- コラボレーター
- seleck
大手企業のWeb3活用・最新事例【9選】総まとめ!社内通貨、ゲーム、アイドル育成も
「Web3(ウェブスリー)」は、「Web3.0」とも呼ばれ、主にブロックチェーン技術によって実現されようとしている、新しい分散型のインターネットの仕組みです。
その活用は、今やNFTや暗号資産といった専門領域にとどまらず、ソーシャルメディアやクラウドサービス、さらにはリアルの世界まで、私たちの身近なところに広がっています。
そこで今回は、Web3を活用した国内大手企業の最新事例を紹介します。Web3のビジネス活用事例として参考になるのはもちろんですが、初心者の方でも参加しやすいサービスも多いので、ぜひ覗いてみてはいかがでしょうか。
<目次>
- 【東急】渋谷の街とWeb3世界をつなぐ「SHIBUYA Q DAO」
- 【NEC】ブロックチェーンと生体認証を組み合わせたデジタル社員証
- 【コナミ】ユーザーと創るWeb3の世界「PROJECT ZIRCON」
- 【LINE】ECサイト感覚でNFTを購入できる「DOSI」
- 【日本テレビ】NFTホルダーが育てるアイドル「NFT IDOL HOUSE」
- 【SMBCグループ】社員間で、感謝の「SBT」を送り合う実証実験
- 【KDDI】誰もがクリエイターになれるメタバース・Web3サービス
- 【デジタルガレージ】Web3特化型の会員制コワーキングスペース
- 【JASRAC】ブロックチェーンで、楽曲の存在証明を発行
【東急】渋谷の街とWeb3世界をつなぐ「SHIBUYA Q DAO」
1922年の創立以来、公共交通機関と都市開発を両軸とし、公共性と事業性を両立させた「まちづくり」を進めてきた東急株式会社。
同社が中心となり、2023年からスタートしたのが、未来の渋谷へのチケット「SHIBUYA Q DAO(以下、SQD)」です。
これは、渋谷の街を舞台に、NFTを用いて現実世界とWeb3の接点を作り、参加者と協力しながら運営していく参加型・共創型のプロジェクトで、Web3を活用しながら新しい付加価値と体験を共創する目的で立ち上がりました。
参加証となる「Bucket Bear NFT」と、カード型ハードウォレット「Pokke」のセットを購入することで、誰でもSQDに参加できます。
カード型ハードウォレットは、暗号資産などの購入負担を軽減するだけではなく、ウォレット開設の手順も従来の95%以上削減しているといいます。この仕組みにより、テクノロジーに詳しくなくても、多くの人がブロックチェーンを活用した体験を受けられます。
このNFTによる、具体的な優待や特典の一例は以下のとおりです。
- 特定の場所に設置されたQRコードを読み込んで「ワンスライスNFT」を集めると、本物のピザと交換できる
- Crypto Cafe & Barにて、毎週火曜の18時以降は、カード提示で1ドリンクのサービスが受けられる
- 渋谷での落書き消去活動に参加すると、特典としてNFTを獲得できる
今後は最新の技術や概念を積極的に取り入れつつ、「エンタテイメントシティSHIBUYA」を実現することが目標だといいます。
【NEC】ブロックチェーンと生体認証を組み合わせたデジタル社員証
ITサービスや社会インフラの領域で、幅広い事業を手掛ける日本電気株式会社(NEC)。同社は2024年7月に、国内の社員2万人を対象に、物理的なカードに代わる「デジタル社員証」を導入したと発表しました。
このデジタル社員証は、マイクロソフト社が提供するブロックチェーンを活用した「分散型ID」の技術と、NECの生体認証技術を組み合わせたもの。同社が推進する「働き方DX」の取り組みのひとつとしてスタートしています。
※出典:https://jpn.nec.com/press/202407/20240710_01.html
デジタル社員証には社員の顔画像がひも付いており、社員は本社の入退場や売店や食堂での決済、オフィスの複合機やロッカーの利用などを、全て顔認証で利用できます。
月内をめどに勤怠管理システムとも連携し、本社への入館、退館と同時に勤務の開始や終了が記録できるようにするといいます。また、今後は連結子会社含めたグループ社員11万人への展開や、社外サービスとの連携も強化していくそうです。
【コナミ】ユーザーと創るWeb3の世界「PROJECT ZIRCON」
1969年の創業から55年にわたり、時代の波頭をとらえた革新的な商品やサービスを世界中に提供し、新しい楽しさを創出してきたコナミグループ株式会社。
同社は2023年9月、東京ゲームショウ2023のステージでWeb3プロジェクトとして「PROJECT ZIRCON(プロジェクト・ジルコン)」を発表しました。
PROJECT ZIRCONは、ユーザーがキャラクターをNFTとして保有し、キャラクター名やプロフィール、能力などを決め、架空世界の創作に参加できるWeb3プロジェクトです。具体的なロードマップが当初から公開されており、ユーザーが参加するDiscrodコミュニティを中心に進行しています。
実際、東京ゲームショウの時点で決まっていたコンテンツは、竜や4つの国が描かれた「始まりの1枚の地図」と呼ばれるたった1枚の絵のみだったそう。
※出典:https://news.denfaminicogamer.jp/kikakuthetower/240527d
そこから2024年5月までに、コミュニティメンバーとXのフォロワーはどちらも1万人を突破。累計日本語コメント数は12万3261件、デイリー最多コメント数は2,348件、小説やアートなどの創作物投稿は1,166件にのぼるなど、大きなコミュニティを形成することに成功しています。
現在の参加方法としては、コミュニティゲーム、イベント、ギルド、プロジェクトの4つがあり、ユーザーそれぞれの好む形でコミュニティと関わることが可能です。ロードマップ上のゴールである2025年のゲーム化に向けて、これからもさまざな取り組みを行っていくようです。
【LINE】ECサイト感覚でNFTを購入できる「DOSI」
LINE株式会社は、グローバルNFTエコシステムを本格的に構築するため、韓国とアメリカにそれぞれ法人を設立。2022年9月には、日本を除く世界180ヵ国で、9ヵ国語に対応したグローバルNFTプラットフォーム「DOSI(ドシ)」のベータ版を提供開始しました。
同サービスは2024年1月にリニューアルされ、日本も含めて正式版がリリース。それに伴い、従来LINEの関連会社によって展開されていた「LINE NFT」「DOSI Wallet」などのNFT関連サービスは終了され、統合されました。
その後、サービス開始後1年6カ月で登録アカウント数は550万を超え、取引回数は60万を超える規模に成長しています。
DOSIの特徴は、NFTのマーケットプレイスでありながら、一般的なECサイトのように、簡単に登録からログイン、取引、決済が可能な点です。例えば、暗号通貨で決済するウォレットがなくても、クレジットカードで支払いをすることができます。
ECサイトで買い物をする感覚で、世界中のさまざまなNFTアイテムを気軽に取引できる点が魅力です。
※出典:https://www.lycorp.co.jp/ja/story/20240326/dosi.html
【日本テレビ】NFTホルダーが育てるアイドル「NFT IDOL HOUSE」
日本テレビホールディングス株式会社は1952年に設立され、地上波テレビ放送において多くの人から支持を得ている企業です。近年は、地上波にとどまらずインターネット配信や海外展開などにも挑戦しています。
そんな同社は、2022年に株式会社プラチナムピクセルと共同し、新アイドルプロジェクト「NFT IDOL HOUSE」を始動。これは、アイドルグループをNFTホルダー中心のコミュニティで育て、「Web3新時代のアイドル」を生み出すプロジェクトです。
プロデューサーには、ガールズバンド「SILENT SIREN」のボーカル&ギターを務める「すぅ」が就任。8人組のアイドルグループ「Fuhua」の似顔絵をNFTとして販売し、そのホルダーが同グループの運営に一部参加できる、という仕組みで運営されています。
※出典:https://opensea.io/collection/nft-idol-house-official
NFTの生成にはアクセサリーや髪型などのパーツを自動的に組み合わせられるジェネラティブ方式を採用しているため、全個体が唯一無二のNFTです。
ファンと運営が一緒になってプロデュースする、Web3新時代における新しいカタチのアイドルを作っていくことを目指しているといいます。
▼過去、NFT IDOL HOUSEに取材した記事もぜひ一緒にご覧ください
Web3×推し活!NFT IDOL HOUSEが目指す、次世代のアイドルコミュニティ – SELECK
【SMBCグループ】社員間で、感謝の「SBT」を送り合う実証実験
銀行やリース、証券、クレジットカード、コンシューマーファイナンスなど幅広い事業を展開する「複合金融グループ」である、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)。
そんなSMBCグループは2022年12月、ブロックチェーンの社会実装のためのソリューションを提供するHashPortグループとの、SBT(ソウルバウンドトークン)領域での業務提携を発表しました。
SBTとは、「譲渡不可能なNFT(非代替性トークン)」のことで、一度受けとったらウォレットの外に移すことができない特性を持ちます。
※SBTについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください
2023年4月には、SBTを用いたSMBCグループの社内コミュニティ形成に関する実証実験を行うことを発表。従来は可視化されていなかった「社員間の感謝」といった行動を、ブロックチェーン上のトークン送付で可視化することで、社内コミュニティ活性化につなげることを目指したといいます。
具体的には、SBT保有者は社内チャットツール内で形成されるコミュニティに参加し、コミュニティに貢献する発言・行動をしたメンバーに感謝の証としてSBT保有者間でのみ送付可能なファンジブルトークン「ミドりぽ」を送付できる仕組みを構築。
※出典:https://www.smfg.co.jp/dx_link/article/0101.html
結果的に、短期間の間にかなり高密度で活発なコミュニケーションが行われ、部署と年代を横断した柔らかなイノベーションを起こせたといいます。参加者のアンケートでは、「今回の実証実験が熱意にあふれた職員との交流になり、刺激をもらえました」「三井住友銀行で働くモチベーションの向上に繋がった」という声があったそうです。
【KDDI】誰もがクリエイターになれるメタバース・Web3サービス
企業理念として、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することを掲げ、通信事業やグローバル事業、金融事業等を展開するKDDI株式会社。
同社は、2020年5月に都市連動型のメタバース「バーチャル渋谷」、2022年10月には「デジタルツイン渋谷」に参画。事業の核である5G通信とAR・MR技術を活用し、リアル空間とバーチャル空間をつなぐ都市体験の拡張を目指しました。
さらに、2023年3月には、現実と仮想を軽やかに行き来する新しい世代に寄り添い、誰もがクリエイターになりうる世界に向けたメタバース・Web3サービス「αU(アルファユー)」を始動。以下のようなサービスを提供しています。
- メタバースでエンタメ体験や友人との会話を楽しめるαU metaverse
- 360度自由視点の高精細な音楽ライブを楽しめるαU live
- デジタルアート
- 作品などの購入ができるαU market
- 暗号資産を管理できるαU wallet
- 実店舗と連動したバーチャル店舗でショッピングができるαU place
※出典:https://newsroom.kddi.com/news/detail/web30u.html
直近の取り組みとしては、2024年5月より、「αU metaverse」が期間限定で開業中の「バーチャル大阪駅 3.0」に出展。メタバース内でのカラオケや配信イベントのほか、メタバース参加でリアルの大阪駅でドリンクがもらえる特典を提供するなど、バーチャル上とリアルが連動するイベントを実施し、よりユーザー層を拡大しています。
▼過去、KDDI社に取材した記事もぜひ一緒にご覧ください
Web3時代はメタバースがメディア化する?KDDIの「αU」が創る、音声中心のユーザー体験 – SELECK
【デジタルガレージ】Web3特化型の会員制コワーキングスペース
創業当時より、「Information Technology」「Marketing Technology」「Financial Technology」という異なる3つのテクノロジーを結ぶことで、継続的な事業成長を実現してきた株式会社デジタルガレージ。
同社は2024年2月に、DAOモデルの実証店舗としてWeb3特化型会員制スペース「Crypto Cafe & Bar」を開設しました。
※出典:https://www.garage.co.jp/pr/release/20240219/
Crypto Cafe & Barは、2022年に同社の取締役である伊藤 穰一氏を中心に設立した研究組織「Digital Architecture Lab」が運営する、Web3特化型の会員制コミュニティ/コワーキングスペースです。
現在計画しているのは、「Crypto Cafe & Bar DAO」設立に向けたDAO法人設立やDAO組織に合ったガバナンスの構築、Web3ツールを活用したイベント開催などの、さまざまな実験や取り組みだといいます。
参加者はメンバーシップNFTを購入することで、日中はコワーキングスペース、夜はBarであるCrypto Cafe & Barへアクセスできるのはもちろん、将来的には、「Crypto Cafe & Bar DAO」の意思決定権や「Crypto Cafe & Bar」の一部所有権の付与も予定されています。
【JASRAC】ブロックチェーンで、楽曲の存在証明を発行
作詞家、作曲家などの音楽クリエイター、楽曲の利用開発を行う音楽出版社などの権利者から音楽著作権を預かり、その管理を行う一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)。
JASRACでは、デジタル技術の発展に応じて権利者のニーズが多様化していることから、その管理の仕組みを常にアップデートしています。その中で、2022年10月31日にリリースされたのが、「KENDRIX(ケンドリックス)」です。
KENDRIXは、「すべての音楽クリエイターが Creation Ecosystem に参画できる世界へ」というコンセプトにより開発された、誰もが簡単に利用できる音楽の権利のDXツールです。
ブロックチェーンを用いて、いつ誰がその音楽ファイルを所有していたのか、という楽曲の存在証明を発行できるだけではなく、JASRACに著作権の管理を委託する契約(信託契約)の締結や作品登録まで、すべてをKENDRIXで行うことができます。
KENDRIXには、以下3つの大きなメリットがあります。
- 存在証明を発行して、インターネットを通じた無断利用や盗作、なりすまし公開などを抑止し、安心して楽曲を発表できる
- アカウントや楽曲の登録が簡単にできる
- これまでJASRACとの信託契約に必要だった戸籍謄本や印鑑証明書などの書類提出が不要になり、JASRACと契約する際のハードルが下がった
JASRACや音楽出版社などと無契約の音楽クリエイターにとって、KENDRIXは楽曲の創作に関する事実関係を客観的に証明できる心強いパートナーになるといえます。
おわりに
ゲームやアイドルといったエンタメの世界から、働き方改革、著作権管理まで、ユニークな事例を集めてお届けしましたが、いかがでしょうか。
Web3はまだまだ進化し続ける領域であり、これからも多くの企業がさまざまな取り組みを行っていくはずです。引き続き、チェックしていければと思います。(了)。