【事例4選】マーケティングを超える「コミュニティ」の価値とは? 最新トレンドを紹介
マーケティング手法として、広く認知されるようになってから久しい「コミュニティマーケティング」。
国内でもtoB・toCサービスを問わず、オフラインからWebまでいくつもの成功事例が出てきており、もはや目新しい手法ではなくなってきました。
ですが近年では、従来のコミュニティを発展させて、マーケティング以外の目的でコミュニティを活用している企業も少なくありません。
そこで今回は、コミュニティマーケティングが注目されてきた背景やその未来、そして国内外の先進企業のコミュニティ事例【4選】をお届けしたいと思います。
<目次>
- コミュニティマーケティングとは
- なぜコミュニティマーケティングが注目されてきたのか
- 変化をみせる、コミュニティマーケティングの在り方
- 【事例①】ユーザーヒアリングのためのコミュニティ活用
- 【事例②】サービス開発のためのコミュニティ活用
- 【事例③】ユーザー間での課題解決のためのコミュニティ活用
コミュニティマーケティングとは
まず、コミュニティという単語から、みなさんが思い浮かべるのはどのような意味でしょうか。
① 人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団。地域社会。共同体。
② 転じて、インターネット上で、共通の関心をもちメッセージのやりとりを行う人々の集まり。
上記、大辞林の定義によると、「人々の集まり=コミュニティ」と捉えることができます。
では、マーケティングにおけるコミュニティとは、どのような性質を持つのでしょうか?
一般的には、「商品やブランド」に対して共通の関心を持つ人々を結びつけることで、より顧客のロイヤリティを高め、ファンとして愛好してもらうことを目的として運営されています。
つまり、コミュニティは「顧客のLTVを最大化すること」を目的としたマーケティング手法のひとつですが、実はマーケティングの文脈だけでなく、PRやCS、商品開発など、様々な面で価値を発揮します。
株式会社ディー・エヌ・エーが運営する、個人間カーシェアサービス「Anyca(エニカ)」では、以下のような形でコミュニティの価値を整理しています。
参考記事:コミュニティの価値は「掛け算」で生まれる。2億円分のPR効果を生んだマーケ施策とは
例えば、ユーザー間の知識シェアによって「カスタマーサポート」の価値を発揮したり、経験談のシェアによって「ブランディング」の価値を生んだりします。
さらに最近では、ユーザーとの関係性を深め、運営側とユーザー側の「共創」によってサービス開発するケースも増えつつあります。
なぜコミュニティマーケティングが注目されてきたのか
そもそも、なぜコミュニティマーケティングが注目されてきたのでしょうか。
その背景として、大きく2つの事象が考えられます。1つめは「ライフスタイルの多様化」です。
以前であれば、TVCMなどのマスマーケティングに注力すれば、商材の認知を獲得することができました。
しかし、消費者の嗜好の分散化が進む現代においては、マーケティングファネルの出発点となる「認知層・興味関心層」の絶対数自体が減少しています。
その結果、各商材に対する潜在的な顧客が少なくなり、認知の獲得が困難になってきているのです。
加えて、SNSの普及により、企業が主導するマーケティングの信用度が低下する一方で、他のユーザーが発信する口コミが、購買やサービス利用の意思決定に影響する度合いを増しています。
2つめは、「人間的な触れ合いや、つながりの重要性」が高まっていることです。
インターネットやスマートフォンによって常時社会と接続することのできる現代では、オンライン上でコミュニケーションが完結することも珍しくありません。
そうした社会においては、オフラインでの経験や接点は、むしろ希少性が高まってきていると言えます。
このような流れから、コミュニティの運営は、有用なマーケティング手法として多くの企業で取り組まれてきました。
変化をみせる、コミュニティマーケティングの在り方
さらに近年では、コミュニティの在り方が、さらに進化しつつあります。
従来は、企業がファンをつなぎとめるための場としてコミュニティを活用していましたが、近年ではその目的を発展させ、ユーザーとより深い関係性を構築するようなコミュニティの事例が増えてきています。
ではここから、SELECKで過去取り上げた先進的なコミュニティ事例を、実際に見ていくことにしましょう。
<今回ご紹介しているコミュニティ>
Mirrativ(ミラティブ) / mineo(マイネオ)/ Salesforce(セールスフォース)/ Backlog(バックログ)
【事例①】ユーザーヒアリングのためのコミュニティ活用
2015年8月にリリースし、スマホ1台でゲーム実況ができる手軽さから、爆発的にユーザー数を伸ばしている「Mirrativ(ミラティブ)」。
同サービスでは、「ユーザーの方々に意見や要望をお伺いする場」として、コミュニティを活用しています。
実際のインタビューでは各回10名前後にご参加いただき、「ミラティブで起きた嫌なこと」「ミラティブに変えてほしいこと」など、ネガティブな体験や改善要望を必ず聞くようにしています。
オフ会ではネガティブな話が出てきづらいのですが、グループインタビューでは運営からの質問をベースにユーザーさん同士での共感が生まれるので、より本音の部分を引き出すことが可能です。
「オフ会」「グループインタビュー」「1on1インタビュー」の3つのチャネルを活用し、それぞれの特性に合わせた形で、ヒアリングを実施していると言います。
さらに、実装された機能を「運営だより」の形でユーザーさんに共有することで、ユーザーから得られたフィードバックをどのように改善につなげたか、を明らかにしています。
▼ミラティブの「運営だより」(2019年2月号の一部)
【事例②】サービス開発のためのコミュニティ活用
格安スマホのMVNOサービス「mineo(マイネオ)」では、「マイネ王」というコミュニティサイトを中心として、非常に活発なユーザーコミュニティを運営しています。
同サービスの特性上、競合他社が「価格の安さ」などの「機能的価値」を訴求していたのに対して、「情緒的価値」で差別化を図るため、2015年1月にコミュニティ運営を開始しました。
mineoの場合は、「Fun with Fans!」 というブランドステートメントを定めています。
この「with」には、同志や家族、友達といった関係性でありたい、という私たちの意思が込められているんです。
この関係性が定まると、コミュニティの方針や施策も、おのずと決まってきて。ユーザーさんを「同志」と捉えているので、コミュニティの方針として「共創」を掲げています。
このブランドステートメントにおいて、ユーザーとの関係性を「同志」と定めるmineoでは、アプリの新機能開発やTVCMの制作など、様々な場面でユーザーとの共創に取り組んでいます。
▼ユーザーと一緒に制作したTVCM「マイネオのリアル篇1」
【事例③】ユーザー間での課題解決のためのコミュニティ活用
さらに、世界最大シェアを誇る顧客管理ソフトウェア「Salesforce」でも、ユーザーコミュニティを運営しています。
このユーザーコミュニティは、以下の3つの機能を持っていますが、BtoBサービスという特性上、特に活発なのがユーザー同士の課題解決です。
- 質問の投稿や、ノウハウの共有
- テーマ別のコミュニティへの参加
- ミートアップの作成、開催
専用のフィード上で、Salesforceのプロダクトを利用する際に生じた疑問や、業務上の課題などを投稿することで、ユーザー同士での課題解決が行われています。
▼SalesforceコミュニティのQAページ
参考記事:【海外事例3選】MAU2億人超えのSpotifyに学ぶ!「ユーザーコミュニティ」の作り方
また国内でも、同様の目的をもったコミュニティの発展を目指しているサービスがあります。
そのひとつが、「JBUG(Japan Backlog User Group)」というユーザーコミュニティを運営する、プロジェクト管理ツールの「Backlog(バックログ)」です。
今は40〜50代の参加者が多いのですが、より若い人にも参加してもらえるコミュニティにしていきたいなと思います。そして、そのためには、オンラインのコミュニティを充実させていく必要があると考えています。
というのも、20代の人って、分からないことがあれば、わざわざイベントに行かなくても、「オンラインですぐに解決できればいいじゃん」という感覚の強い世代なのかなと思っていて。
なので、オフラインのイベントだけではなく、オンラインでBacklogの使い方を詳しく教えてくれるユーザーさんがいて、質問ができるという環境を作っていきたいですね。
国内外の先進的なコミュニティ事例、いかがでしたでしょうか?
コミュニティには様々な価値があるので、自社のサービスに合わせた運営のご参考にしていただければと思います。