• 株式会社BAKE
  • オンライン事業部 ECチーム マネージャー
  • 正木 友佳

株式会社BAKEの、User InsightとOptimizelyを活用したECサイト改善の裏側とは

〜お菓子のスタートアップが、自社のECサイト改善に「User Insight」と「Optimizely」を活用することで、商品の売り上げを4倍にし、工数削減に繋げた事例〜

国内14店鋪・海外16店鋪を構える、行列の絶えない焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」を運営する株式会社BAKE(以下 BAKE)。創業4年のお菓子のスタートアップである同社は、実店舗を3ブランド、オンラインビジネスとして2ブランドを展開。

本社オフィスに在籍する社員は様々なバックグランドを持ち、社内にはIT系企業での経験を持つ経営陣やエンジニア、さらに、業界内ではめずらしくインハウスデザイナーも10名以上在籍している環境だという。

同社のオンライン主力事業として、お気に入りの写真を使った写真ケーキが作れるECサイト「ピクトケーキ」を運営している。だがピクトケーキも以前は、Google アナリティクスすらほとんど活用できず、データを元にしたサイト改善ができていなかったという。

その状況を打破するため、サイトリニューアルに伴いヒートマップ(※)対応アクセス解析ツール「User Insight(ユーザーインサイト)」と、A/Bテストツール「Optimizely(オプティマイズリー)」を導入。効率的なサイト改善を実現させ、パーティー用の特大ケーキの売り上げを4倍にし、エンジニアの工数削減にも成功した。

※サイト内でのユーザーの行動を色で可視化したもの

今回は、ECサイト改善の仕組みを構築した正木 友佳さんに、「User Insight」と「Optimizely」の活用方法から、その効果まで詳しく伺った。

お菓子のECサイトに、IT企業の改善ノウハウを導入!

以前はIT企業でアプリのディレクションをしていたのですが、もっとリアルなものを扱いたいと思っていたところでBAKEに出会いまして。お菓子屋さんなのにテクノロジーに寄っているところが面白いなと思い、入社しました。

入社後は、「ピクトケーキ」のECサイトの運営を担当しています。ピクトケーキはお気に入りの写真を使って簡単に写真ケーキが作れ、全国配送できるサービスで、ウェブとアプリから注文できます。

▼お気に入りの写真を使い、写真ケーキが作れる「ピクトケーキ」


私が入社した2016年3月は、ちょうどピクトケーキのリニューアル作業をしているタイミングでした。リニューアル目的はいくつかありましたが、ひとつは効率よくPDCAサイクルを回すための仕組みを作ることです。

当時、Googleアナリティクスは入っていたものの、とりあえず入れているだけの状況で、欲しい数値を収集する仕組みができていませんでした。

そこで、私がピクトケーキのディレクターとして入り、ユーザーの行動を分析するためにヒートマップ対応アクセス解析ツール「User Insight(ユーザーインサイト)」と、A/Bテストツール「Optimizely(オプティマイズリー)」を導入したんです。

User InsightとOptimizelyで、素早く仮説検証できる仕組みを構築

User InsightとOptimizelyを組み合わせたPDCAのサイクルは、大きく5つのステップに分かれています。

  1. Googleアナリティクスで数値を確認
  2. User Insight上でユーザー行動を分析
  3. 仮説立案
  4. Optimizelyによる施策の実行・効果検証
  5. 有効な施策の本実装

まずはGoogleアナリティクスを見て、「このページでの離脱が大きい」「デザインを追加したけど、思ったようにクリックされていない」という課題を見つけます。さらにUser Insightのヒートマップを見ることで、実際にユーザーがどういった行動をしているのかを分析して、仮説を立てます。

その仮説を元に効果が期待できる施策を仮実装し、Optimizelyでテストしていきます。この段階では、デザインは作り込まずに簡単なものにします。

そして、施策が有効であることを確かめてから、デザインも作り込んで本格的に実装しています。

タップした箇所がわかるヒートマップで、サイトの不具合も発見!

User Insightのメリットは、Googleアナリティクスではわからないような、ユーザーのサイト内でのあらゆる動きがヒートマップで可視化される点です。Googleアナリティクスでもボタンがタップされたことはわかりますが、User Insightならボタンやリンクに限らず、画面のどこをタップしているかも知ることができるんです。

ピクトケーキは広告からランディングさせているページを1枚用意しているのですが、そのページからのコンバージョン率が非常に低いという問題がありました。そこでヒートマップを確認してみたのですが、実はユーザーはそのページにある「誕生日やイベント、記念日のサプライズに。」と書かれたページ内リンクを何度もタップしていました。これはおかしいなと思って調べてみると、なんとリンクがつながっていなかったんです。

ピクトケーキの購入を迷っている人たちに、「こういうシーンで使えますよ」という提案をすることにより、購入後の姿をイメージしてもらい、購入を後押しするためのコンテンツだったのですが、逆にユーザーの離脱ポイントになっていたようです。

▼ヒートマップで、タップされている箇所がすぐにわかる


慌てて改善しましたが、ヒートマップのおかげで早急に気づくことができました。

1人ひとりの足あとを追い、パーティーサイズの売り上げを4倍に!

また、User Insightを使うと、ユーザー1人ひとりの足あとを追うことも簡単にできるんです。

2016年8月に、パーティーサイズという50〜70名用のケーキをリリースしたのですが、当初はあまりご購入いただけませんでした。ピクトケーキの本体サイトとは別のページで作ってしまったことで流入が少なかったことも原因でしたが、より詳しい原因をUser Insightで分析してみたんです。

▼パーティーサイズの販売サイト


パーティーサイズを買ってくださった人の行動を1人ひとり見ていくと、そのサイトとピクトケーキの本体サイトをずっと行き来していることがわかりました。

▼足あと機能で、コンバージョンした1人ひとりの行動をたどることが可能


どうやらパーティーサイズと、ピクトケーキの中で一番大きい「ダブルサイズ」ケーキの、どちらが良いかを見比べていたみたいなんです。

そこで、パーティーサイズとダブルサイズのページにバナーを置いて、2つのページを行き来して比較しやすくしました。すると、パーティーサイズの売り上げが4倍になったんです。

このように、User Insightでユーザーの行動が細かく分析できるようになったことで、次のアクションにつながる仮説が立てられるようになりました。

Optimizelyで、非エンジニアでもスピーディーな効果検証が可能に

そして、Optimizelyで施策の効果検証をするようになり、スピーディーなサイト改善ができるようになりました。

▼Optimizelyで施策ごとの効果を分析


これまでは、試したい施策が生まれたら、最初にデザインをかっちりと決めた上で、エンジニアに実装をお願いしていました。ですがピクトケーキのエンジニアは、会社全体のシステム改善業務にも携わっていているため、すぐに実装してもらえない場合もあります。

Optimizelyでは、エンジニアの手を借りずに、自分たちで簡単に効果が検証できます。おかげでスピーディーに検証できるようになり、効果的な施策だけをデザイナーやエンジニアに実装してもらうことで工数削減にもつながりました。

「友人にオススメしたいですか?」。NPSで購入後の満足度も測定

また、施策単体の効果測定だけではなく、コンバージョンしたユーザーの満足度も測定しています。これには「NPS調査(※)」を活用しています。

※ネット・プロモーター・スコア:顧客が自社ブランドにどれだけ愛着をもっているのかを11段階のアンケートで調査する手法

ケーキを買ってくださった方に、商品到着から2日後にアンケートのお願いメールを送ります。そのアンケートで「友人にオススメしたいですか?」という質問をして、0から10の11段階で答えてもらうようにしています。

NPSスコアの変動を見ると、実施した施策への満足度が計測できます。例えば以前、「チョコプレート」という、オリジナルのメッセージをパティシエに書いてもらえるサービスを無料で用意していたんです。でも、このサービスには製造の工数が結構かかっていて。さらに、クオリティーもパティシエさんによって左右されるので、お客様にご満足いただけないこともあったんです。

そこで、一度チョコプレートのサービスを停止してみたところ、NPSがガクンと落ちちゃったんですよね。その数字を見てこれは大変だということになって、自分で書いてもらう形式のチョコプレートを新たに導入することにしたんです。

その結果、NPSが5%改善しました。元々チョコプレートのサービス停止以外でのNPSの変動はほぼなかったので、少しでも改善されたことでホッとしました。

このようなコンバージョン後の満足度は、GoogleアナリティクスやUser Insightではわからないので、MAUやコンバージョン率と同じようにKPIとして追うようにしています。

データドリブンなチームで、ワクワクするお菓子を届けていきたい

もともと私たちのチームにはデジタルに強い人があまりいなくて、カスタマーサポートや、紙媒体のデザインがバックグラウンドの人が多数でした。そのため数字を元に戦略的にPDCAを回すという認識が弱かったのですが、今回のリニューアルに伴って、数字を見て改善する意識改革をすることができました。

週次会議でKPIを確認するようになり、今では全員がGoogleアナリティクスも見るようになっています。

施策の話をする時も、メンバーは「こういう感じでやりたいです」と提案をくれるのですが、私からも「その施策でどの数字を上げたいの?」と確認することで、少しずつデータドリブンなチームにしていくことができています。

アプリへの流入を増やすなど、まだまだやるべきことはたくさんありますが、今後も「お菓子を進化させる」というミッションのもと、ユーザーの行動やフィードバックをうけて、たくさんの方にワクワクしてもらえるようなお菓子を届けていきたいですね。(了)

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