 そうですね、シンプルな問いかけはすごく意識しています。いわゆるオープンクエスチョンですね。

たとえば「あなたにとって仕事ってなんですか?」とか日常的に意識していないことを質問すると、相手の潜在課題を引き出すことができます。逆に質問してすぐ答えられるものは、あまり価値がないかなと思います。

僕は、相手が思考している「空白の時間」はリッチな時間だと思っているので、メンティにも事前に「好きなだけ考えていいよ」と伝えていますね。

ーーありがとうございます。それでは次の悩みに移ります。「評価面談のように場が固くなってしまう…」これも関係性の問題がありそうですが、いかがでしょうか。

小金 そうですね、1on1をするのに十分な関係性になっているのか、という話かなと思います。弊社では「週1回・30分の関係性が築けていなければ、毎日5分の関係性から始めてください」みたいな言い方をしますね。

つまり、普段のコミュニケーションの中で「元気?」「その案件やってくれてありがとう」「お疲れさま」みたいな声掛けをすることが関係構築の第一歩になります。

僕は1on1って「関係性のリトマス試験紙」だと思うんです。1on1をすることで、今メンバーとの関係性が良好かどうかが明らかになる。なので、場が固くなっているならば、今はそういう関係性なんだと自覚して、普段のコミュニケーションから見直すことが大切かなと思います。

飯岡 あと結構ありがちなのが、そもそもメンターがガチガチになってしまっているパターンですね(笑)。こういう時って、メンターが「いい1on1にしよう」と頑張りすぎて、メンティにボールを渡せていない状況も結構あると思っていて。

だからもう少しメンティに主役になってもらうとか、一緒に1on1を作り上げるとか、そうした意識も必要かもしれません。

ーーでは最後の悩みです。「忙しくて、1on1の時間をなかなか確保できない…」これから導入する企業さんで特に多そうですが、ヤプリさんはいかがですか?

高橋 これに対しては、2つの考え方があるかなと思います。ひとつは「他でマネジメントの役割が担保できるのであれば、無理に1on1をしなくてもいい」ということ。

今ヤプリでも1on1を浸透させているフェーズですが、極論、マネージャー全員が実施しなくてもいいと思っています。僕はメンバーに生じた変化をキャッチアップするのに、1on1が非常に有効なツールだと思っていますが、もしそれが他の場面で十分できているのなら、1on1という手段に固執する必要はないのかなと。

一方で、1on1って効果を感じられるまでに時間がかかるものだと思うんですね。なので、最初はプライオリティが下がってしまうかもしれませんが、とにかく「成功体験や肌感がつくまでは、継続してみること」が大事だと思います。

実際、半期に1度フィードバックを書くよりも、毎週1on1をしてそのログを貯めておく方が、マネジメントとしてはかなり楽になるんですよね。なので、無理にやるものではないけれど、良いかどうかの判断がつくまでは継続するといいと思います。

ーーなるほど。一方のヤフーさんでは、制度として全社的に1on1をされていると思いますが、どのようにお考えですか?

小金 そうなんですよ。ヤフーでは、1on1は「マネジメントの仕事」であり、人事施策のひとつなんです。

なぜなら、経営から組織改革を進めていく上で、その軸になるのが「1on1」だったんです。1on1単体でみると、部下を成長させるための人財開発の施策に見えますが、そのベースには「組織開発」の仕掛けとして、他の施策と連動しながら実施している、という側面があります。

また「なんで全社で1on1を継続できているんですか?」と聞かれることもよくありますが、答えは「やり続けたから」です(笑)なので高橋さんもお話された通り、まずは効果がわからなくても、継続してやってみることが大事かなと思いますね。(了)

おわりに

いかがでしたでしょうか。本イベントでは、LTとパネルディスカッションの後に「1on1の実演」をライブ配信で実施しました!

ヤフーの小金さん、ヤプリの高橋さん、RELATIONSの飯岡さんに、それぞれメンター役になっていただき、メンティ役を会場の参加者から募る形式です。1on1の実演後には、それぞれの感想や疑問などを伺うインタビューも行いました。

初顔合わせでの1on1実演による学びは、やはり「メンターとメンティの関係性が重要」であること。(今回、無茶振りに応えていただいたメンター・メンティ役の方々、本当にありがとうございました…!)

うまく課題を引き出せない、場が固くなってしまう…という悩みを抱えるメンターの方々は、土台となる「信頼関係」にも目を向けてみてくださいね。

今後も、現場で役立つノウハウを知ることができるイベント「SELECK LIVE!」を、定期的に実施いきたいと思いますので、ぜひご参加ください。

SELECKからの特典

SELECKでは、これまで700社を超える先端企業の「ベストプラクティス」を取り上げてきました。

そこで得た知見を集め、今回、1on1の実践に役立つ情報をまとめた「1on1パーフェクトガイドブック」を作成しました。

実際の1on1ですぐに使える「74の質問集」も付録にありますので、ぜひダウンロードして活用してみてください。

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