変化の激しい時代に必要な「アンラーニング」とは? 実践の3ステップと手法を解説

近年、注目を高めている「アンラーニング」という言葉をご存知でしょうか。

VUCAワールド(※)と呼ばれる変化の激しい時代においては、既存の価値観や過去の成功体験に固執することなく、環境の変化に適応しながら自らを変えていくことが求められます。

※VUCA…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとり、不安定で不確実、複雑な時代を表現する言葉

ですが、従来の常識や固定観念を見直し、自己変容を遂げることは、容易なことではありません。

そこで今回は、アンラーニングの定義から実践における注意点、具体的な手法まで、詳しくご紹介します。

<目次>

  • 「アンラーニング」とは?
  • ビジネスパーソンこそ、アンラーニングが必要な理由
  • アンラーニングを始める上で注意したい「3つのポイント」
  • 【4社の事例】アンラーニング実践の3ステップと手法を紹介
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「アンラーニング」とは?

アンラーニング」とは、一言でいうならば「学びほぐし」を意味します。

これまでの学習を通じて培ってきた価値観や習慣を認識した上で、必要なものを取捨選択し、新しいものを取り入れながら学びを修正するスキルのことです。

Harvard Business Reviewに寄稿された記事では、下記のように定義されています。

Unlearning is not about forgetting what you have learned. On the contrary, it is about being aware of it and still having the ability to modify habits or techniques in favor of personal or business evolution.

出典はこちら

簡単に意訳すると、アンラーニングとは「これまでに学習してきたことを『忘れ去る』ことではなく、既存の価値観を『認識』し、個人や仕事をより進化させるために今の習慣やスキルを修正すること」です。

よくアンラーニングのことを「学び直し」と捉える人も多いですが、注意したいのは「既存の学びを捨て去ることではない」ということです。

アンラーニングは「潜在意識や既存の価値観を認識すること」「価値観を取捨選択すること」にフォーカスすることが多い点で、学び直しとは異なります。

ビジネスパーソンこそ、アンラーニングが必要な理由

ではなぜ、ビジネスシーンにおいて「アンラーニング」が必要とされるのでしょうか。

下図は、サービスローンチから5,000万ユーザーを獲得するまでにかかった日数を表したグラフです。

たとえば、一番左の「飛行機」が約60年かかったのに対し、最近話題になった「Pokemon Go」はたった約18日で5,000万ユーザーを獲得しています。

このデータから、技術の進歩や社会システムの変化などを受けて、ビジネス環境が急速に変化していることがわかります。それまで積み重ねられてきた技術や知識の習得だけでは、もはや太刀打ちできない時代です。

さらに、経済環境の変化が大きくなればなるほど、個々人だけではなく、組織単位でアンラーニングを実践し、変化に対応する必要があると言えるでしょう。

組織にアンラーニングをうまく取り入れられると、企業にとっては次のようなメリットも期待できます。

従業員レベルでは、

  • 新たな知識や能力の習得
  • 予測不可能なことに対する肯定的なマインドへの変化

組織としては、

  • 従業員のパフォーマンス・エンゲージメントの向上
  • 変化に強い組織の構築
  • 新規サービスの創出・既存サービスの改善

しかし、2007年に報告されたマッキンゼー・アンド・カンパニー社の調査によれば、組織を絶えず改善し続けている企業は全体の約30%しか存在せず、多くの企業はただ環境に順応しているだけだといいます。

では、組織単位でアンラーニングを継続的に実践していくためには、どうすればよいのでしょうか。まずは、始める上で注意したいポイントをご紹介します。

アンラーニングを始める上で注意したい「3つのポイント」

まず前提として、重要なのが「マインドセット」です。

アンラーニングを実践する過程では、難しい課題に向き合うことが多くあります。
固定概念にとらわれてしまうと、ネガティブな感情をうまくコントロールすることができず、ストレスを抱えてしまいかねません

そのストレスをうまく対処するためには、マインドセットとして「好奇心」や「忍耐力」を持つことが大切です。

上記を踏まえて、実践する際に心に留めていただきたいポイントが3つあります。

① アンラーニングは、行動の前後にある「認知」と「内省」が大事

アンラーニングは、ただ新しい価値観を取り入れて行動すればいい、というわけではありません。行動する前の「認知」と、行動した後の「内省」の作業が重要です。

行動に意識を集中しすぎてしまうと、アンラーニングから得られるものが本来より少なくなってしまいます。行動することは、あくまでアンラーニングの「過程のひとつ」であることを忘れてはいけません。

② はじめに価値観から変えようとしない

自らの価値観を認知することができたら、価値観よりも先に行動から変えることがおすすめです。

読書やインターネットでの情報収集だけでなく、新しい環境に飛び込む、異なる価値観を持つ人と話すなど、行動することがより有効です。

③ ひとりだけでアンラーニングしようとしない

自分の弱みや恐れにも向き合う必要のあるアンラーニングは、多くの場合「痛み」が伴います

そのため、ひとりだけで実践しようとすると、どうしても長続きさせることが難しくなります。痛みを軽減し、ストレスにもうまく対応するには、誰かと一緒にアンラーニングを実践することがおすすめです。

【4社の事例】アンラーニング実践の3ステップと手法を紹介

では、実際にアンラーニングを実践してみましょう。

今回はアンラーニングにおける「自己評価」「選択」「変革」の3ステップに沿って、SELECKの事例とともに具体的な手法をご紹介します。

① 自己評価 – Self Assessment

まずは自分の価値観を認識(=メタ認知)して、固定概念から脱却するための「自己評価」が必要です。

その自己評価を行った上で「守るべきものは何か」「捨て去るべきものは何か」を選択し、行動することが重要です。

私たちは、誰しもが自分にとって都合のよい情報を無意識に選択するという「確証バイアス」を持っています。まずは意識的に「知らないこと」に目を向け、その存在を認知する必要があります。

そのために有効な手段として「リフレクション(内省)」「マインドフルネス」が挙げられます。

マインドフルネスは、その身体的・心理的な効果に期待が寄せられてから、研修の一部として取り入れている企業もあります。最も有名なのは、Googleが2007年に開発したマインドフルネスプログラム「Search Inside Yourself」です。

また、マインドフルネスは「瞑想」や「ジャーナリング」、「マインドフル・〇〇」など様々な手法があるため、自分に合った手法を探してみるのがおすすめです。

※マインドフルネスについて、詳しく知りたい方はこちら

ヤフー株式会社では、自己の状態を認知する「メタ認知」を継続的にトレーニングするため、独自のマインドフルネスプログラムを実施しています。

実際の参加者に実施したアンケートでは、実践頻度が高い人ほど自身のパフォーマンスが発揮しやすくなったと回答する人が増え、中でも週3回以上の実践者と未経験者では40%程の差があったといいます。

マインドフルネスの効果って、よく世間では生産性向上やストレス低減とかって言われていると思うのですが、僕自身はもっと奥深いものだと感じていて。

(中略)

自分の状態を把握することで、ものの見方の解像度がぐっと上がるんです。そうすると、周りのメンバーやチームに対してもいい働きかけができますし、結果として良い仕事ができるんですよね。

記事はこちら:マインドフルネスって効果あるの?ヤフー社の、累計800人以上が参加した取り組みとは

マインドフルネスは、特別な道具も必要なく、すぐに始めることができるので、朝会やお昼休みの時間などに取り入れてみてはいかがでしょうか。

② 選択 – Selection

次のステップは、認知した自分の価値観を見つめ、他者の価値観などと照らし合わせながら「必要なもの」と「不必要なもの」を取捨選択することです。

この段階が、アンラーニングでは最も重要とされています。

取捨選択するために有効な方法として、他者が本人の良い点・改善点をする「フィードバック」がよく挙げられます。

今回はその中でも、同僚や部下といった多角的視点からフィードバックを受ける360度フィードバック」をご紹介します。

※360度フィードバックについて、詳しく知りたい方はこちら

フィードバックでは、自分の弱みに向き合わねばならない意見を受け取ることもありますが、それをネガティブに感じず、成長する機会だと捉えることが必要です。

RELATIONS株式会社の代表である長谷川さんは、経営者である自分自身が組織の問題を引き起こす一因だと感じ、自身の適応課題(※)を可視化するために360度フィードバックを実施したといいます。

※「適応課題」:解決のために、それまでの価値観、習慣、仕事の進め方を変えなければならない課題。現実を直視し、喪失や恐怖を受け入れ、変化に適応しなければ解決できない。技術や経験で解決できる「技術的課題」の対義語。

これにより、経営者として自分自身が変わるべきだと覚悟し、会社のミッションを刷新。最終的には社内のエンゲージメントスコアが上昇した、というエピソードです。

もともと弊社では創業初期から360度フィードバックを導入していて、四半期ごとに全員が数名の同僚から「ストライク」と「ボール」をもらうようにしていました。ただ、私自身がフィードバックをもらう機会がなぜか少なかったんですよね

やっぱり思っている以上に、自分で自分のことって見えていないものなんです。耳が痛い意見もありましたが、ダイレクトにフィードバックをもらったことでとても心に響きましたね

記事はこちら:組織はなぜ変われないのか? 経営者こそ「360度フィードバック」を受けるべき理由

③変革 – Transformation

アンラーニングは、すぐに効果を実感できるものではありません。「自己変容」のためには、効果をなかなか実感できなくても継続することがポイントです。

そこで、ステップ1でお伝えした「内省」を促し、継続的に実践するために、「1on1」を取り入れることが有効です。

※1on1について、詳しく知りたい方はこちら

アンラーニングを意識して「1on1」を行うためのコツを、2つご紹介します。

まず1つ目は「経験学習」と呼ばれる理論を意識することです。

米国での調査など、アンラーニングの先端研究を行っている北海道大学大学院の松尾教授は、企業がアンラーニングを取り入れるには経験学習がポイントだといいます。

松尾教授は、経験学習を以下の3つのサイクルに分類します。

  1. 目標に向かって挑戦する力である「ストレッチ
  2. 内省や他者からの指摘などによる振り返りである「リフレクション
  3. 仕事に面白さややりがいを見出す「エンジョイメント

ただ漠然と1on1を行うのではなく、目標を明確に設定した上で内省を繰り返し、仕事にやりがいや面白さを感じてもらうことで、アンラーニングの効果がより一層高まります。

参考:「経験学習」で育て上手な上司に 社内の人材育成に重要な3つの要素 – ぶーめらん

また、Supership株式会社では、自立した社員を育成することを目的として、この「経験学習」理論に基づく形で「内省と抽象化のサイクル」にフォーカスした1on1を実践しています。

単純に経験を積むだけでなく、経験した内容を定期的に振り返って内省し、そこにある種の抽象化をかけて、エッセンスを抽出し、次の行動計画に落とし込むことが重要です。

(中略)

この「内省と抽象化のサイクル」を回していくことで人は成長していくわけですが、それを「やればいい」と言っても、誰もやらないんですよね。

たった一人で内省することは、簡単に見えても、それを習慣化するのが難しい。そのために、1on1を定期的に開催してもらっています。

1on1を使えば内省ができますし、抽象化に対する効果的な助言ももらうことができるからです。

記事はこちら:組織を変える第一歩は「人への興味」? 自走型の人材を増やす、Supershipの1on1活用

2つ目のコツは「コーチング」を取り入れることです。

コーチングとは、「目標の達成にむけた、行動変容を促すためのサポートのこと」です。ティーチングが答えを「与える(=教える)行為」であるのに対し、コーチングは問いかけによって答えを「引き出す行為」のことを指します。

※コーチングについて、詳しく知りたい方はこちら

2015年にコーチングを社内制度化し、これまで累計250名ほどの社員がコーチングを受けてきたSansan株式会社。同社で「社内コーチ」として活躍している三橋 新さんは、コーチングの役割を「自分の内にある障壁を明らかにして、それを取り除いていくこと」だといいます。

コーチングでは、「あなたにとって仕事は何ですか?」といったような抽象度の高い問いを投げかけることで、本人が自らの潜在意識に気づくことができ、質の高い内省を促すのに有効です。

コーチングにおいても、まずは抽象的な問いかけをして、本人にタンスのすべての引き出しを開けてもらう。それから「何か違和感あるものがないか」「しっくりくるものはどれか」といった問いかけをして、本人に見てもらうんです。

すると、中には「ずっと着ていないんだけど、なぜかここにあるんですよね」といったものが見えてきます。そういった違和感そのものを、本人が向き合う課題やテーマとして設定をして、それに向き合っていく

(中略)

フィードバックにおいて僕が心がけているのは、事実を伝えることです。「正しい・間違っている」でも「良い・悪い」でもなく、「僕がこう感じた」という事実を伝える。それを受け取るかどうかはどちらでもいい、という前提で話をすることが大切です。

記事はこちら:今、多くの人が「ロードリーム」に陥っている。Sansanのオンラインコーチング実践法

いかがでしたでしょうか? アンラーニングは実践するのが難しい、効果がわかりづらい、と思われる方が多いかもしれませんが、マインドや実践のコツを意識しながら継続することで、効果は確実に得られるはずです。

すぐに新しいルールを取り入れたりせずとも、まずは普段の1on1の中でより深い内省を意識してみる、といったことから始めてみてくださいね。

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