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  • 吉井 萌里

EX向上の鍵を握る「マネージャー体験」とは? MXを下げる要因と改善のポイントを解説

昨今、「従業員体験Employee Experience(※)」が注目を集めています。経営層やマネージャーがその責任を担い、改善に取り組んでいる企業も多いと思います。

※従業員体験について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参考ください。

その一方で、「マネージャー自身の体験」はどうでしょうか。

従業員のエンゲージメントの70%は、マネージャーとの関係性によって左右されるというデータがあるように、従業員体験の向上には、マネージャーとの関係性が大きく影響を及ぼします。

そのため、マネージャー自身の体験を向上させることが、組織のパフォーマンスを高める上でも重要です。

そこで提唱されている考え方が「マネージャー体験(Manager Experience)」です。これは「従業員体験」の範囲をマネージャーに絞ったもの、といえます。

今回の記事では、2014年から約5年間にわたって5万人のマネージャーを対象に調査を行った米Gallup社のレポートをもとに、マネージャー体験に悪影響を与えている5つの要因と、その改善に役立つ3社の事例をご紹介します。

マネージャー体験を下げる「5つの要因」

そもそも「マネージャー体験」を下げている要因には何があるのでしょうか。Gallup社では、下記の5つをその要因として挙げています。

  1. 期待値が明確でない
  2. 仕事量が膨大
  3. 責任とプレッシャーが重い
  4. 強みを活かせない
  5. 評価への納得度が低い

では、5つの要因についてそれぞれ詳しく解説していきます。

※以下、数値で示されたデータに関しては、Gallup社の以下のレポートから参照しています。

参考:The Manager Experience – Gallup

① 期待値が明確でない

ひとつめは「期待値が明確でない」ことです。

マネージャーは様々なステークホルダーに囲まれながら、管理職と現場の「二足のわらじ」を履いて日々の業務をこなしています。

そうした環境では、「何を期待されていて、何を優先すべきなのか」を、マネージャー自身が見失いがちになってしまいます。

そこで大切なのは、会社の方針に照らし合わせながら「何を優先して欲しいのか」「どうなって欲しいのか」、さらに「それらを達成すると組織にどのようなインパクトがもたらされるのか」を明確に示すことです。

そうすることで、マネージャーは自らの行動を客観的に振り返り、業務の優先順位づけができるようになります。

②仕事量が膨大

2つ目は「仕事量の膨大さ」です。

近年、若者の価値観の変化により、部下は仕事の意義づけやキャリアなど、様々な悩みを抱えるようになりました。

すると、「チームの成果」にフォーカスされていたマネジメントが、「部下のやる気・成長を引き出す」役割も求められるように変化しています。

加えて、職場のダイバーシティの向上やハラスメント問題なども影響し、業務以外にも気を配らなければならないことが増した結果、自身の業務に集中することを妨げられている、と感じているマネージャーが増えているのが現状です。

こうした状況では、マネージャー自身の業務を遂行することはもちろんのこと、チームの成功を導くためのアクションも取りづらい環境になっています。

プレイングマネージャーがチームの生産性をあげる方法として、たとえば米LinkedInでは、以下の「4象限」によるタスク管理の手法を取り入れているといいます。

  1. Strategic Initiative
  2. Home Runs
  3. Housekeeping
  4. Shouldn’t be doing

日々のタスクに追われているマネージャーは、参考にしてみてはいかがでしょうか。

▶︎記事はこちら:目の前の仕事を「4象限」に分けよ!LinkedInが開発した、マネージャーの生産性UP術

③責任とプレッシャーが重い

3つ目は「責任とプレッシャーが重い」ことです。

マネージャーは責任を負う機会が多く、精神的な負荷がかかる役割です。ここ数年、「働き方改革」が推進されてきたものの、働き方が変わらないまま残業時間の上限が設けられた結果、そのしわ寄せがマネージャーに及んでいます。

パーソル総研が2019年に全国の企業で管理職として働く2,000人に実施した調査では、約3割の管理職が前年と比べて「働き方改革が(職場で)進んでいる」と回答する一方、46.3%は「組織の業務量が増大した」と回答したといいます。

こうした状況下では、同じような境遇のマネージャー同士で悩みを共有し合う時間を確保することが難しく、精神的なケアが不足してしまいがちです。

そこで、マネージャー同士が学びあい、支え合うための対話の機会をつくることもおすすめです。ノウハウを交換することで、マネジメントスキルを向上させるだけでなく、悩みの解消によるストレス軽減の効果も期待できます。

④強みを活かせない環境

4つ目は「強みを活かせない環境」です。

現在のマネージャー職の人は、勤続年数の長さや、パフォーマンスを発揮したからという理由で抜擢されている人が多いのではないでしょうか。

しかし、マネージャーにはメンバーの頃とは異なるスキルが求められるため、「マネージャーとしての自分の強みはなにか」に気づけないまま業務をこなしている場合もあると思います。そうした環境下では、マネージャー自身のエンゲージメント低下にもつながりかねません。

そこで、経営層は「マネージャーとして行ってほしいこと」をリスト化し、マネージャー自身は「自分ができること」をリスト化して両者をすり合わせ、マネジメント業務の中でどう強みを活かせるか? を見出してあげると良いでしょう。

また、強みを把握しづらいのであれば、同僚たちから「普段マネージャーとしてどんな強みを発揮しているか」のフィードバックをもらうことも有効だと考えられます。

⑤評価への納得度が低い

そして、5つ目は「評価への納得度が低い」ことです。「自分が受け取っている評価は、自身の成長に寄与していると思う」という問いに対し、マネージャーのわずか8%しか「はい」と答えていない、というデータがあります。

「部下の育成」などは、定量的なメトリクスとして可視化されづらいため、マネジメントの実態に合った評価がされていないことが納得度が低い原因かもしれません。

そこで、個人目標の進捗だけではなく、チームにどれだけ貢献したか、お客様のエンゲージメント向上にどれだけ寄与したか、ということも含めて査定を行うことをおすすめします。

また、経営層やリーダーは、マネージャーと言葉を交わす機会を定期的に設けると良いでしょう。この際、目標の進捗などについて話すことが目的であり、給与を決めるための場ではないという共通認識を持つことが重要です。

さらに「理想のマネジメントスタイル」を言語化し、「何をしたらマネージャーとしての評価を上げることができるのか」を明確にしておくことも有効な手段のひとつだと考えられます。

では次に、マネージャー体験を改善するためのヒントとなる、3社の事例をご紹介します。

【事例①】目指すべきマネジメント基準を明文化する / エイチーム社

株式会社エイチームでは、マネジメントの属人化の防止や、マネジメントスキルの向上を目的に、「エイチームマネジメントスタイル」を策定したといいます。

これは、「はじめに+10の主文・副文・行動例+おわりに」という構成から成る、マネージャーのための行動指針です。

「はじめに」では、マネージャーの役割として「エイチームの経営者の一人であり、エイチームを深く理解し経営理念を体現していく存在である」といった内容を3つ明記して、「おわりに」では、マネージャーとしての心構えを添えているそうです。

▼エイチームマネジメントスタイルの主文(一部)

また、組織のマネジメント課題を見える化し、定点観測する仕組みとして、半期ごとに3つの定量・定性調査を行っているといいます。

ひとつ目はエンゲージメントスコアを測る「モチベーション診断」、ふたつ目はマネジメントスタイルの項目に沿った「マネジメントサーベイ」、そして部下から上司に対する満足度やコメントを報告する「上司コメント」です。

結果、高い水準で人材を育成できるようになり、「望ましいマネジメントができているかどうか」を、誰もが客観的に判断できるようになったといいます。

▶︎記事はこちら:「理想の人材育成」を明文化。組織にマネジメントスタイルを根付かせるプロセスとは

【事例②】独自のサーベイでマネジメントの課題を可視化 / ナイル社

ナイル株式会社では、2018年にマネジメントの状態を可視化するための独自サーベイを導入し、目標の設定やレポートラインの明確化など、マネージャーとしてすべき仕事ができているかどうかを調査したといいます。

そのサーベイは、なるべく主観ではなく事実として確認できるような4段階評価の質問を用意し、実名性で回答してもらっているそうです。

例えば、「あなたの会社はミッションを実現するために努力していると思いますか」という設問ではなく、「あなたのチームでは1on1を定期的にしていますか」といった聞き方にしているとのこと。

ここで注意すべき点は、事業の状況によってもチームのムードが左右されるので「点数が低い=悪いマネジメント」ではないということです。また、マネージャー自身やチームの課題・伸びしろを認識するためのサーベイであるため、評価とは切り離すのがポイントだといいます。

▼実際のマネージャー別・集計表(一部抜粋)

結果、人事がマネージャーに対する個別のフィードバックや、サポートの必要なメンバーへのフォローなどを行い、課題解決に必要なアクションを素早く実行できているそうです。

▶︎記事はこちら:「マネジメントの実態」をどう可視化する? リアルな組織課題を発見し、解決する方法

【事例③】マネージャー研修を実施し、能力を向上する / ベーシック社

株式会社ベーシックでは、かつてマネジメント経験のある人が少なく、人材育成の方向性が組織全体として不明瞭だったという背景から、2019年1月に「期待役割グレード制度」を導入したといいます。

12段階の等級から成る「期待役割グレード制度」は、「仕事の難易度」「裁量度」「対人関係スキル」「組織影響度」という4つの項目にそれぞれ点数をつけ、その合算値で決まる仕組みです。

▼同社の期待役割グレード

とはいえ、制度以上に目標の描き方や、人材開発会議や査定会議といった運用の在り方、それを実行するマネジメントのケイパビリティを磨くことが大切だといいます。

そこで同社では、マネージャー自身の目標設定やフィードバックの質を上げていく取り組みに注力しています。

たとえば、マネージャー以上が各メンバーの目標を持ち寄って、全員分の目標の妥当性を確認する場を設けたり、査定フィードバックの質を高めることを目的に、マネージャー同士のロープレ研修なども実施しているそうです。

こうした取り組みの結果、2019年3月から実施している社員アンケートでは、組織のコンピテンシーすべてにおいて、右肩上がりで改善しているといいます。

▶︎記事はこちら:人事評価制度は「運用」が鍵。マネジメントの質を高め、全社で人を育てる組織の運営法

以上、「マネージャー体験」改善のためのポイントなどをお伝えいたしましたが、いかがでしたでしょうか。

実際に、現状のマネジメントを可視化し、改善することは容易なことはでありません。「マネージャー体験」を改善するためには、まずは経営層側がマネージャーを支える仕組みをつくり、会社としてサポート基盤を整備することが重要です。

今後もプレイングマネージャーが増えるとされる中で、「マネージャー体験」の改善は組織パフォーマンスを向上させるためにも必要性が増すと考えられます。

ぜひ各社の取り組みをご参考になさってください。

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