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新卒には、仕事の「起承転結」を任せる。DeNA他3社が語る、新卒育成とマネジメント

新社会人のみなさま、ご入社おめでとうございます!SELECK編集長の山本です。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、無事に入社式を迎えられるのだろうか、と不安に感じていた方も多いのではないでしょうか。また各社、実際に入社式を延期したり、オンラインで実施したりと、様々なご対応をされていることかと存じます。

そんな中、今回は新社会人の方々、新入社員を迎える方々、双方に向けての応援企画として、「新卒社員を育てるマネジメントの手法」について4社に特別インタビューを実施しました。

学生から社会人に移行する、人生の節目。期待と不安でいっぱいの新卒社員をサポートし、いち早く活躍してもらうには、どのようなマネジメントをしたら良いのか。

そんなお悩みのヒントになる、現場の事例が詰まっております!「新社会人の方々に向けたメッセージ」もいただきましたので、ぜひご覧ください。

<目次>

  1. 小さな仕事でも構わない。仕事の「起承転結」を任せる / DeNA社
  2. 事実認識の「自己フィルター」を認知する研修を実施 / アカツキ社
  3. スクラムを導入し、新卒社員をチームで育てる / サイボウズ社
  4. 目標達成ツリーマップで、解像度をあげる / マッチングエージェント社

小さな仕事でも構わない。仕事の「起承転結」を任せる / DeNA社

毎年、60〜80名の新卒社員が入社するという、株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。

同社では、新卒社員の育成に責任を持つ「メンター」が1人ひとりにつきます。そして配属においては、事業内容やチームの状況に加えて、本人とメンターとの相性を特に重視しているといいます。

その一例として、縦軸に「エモーション」と「ロジック」を、横軸に「コツコツ型」と「チャレンジ型」を取り、新卒社員とメンターを4象限にタイプ分けした上で、対偶の象限にいる人同士がペアにならないようにしているそうです。

そんな同社で、新卒採用・育成の責任者を務める中川 泰斗さんにお話を伺いました。

※DeNAの中川さんに、過去取材した記事はこちら

Q1:新卒の育成において、意識していることを教えてください。

まず、新卒育成においては「セキュアベース(安全基地)」の思想を基本とし、心理的安全性と挑戦のバランスを大事にしています。

昨今、心理的安全性の重要性について問われることが多いですが、それだけでは人は成長しないと考えています。一方、心理的安全性がないままに挑戦を促しても長続きしないため、セキュアベースの基礎が必要です。

もうひとつ大切にしているのが「Jカーブの法則」という考え方です。このJカーブとは「成長曲線を描く前の一時的な落ち込み」を表しています。

一度下がった時に本人に対して「できないレッテル」を貼ったり、周囲が育成を諦めたりしてしまうと、負の錯覚資産ができてしまいます。そうなると、本人が再浮上することが非常に難しくなってしまうので、新卒育成では、周囲が粘り強く構えて見守ることが大切だと考えています。

▼Jカーブの法則(図は編集部作成)

Q2:新卒のマネジメントにおいて、工夫していることを教えてください。

ひとつは、仕事の大小は問わずに、ひとつの仕事の「起承転結を任せる」ことです。

というのも、大きな仕事の一端ができたからと言って、小さな仕事のすべてはできないけれど、大は小の相似形なので逆はできるようになると思うんです。起承転結を任せることで、責任が明確化し、自ら考えて行動するので成長につながります。

もうひとつは、「キャパシティを超えた仕事を任せる」ことです。

本人が「できないかもしれない」と思うようなストレッチした仕事を任せて、失敗体験から振り返り、また新たな仕事に挑戦する。この繰り返しでしか、人は育たないと考えています。

Q3:過去、印象に残っている新卒育成のエピソードがあれば、教えてください。

私と同じチームの新卒1年目の社員に、エンジニアのサマーインターンの主担当を任せたことがありました。

採用要件の変更に伴い、根本から刷新するタイミングだったので、入社したばかりの彼女には難易度が高いと思ったのですが、CTOの小林と一緒に、全体設計、集客、選考、当日の運営までを担ってもらいました。

時々、彼女自身が「無理かな」と思ってしまうようなことに対しても、短時間で高いクオリティをアウトプットするCTOの「背中を見る」経験を通じて、自分が限界だと思っていたことは実はそうではない、ということを体感できたと思います。

この経験から、入社後早いタイミングで、圧倒的にできるメンバーと一緒に仕事をする経験を積ませることは、大切なことだと感じましたね。

Q4:最後に、新社会人の方々に向けて、メッセージをお願いします!

一度は自分で決めた選択肢なので、最初は選り好みせずにやってみると良いと思います。その際に、自分の仕事に対して、何かしらの面白さを見出すことを意識してみてください。

「どんな仕事にも学びはある」というのは正しいと思うのですが、「やるべき」と苦しんでこなす状態では長続きしません。そうではなく、「あれ? これってこういう工夫をしたら面白くない?」みたいな考え方をしていけると、だんだんと仕事が楽しくなり、クオリティも上がっていくと思います。ぜひ、決めた選択肢を正解にしてください!

事実認識の「自己フィルター」を認知する研修を実施 / アカツキ社

毎年、20〜30名ほどの新卒社員が入社している、株式会社アカツキ。

同社でも、職種を問わずトレーナー制を採用しており、新卒社員1名に対して、先輩社員1名がトレーナーとして向き合っています。

そのうち企画職については、隔週トレーナー全員が集まる定例会議を実施しており、会議の中で新卒1人ひとりについて状況把握を行いながら、今後の育成方針に関して検討を行っているそうです。

そんな同社で新卒育成を担当する、人事の小原 彩さんにお話を伺いました。

※アカツキの小原さんに、過去取材した記事はこちら

Q1:新卒の育成において、意識していることを教えてください。

社会に出たばかりの新卒であっても、 経験学習モデルを回しながら「自走と内省」ができる人として接しています。育成側も「育てる」のではなく、「育ちたいと思う人を支える」というスタンスです。

そのため、新卒社員が壁にぶつかった場合でも、答えや解決法を教えるのではなく「問い」を渡して、そこから自分で考え、気づき、行動できるように促すことを意識しています。

▼経験学習モデル(同社提供の図をもとに編集部作成)

Q2:新卒のマネジメントにおいて、工夫していることを教えてください。

経験学習モデルを基本に、内省を深めることを目的として、昨年度から新卒向けの「メンタルモデル研修」を実施しています。

メンタルモデルとは、自身が事実を認識するときのフィルターのことを意味します。これを把握する機会を作ることで、自らの思考やコミュニケーションの癖について自覚してもらうような内容です。

この研修を通じて、それまで「自分の否定」のように感じられたフィードバックが、自分のメンタルモデルが起因していると自覚できるようになり、「自分の能力向上のため」だと適切に受け入れられるようになったと話す新卒メンバーもいますね。

※メンタルモデル研修の詳細は、小原さんのnoteをご覧ください。

Q3:過去、印象に残っている新卒育成のエピソードがあれば、教えてください。

アカツキでは、新卒から広く裁量を持ち、挑戦してもらうことを大切にしているのですが、そこに惹かれて入社してくれたメンバーがいました。

配属早々からイベント設計を任せたのですが、初めてだらけの中で、これまでの人生で感じたことのない無力感に苛まれていたと話していました。ですが苦しみながらも、チームの先輩達に支えられて業務をやり遂げ、2年を経た今ではプロジェクトリーダーになっています。

「挑戦するプロセスを通して、人は成長する」ということを信じて、挑戦の機会を先に作ることが大切だと認識した出来事でした。

Q4:最後に、新社会人の方々に向けて、メッセージをお願いします!

新社会人のみなさん、ご入社おめでとうございます!これまでの自分の枠をどんどん飛び越えて、無限の可能性に挑戦していってください!

スクラムを導入し、新卒社員をチームで育てる / サイボウズ社

毎年、30〜35名の新卒社員が入社しているという、サイボウズ株式会社。

同社では、職種問わず、新卒が一同に会する全体研修を1ヶ月ほど実施した後、各本部に配属されるそうです。配属後は、各チームでOJTをしながら独り立ちを目指すことになります。

また、マネージャーとの1on1を定期的に実施しているチームが多いそうですが、その運営は各チームに任されているといいます。

そんな同社で、新卒採用を担当する庭屋 一浩さんに、お話を伺いました。

※サイボウズの庭屋さんに、過去取材した記事はこちら

Q1:新卒の育成において、意識していることを教えてください。

「何をしたいのか」という、本人の意思を引き出すようにしています。自らが選択、決断を重ねることによって成長すると考えているので、そのサポートをするという姿勢を意識しています。

Q2:新卒のマネジメントにおいて、工夫していることを教えてください。

私のチームでは、「スクラム開発」をベースにしたチーム運営を行うことで、特定のマネージャーだけでなく、チーム全員で新卒社員をサポートできる体制を作っています。(※詳細はこちら

スクラムにして、チーム単位でタスクを消化することで、新卒社員やそのマネージャーが業務を抱えこまないようにしていますね。

▼実際に、庭屋さんのチームで使っている「カンバン」

Q3:過去、印象に残っている新卒育成のエピソードがあれば、教えてください。

本人の責任感の強さによる「仕事をやりきりたい」という想いと、マネージャーとしてチームの価値を最大化したいがために「停滞するくらいなら、早く相談してほしい」という想いが、うまく噛み合わないことがありました。

特別なきっかけがあったわけではありませんが、1on1やチームのタスク計画の場でお互いの考えを伝え、相互理解を心がけることで、徐々に解消していきました。何事にも、銀の弾丸はないと感じています。

Q4:最後に、新社会人の方々に向けて、メッセージをお願いします!

新社会人おめでとうございます!これからの人生では、新たな人や物事との出会いが、沢山あると思います。

そうした出会いによって、今の自分からは想像できないキャリアを歩むかもしれません。そんな予測のできない未来を楽しみに、社会人生活をスタートしていただければ幸いです。

目標達成ツリーマップで、解像度をあげる / マッチングエージェント社

サイバーエージェントグループの子会社で、マッチングアプリの「タップル誕生」を運営する、株式会社マッチングエージェント。

新卒採用は、親会社である株式会社サイバーエージェントが一括して行い、毎年4月に、ビジネス職・技術職合わせて5〜7名程度の新入社員が配属されています。

同社では、新卒社員1人ひとりに対し、育成を担う先輩社員1名と、メンターを担う他部署の先輩社員1名がつくそうです。メンターは、コンディションの確認や悩み相談を受けるような役割を担っています。

また、事業部横断で新卒の育成状況などを共有し、何かあれば多方面からサポートできる体制を作っているといいます。

そんな同社で、メンター経験を持つ島谷 宙伸さんに、お話を伺いました。

※マッチングエージェントの島谷さんに、過去取材した記事はこちら

Q1:新卒の育成において、意識していることを教えてください。

なるべく適切なタイミングで、適切なフィードバックを与えられるように意識しています。何らかのアクションを起こした時に、それが良かったのか悪かったのかを学ぶためには、フィードバックが必要です。

なるべく多様なフィードバックを受け取り、次のアクションに活かすにはどうしたら良いのかを本人に考えてもらうことが大事だと思っています。

Q2:新卒のマネジメントにおいて、工夫していることを教えてください。

目標設定では、達成してほしいポイントをなるべく1つにフォーカスし、取り組むべきことを明確にするように気をつけています。

まだ環境に慣れていない新卒メンバーの場合、何をどう頑張れば良いのかわからないといったケースも多くあります。適切に取り組むべきポイントを絞るサポートをして、自ら具体的な行動を考えてもらうことで、本人が集中して頑張れるのではないかなと思います。

Q3:過去、印象に残っている新卒育成のエピソードがあれば、教えてください。

新卒社員との目標設定時に、「目標達成のためのツリーマップ」を作ってもらったことがありました。(※詳細はこちら

このツリーマップは、目標を中心に据えて、達成すべき条件を具体的なアクションに落とし込むまで分解していくというものです。この時は、本人がうまくマップを活用してすごいスピードで成長してくれたのですが、本人が結構マメでないと、ここまでやるのは難しいかもしれません(笑)。

人それぞれで向き合い方も変わってくるので、マネジメントって難しいなぁと思った経験でした。

▼実際に、島谷さんがメンターをした際の、新卒社員が作成したツリーマップ

Q4:最後に、新社会人の方々に向けて、メッセージをお願いします!

行動し、そこから何かを学び続ければ、必ず成長していけると思います。マネージャーは機会を作ることはできますが、実際に行動を起こす・起こさないは、皆さんの意思にかかっています。頑張ってください!

おわりに

いかがでしたでしょうか? 新卒育成を担っているメンターの方々、各社の事例をご参考に、ぜひ新入社員の方々が活躍できるよう根気強くサポートをしていただけたらと思います。

また、新社会人のみなさま、改めましてご入社おめでとうございます!不慣れな環境で不安も大きいとは思いますが、ぜひ自らの意思をもって行動し、これからの社会人生活を楽しみながら歩んでくださいね。

SELECKでは、仕事の参考になる事例を発信していますので、なにか迷った際にはご参考にしてみてください。

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