【事例7選】人材育成を「成功」させる方法とは? 1on1、コーチング、評価制度まで紹介

※2020年9月更新

自社の競争力を高めるため、多くの企業が重要な経営課題として掲げる人材育成

不確実性の高まるニューノーマル時代において、その課題はますます複雑さを増していると言えます。

当媒体SELECKでは、これまで700社以上の先進企業にインタビューを行ってきました。

その中で、成長企業に共通しているのは、自ら考えて行動し、周囲を巻き込んで成果を出すことのできる「自律型人材」の存在です。

企業を成長させるためには、優秀な人材が育ち、自律的に行動しやすい組織づくりが重要です。

そこで今回は、どうしたら自律型人材を育てることができるか? のヒントを探るため、成長企業が取り組んでいる人材育成のリアルな事例【7選】をお届けします。

自社の「人材育成」を成功に導きたい方、必見です。

目次

  • 人材育成を構成するふたつの枠組み
  • 「思うように人が育たない…」人材育成の課題とは
  • 【施策①】部下と対話する時間を取る(グリー株式会社)
  • 【施策②】コーチング研修を実施する(Sansan株式会社)
  • 【施策③】成長につながる目標設定を行う(株式会社マッチングエージェント)
  • 【施策④】フラットな組織形態で、自律的成長を促す(株式会社ISAO)
  • 【施策⑤】キャリアパスを明示し、可視化する(株式会社フィードフォース)
  • 【施策⑥】キャリアアップできる仕組みを作る(ユナイテッド株式会社)
  • 【施策⑦】マネジメントスタイルを策定する(株式会社エイチーム)
  • 【最新ITツール】「社員の自律的成長」を成功させたい方へ

人材育成を構成するふたつの枠組み

人材育成は、大きくふたつの枠組みで考えられます。

ひとつは、狭義の人材育成であり、「OJT(On the Job Training)」「Off-JT(Off the Job Training)」「自己啓発」といった、いわゆる育成制度です。

一方で、広義の人材育成には、以下のような組織の制度設計が含まれると考えられています。

  • オンボーディング(新入社員の定着・早期戦力化)
  • 人事評価制度(スキルの可視化・キャリア開発)
  • 目標管理制度(適切な目標設定と管理)
  • メンター制度(業務やキャリアに関するメンタリング)
  • ジョブローテーション制度(育成的な配置転換)

狭義と広義のどちらか一方ではなく、両輪の仕組みを上手く構築することが「人材育成」において重要です。

「思うように人が育たない…」人材育成の課題とは

人材育成の重要性を認識し、育成制度を設計・運用している。けれども「思うように人が育たない…」という課題を持つ企業は多いのではないでしょうか。

例えば、よくある人材育成上の課題として、以下のような点が挙げられます。

  • 業務が多忙で、育成にかける時間や余力がない
  • マネージャー層に育成能力や指導意識がない
  • 育成につながる目標管理ができていない
  • メンバーがキャリアパスを描きづらい
  • 人が育つ組織カルチャーがない
  • 育成の仕組みや制度が整っていない

これらの課題は、大きくわけると「広義の人材育成」における組織制度の設計と、「狭義の人材育成」における育成手法の2つの観点で、解決の糸口を見つけることができます。

例えば、「育成につながる目標管理ができていない」という課題に対しては、広義の「目標管理制度の見直し」と、狭義の「成長につながる目標設定とフィードバック」のふたつが、解決策として考えられます。

では、実際に「自律型人材」の育成に成功している企業では、どのような制度運用や施策を行っているのでしょうか?

上記の課題解決のポイントとなる施策別に、6つの事例をご紹介します。

▼今回ご紹介する6社の事例キーワード

1on1 / コーチング / 目標設定 / フラットな組織 / 評価制度 / キャリア開発

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【施策①】部下と対話する時間を取る

「業務が忙しくて育成まで手が回らない…」といった課題を解決するひとつの仕組みが、上司と部下との1対1のミーティングである「1on1」です。

グリー株式会社では、2015年に1on1を導入し、週1回・30分程度のペースで定期的な面談を実施しています。

週1回・30分と聞くと、工数がかかると思われるかもしれませんが、1on1を通じたコミュニケーションを行っておくことで、業務上のハードルを早めに取り除いたり、評価時の擦り合わせをスムーズに行ったりすることができます。

また、同社ではマネージャー向けに「1on1研修」を実施し、メンター側の負担が少なくなるようなフォローを行っています。

▼例えば、「1on1で話すトピック例」をマネージャー研修で共有

参考記事:上司と部下の「信頼関係」がカギ!MBOの運用を1on1で支える、グリーの目標管理とは(グリー株式会社)

【施策②】コーチング研修を実施する

こうした1on1やOJTなどの場面では、制度任せではなく、その質を高めるための手法を同時に学ぶことが大切です。

その手法として、近年注目されているのが「コーチングです。

コーチングとは、「問いかけて聞く」という対話を通して、相手がアイデアや選択肢に気づき、自発的な行動を起こすことを促す手法です。

Sansan株式会社では、コーチングを通じたパフォーマンスの最大化を目的に、個人向けの「コーチャ」、チーム向けの「コーチャチーム」を社内制度化しています。

2015年11月に制度になって以降、150名以上がコーチャを体験し、マネージャー層の育成スキルを高めているそうです。

また同社では、チーム向けの「システム・コーチング」という手法を導入することで、チームが抱える「関係性」の課題などを可視化し、組織の成長を実現しています。

参考記事:目に見えないチームの「関係性」を見える化!組織を成長させるシステム・コーチングとは(Sansan株式会社)

【施策③】成長につながる目標設定を行う

また、組織と個人の成長には、適切な「目標設定」が欠かせません。

株式会社マッチングエージェントでは、「ギリギリ届くか届かないか」という目標を設定することで、メンバーの成長を促しています。

ここでのポイントは、いかにコンフォートゾーンから抜け出して、ストレッチゾーンに入る目標を設定するか、ということです。

また一方では、メンバーがパニックにならないように、上手く導いてあげるのがメンター(上長)の役割だと言います。

また、1on1などで目標の進捗を確認する時には、「なるべく自責で全ての問題を捉えるよう導く」ことを意識しているそうです。

マネージャーが目標を設定するのではなく、本人が「自分の頭で考え、納得すること」を大切にし、成長につながる目標設定を行っています。

参考記事:メンティが「自分で考え、納得する」ことが大切。二人三脚で行う目標達成プロセスとは(株式会社マッチングエージェント)

【施策④】フラットな組織形態で、自律的成長を促す

自律型人材を生み出すためには、「人を育てる」制度のみならず、「人が育つ」組織運営も非常に大切です。

近年注目されている「ティール組織」のように、一切の階層を持たず、メンバー1人ひとりが自律的に動くような組織形態も、少しずつ増えてきています。

株式会社ISAOでは、管理職・役職ゼロの「バリ(=超)フラット」な組織運営をしており、マネージャーが存在しません。

▼階層がなく、プロジェクトが並立している

一般的な組織では、「上司が部下の面倒をみて、育成する責任がある」といった考え方が多いかと思います。

ですが、バリフラットな同社では「メンバー1人ひとりが、自身のキャリアを自ら築き、目標に向かって歩んでいく責務がある」といった考え方をしています。

このマインドセットと、コーチ制度360度フィードバックによって、社員の自律的な成長サイクルが回っています。

参考記事:評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度(株式会社ISAO)

【施策⑤】キャリアパスを明示し、可視化する

さらに、人材育成の成功には「本人のモチベーション」が必須です。

人によりその根源は様々ですが、モチベーションを下げる一因として「キャリアパスが見えづらい」といった課題があると思います。

この課題に対し、株式会社フィードフォースでは、個人の成長をサポートするため、全職種のキャリアパスと給与テーブルを社内に公開しています。

▼実際のキャリアパスの例(カスタマーサクセスの一部)

「誰がどのポジションか」は公開せずに、自分が今どこにいて、何を目指すべきなのか、がわかるようになっているそうです。

これが出来るようになったら、このくらいの給与になる」ということを明確にイメージできることで、自身の目指す方向が定まり、モチベーションを高めています。

参考記事:社員の「市場価値」を上げる!エンジニア半数の組織における、評価・目標管理の全貌(株式会社フィードフォース)

【施策⑥】キャリアアップできる仕組みを作る

また、キャリアパスの公開だけでなく、きちんとキャリアアップすることのできる仕組み作りも重要です。

ユナイテッド株式会社では、自らの挙手制で上位グレードの研修に参加できる「グレードアップ宣言」というユニークな人事制度を導入しています。

このプログラムを通じて、現業の延長線上では身につかないようなスキルや「1段上の視点」を重点的に学べると言います

2018年6月時点で、全社員のうち37%がこの制度を利用し、昇格者数が前年の2倍になったそうです。

会社から平等に研修プログラムを与えるのではなく、自発的に「会社の中核を担いたい」と宣言したメンバーに成長の機会を提供する、ということがポイントですね。

参考記事:自ら手を挙げて「昇格」宣言!自律的な成長を全力サポートする「グレードアップ宣言」(ユナイテッド株式会社)

【施策⑦】理想の「マネジメントスタイル」を策定する

最後に、メンバー成長の鍵を握るのは、一番近くにいるマネージャーです。

株式会社エイチームでは、理想とするマネジメント水準を全社に浸透させるため、10項目からなる「マネジメントスタイル」を策定しています。

▼同社の「エイチームマネジメントスタイル」の主文(一部)

望ましいマネジメントの在り方を言語化することによって、「このマネージャーは何が出来ていて、何が出来ていないか」を、誰もが適切に評価できるようになったといいます。

また、マネジメントスタイルを全社に公開することで、将来マネジメントを担いたいメンバーにとっての「成長の道しるべ」にもなっているとのこと。マネジメントのレベルを上げることが、メンバーの成長にも大きく関わります。

参考記事:「理想の人材育成」を明文化。組織にマネジメントスタイルを根付かせるプロセスとは(株式会社エイチーム)

【最新ITツール】「社員の自律的成長」を成功させたい方へ

いかがでしたでしょうか。他社事例を参考に、自社に合わせた形で「人材育成」の制度設計・運用に生かしていただければと思います。

当媒体SELECKでは、これまで700社以上の取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、目標設定・1on1・フィードバックを通じた人に向き合うマネジメントで、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

進化したマネジメントを体験したい方は、ぜひ、チェックしてみてください。

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