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【徹底解説】「SocialFi」とは?概要から3つの分類、DeSocとの関連性まで
2000年代のSNS黎明期から「Twitter」と「Facebook」が代表的な存在となり、あらゆる人の日常にSNSが溶け込んでいる現代。
しかし今では、前者はイーロン・マスク氏によって「X」にリブランディングされ、ユーザーだけでなく、広告主離れが進んでいるとするニュースも多く見かけます。
そうした中、Web2からWeb3への転換を図り、ユーザーが投稿するコンテンツの所有権を担保したり、個人に収益をもたらしたり、プラットフォーム自体の運営に関われたりするなど、従来とは異なるユニークな体験をもたらすSNSも誕生しています。
これらは「分散型SNS」と呼ばれ、運営者による中央集権的な管理から解放された、オープンなソーシャルネットワーク・プラットフォームとして注目されています。そして、分散型SNSの中でも注目が集まっているのが、より経済活動に特化した「SocialFi(ソーシャルファイ)」です。
SocialFiは、基本的にブロックチェーン技術を用いて構築されています。ブロックチェーンは安全な情報管理や、言論の自由を実現する画期的な技術であり、SNSとも非常に親和性が高いものです。
そこで今回は、SocialFiの特徴や仕組みについてお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
- 「SocialFi」の基本概念と3つの分類
- 貢献度を可視化する「Social Token」とは?
- 従来のSNSが抱える課題と、SocialFiが注目されている背景
- SocialFiとDeSoc(分散型社会)の違い
- SocialFiが抱える課題
<編集部より>本記事に掲載している情報は、記事公開時点のものになります。Web3.0の世界は日々変化していますので、「DYOR(Do Your Own Research)」の前提で記事をご覧いただけますと幸いです。記事の内容についてご意見や修正のご提案がございましたらこちらまでお願いします。
「SocialFi」の基本概念と3つの分類
SocialFiとは、「Social(=ソーシャルメディア)」と「Finance(=金融)」が融合した概念です。
その特徴としては、ブロックチェーン技術がベースとなって構成されており、ユーザーは自身の情報や資産の所有権を持つことができます。これにより、従来のSNSでは不可能だった、投稿コンテンツの収益化も可能になります。
また、SocialFiは「DAO(分散型自律組織)」の形式で運営されているケースが多く、ユーザーが運営に関する意思決定やガバナンスに関与できる点も大きな特徴です。
このような特徴をもつSNSは「分散型SNS」と呼ばれ、XやInstagramといった運営企業による中央集権的な管理がなされているものと区別されます。代表的な分散型SNSとしては、Twitterを創業したJack Dorsey氏が立ち上げた「Bluesky」や、Meta社がリリースした「Threads」、過去に一時ブームとなった「Mastodon」などが挙げられます。
「分散型SNS」とは?
Web3の概念に基づいてブロックチェーン技術などを活用し、非中央集権的な仕組みのもと運用されているソーシャルネットワーク・プラットフォームのこと。
分散型SNSは大きく分けて2つの種類に分類され、分散型台帳技術を利用したタイプと、ブロックチェーン技術を活用したタイプに分けられる。
ブロックチェーン技術を活用した分散型SNSの場合は、そのデータの改ざんを防ぐ特性から、よりセキュアな環境でのコミュニケーションが可能であったり、独自トークンの発行によるコンテンツの収益化なども設計することが可能。
つまり、ブロックチェーン技術を活用して、経済的な報酬を得ることに重きをおいた分散型SNSが「SocialFi」ということです。
SocialFiのプロジェクトは、技術的アプローチによって大きく3つに分類されます。
1.単一のWeb3型アプリケーション
XやFacebook、Instagramなど従来のSNSと似たアプリケーションを、ブロックチェーン技術を基盤として開発したものです。ユーザーが作成したコンテンツに対し、その「いいね」や「シェア」数などに応じて直接的な報酬が付与されるシステムが構築されています。
例)Tomo、Damus、Mirror、ALIS、TwitFi
2.プロトコル
プロトコルは、SocialFiのエコシステムの土台となる技術です。このタイプのプロジェクトでは、開発者が新しくSocialFiのアプリケーションを開発する際、容易に構築できるように必要なツールや要素を提供します。
例)Nostr、Lens Protocol、CyberConnect、RELATION
▼各プロトコルについては、こちらの記事で解説しています
【厳選9つ】「分散型SNS」とは?今話題のBluesky、Mastodonなど徹底比較! – SELECK
3.既存のサービスにWeb3要素を足したアプリケーション
既存のWeb2サービスにブロックチェーン技術を活用することで経済性を付与し、新たな価値を創造しようとするアプローチです。ユーザーが従来の活動を続けながら、新たな報酬システムの恩恵を受けられるため、利用者のエンゲージメント向上が期待できます。
例)Yay!、Friend.tech
貢献度を可視化する「Social Token」とは?
SocialFiの最大の特徴は、分散型SNSの中でもより経済活動に特化している点です。SocialFiを運営するDAOやプラットフォーム特有のトークンは「ソーシャルトークン」と呼ばれ、プロジェクトやコミュニティに対する個々人の貢献度を可視化します。
具体的に、ユーザーは以下のような貢献を通じて暗号通貨を獲得できます。
- テキストや写真、動画等を用いた、優良なコンテンツの発信
- 他のユーザーとのディスカッション
- コミュニティ上のプロジェクトやイベントへの参加
- プラットフォームへの貢献
ソーシャルトークンは、その発行者がアーティストやクリエイターなどの個人か、あるいは団体かによって以下に分類されることがあります。
1.コミュニティソーシャルトークン(コミュニティトークン)
グループやコミュニティを中心に発行されるトークンのことで、トークン保有者限定のメルマガ発行や、限定コミュニティへの招待といった特典を実行するのに利用される。
2.インディビジュアルソーシャルトークン(パーソナルトークン)
個人が発行するソーシャルトークンのことで、アーティストやクリエイターが発行するケースが多くみられる。ファンが直接に発行者を応援できる「クリエイターエコノミー」を形成するいち手段として注目されている。
ユーザーが獲得したソーシャルトークンは、他の暗号通貨に交換したり、コミュニティ内の特別な権利と交換することができます。中には、コミュニティの運営方針に関する議決権として使用できる「ガバナンストークン」としての機能を持つケースもあります。
つまり、ソーシャルトークンの用途や利用方法はプラットフォームによって異なり、単純に稼げる要素を実装したものや、ガバナンス権だけを付与したもの、さらにはNFTを活用してユーザーのアイデンティティやコンテンツを保護しているケースなどが存在します。
▼各種「トークン」について詳しくは、こちらの記事も一緒にご覧ください
Web3.0世界の「トークン」8種類を徹底解説!定義や歴史、暗号資産との違いもご紹介 – SELECK
ソーシャルトークンが存在することで、かつて「いいね」などの形で表現されていたエンゲージメントが、経済的価値を持つようになり、ユーザーは好きなことで収益を得られるようになる可能性があります。
この特性は、「クリエイターエコノミー(※)」と非常に相性が良く、プラットフォーム企業が大きな力を持つWeb2の世界における課題を解決するのではないかと期待されています。
※クリエイターエコノミー:個人がクリエイターとして自身のスキルを活用し、情報発信やアクションによって報酬を得る経済圏のこと
例えば、現在クリエイターとして活動する人の99%は趣味として創作を行う程度に留まっており、生計を立てられるまで「稼げていない」という課題があります。
また、プラットフォームの収益構造により、富の多くがトップ層に集中してしまい、後発のクリエイターにとって不利な場合が多いといった課題や、プラットフォーム側にファンの行動データが依存してしまい、データの活用が難しいといった課題があります。
こうした課題に対し、ソーシャルトークンの発行を通じて経済圏を構築できれば、人々を魅了するコンテンツが価値を持ち、コミュニティに貢献したユーザーには報酬が支払われる世界観が実現するかもしれません。
▼クリエイターエコノミーに関しては、こちらの記事も一緒にご覧ください
【後編】Web3.0時代のクリエイターには必須!「好きなことで稼ぐ」を応援する次世代ツール12選 – SELECK
従来のSNSが抱える課題と、SocialFiが注目されている背景
昨今、SocialFiが脚光を浴びている理由は、従来のSNSとの違いにあります。以下、その違いを整理してみました。
<従来のSNS>
- 中央集権的なプラットフォーム:データの所有権はデベロッパー(運営)にある
- コミュニティ内の言論統制:投稿内容が監視・検閲される
- 不公平な収益化システム:運営者と広告主が収益を独占する
<SocialFi>
- 分散化されたプラットフォーム:データの所有権はユーザーにある
- 民主的なコミュニティ:自由で透明性のあるコミュニケーションができる
- 平等な収益化システム:誰もが経済的チャンスを得られる
Web2とWeb3のサービスを比較する際、しばしば議論されるトピックがプライバシーや言論の自由に関する問題でしょう。
Web2のサービスでは、アカウント作成の際にメールアドレスや電話番号といった個人情報の提供が求められます。これはまるで、「荷物を預ける」ようなもので、運営が管理を怠ったり、セキュリティが破られた場合に個人情報が漏洩するリスクを伴います。
さらに、個人情報以外にも、ユーザーの投稿内容や行動履歴、どのようなコンテンツを好むかなどの趣味嗜好に関するデータも運営会社が把握し、取り扱います。
そのため、ユーザーの意向とは関係なくこれらのデータが販売されたり、不正に扱われたりするなどして、個人のプライバシーを侵害するような事件が発生しています。
例えば、2016年のアメリカ大統領選では、イギリスの政治コンサルティング会社がFacebookの個人情報を利用して心理プロファイリングを行い、投票行動を操作しようとしたことで大きな物議を醸しました。
その後、2022年には、InstagramやFacebookを運営するMeta社が、ユーザー5億人超の個人情報を漏洩したとして、アイルランド情報保護当局から罰金を科されました。このような事態を背景に、世界各国で個人情報に関する規制が強化されています。
また、多くのSNSは広告モデルを採用しているため、いかにユーザーの注目を集め、メディアへの滞在時間を最大化するかが重視されています。
そのため、ときには道義性を無視した「炎上商法」にも近いコンテンツやパフォーマンスが蔓延しており、社会的分断を引き起こすだけでなく、ユーザーのメンタルヘルスに悪影響及ぼすなどの問題が生じているのです。
このように、従来のWebサービスは自由で安全なように見えて、実際には多くのリスクが存在しています。そうした中で、SocialFiはこれらの課題に対処しつつ、ユーザーに新たな交流体験をもたらすのではないかと期待されているのです。
ただし、一点注意しておきたいのは、SocialFiが言論の自由を実現する場として機能するとしても、それは「何を言っても構わない」とするものではないということです。
誹謗中傷やデマ、差別を助長するようなコンテンツなどは規制されるべきであり、これらを監視するためにはSocialFiのエコシステムに関わる一人ひとりが積極的に関心を持ち、責任ある行動を取る必要があることを忘れてはならないでしょう。
SocialFiとDeSoc(分散型社会)の違い
SocialFiに類似する概念として「DeSoc(ディーソック)」があります。これは「分散型社会(Decentralized Society)」と訳され、ブロックチェーン技術を活用することで、オンライン上でも実社会のように個人の信用を実現し、コミュニティベースで意思決定を行い、新たな経済的価値を生み出す社会のことを指します。
DeSocの概念は、2022年5月に発表された論文「Decentralized Society: Finding Web3’s Soul」で提唱されました。論文を執筆したのは、暗号資産の一つ「イーサリアム(ETH)」の生みの親であるヴィタリック・ブテリン氏を含む3名の開発者たちです。
実社会の経済活動は信用ベースで成り立っていますが、Web3は基本的に匿名性の世界であり、個人を信頼するための情報が圧倒的に少ないのが現状です。
よって現在は、実社会における信頼関係や評判、実績に関わらず、Web3の世界においてどれだけの資産を保有しているかという軸で判断されてしまっており、実社会の実態と大きな乖離が生じています。
そこで、DeSocにおける個人の信用やアイデンティティを形成する要素として、ヴィタリック氏が挙げているのが「SBT(Soul Bound Token:譲渡不可能なトークン)」です。
SBTは、一度獲得するとウォレットの外に移動させられない性質を持ちます。つまりNFTのように他人に譲渡したり、売却することができません。
そして、1つ以上のSBTを保持するウォレットは「Soul(ソウル)」と呼ばれ、複数のSBTにより個人のWeb3上のアイデンティティが形成されます。実社会における履歴書のようなイメージに近いですが、大きく異なる点として、履歴書は自ら書くのに対してSoulは他者によって作られていくという特性があります。
つまり、SocialFiとDeSocは共にブロックチェーン技術を活用していますが、Web3のエコシステム内で果たす役割やユーザーにもたらす価値が異なります。
具体的には、SocialFiは主に経済的利益の創出を主な目的とし、ユーザーがWebサービスを用いて直接的に収益を得ることを可能にします。この際に、譲渡可能なトークンやNFTが利用され、これらは市場で自由に売買されます。
一方で、DeSocは社会的相互作用と信用の構築に重きをおき、個人間の関係を深めることを目的としていいます。そのため、譲渡不可能なトークンを用いて個人のアイデンティティを形成し、持続可能なネットワークの実現を目指します。
あらためて両者の違いをまとめると、以下のようになります。
<SocialFi>
- NFT(非代替性トークン)をはじめとした、トークンが用いられる
- 「プラットフォーム」のあり方を指す用語である
- 金銭的な側面に重きを置いている
<DeSoc>
- SBT(譲渡不可トークン)が用いられる
- 「社会」のあり方を指す用語である
- 社会的なつながりに重きを置いている
SocialFiが抱える課題
これまで、SocialFiの概要とその魅力についてお伝えしてきました。SocialFiでは、コミュニティに参加し、自身の好きな活動を通じて収益を得られる点は大きなメリットでしょう。
しかし、一方でデメリットとしては、ユーザーに高いリテラシーが求められる点が挙げられます。その背景として、SocialFiはブロックチェーン技術を利用しており、トークンの取引には秘密鍵を用いた認証が必要だからです。
従来のSNSでは、ログインIDやパスワードを忘れた場合、運営元に問い合わせれば再発行が可能でした。しかし、秘密鍵は本人だけが知りうる情報であり、一度紛失すれば、中央管理者が存在しないため復元ができません。これにより、秘密鍵を紛失した場合、保有するトークンやその他の資産を全て失ってしまうリスクもあります。
この秘密鍵の紛失問題は、ブロックチェーンを活用した技術すべてに当てはまるデメリットです。なかでもSocialFiは、人々の日常に根ざしたSNS形態のサービスであるため参入障壁が低く、今後リテラシーの低いユーザーの増加が予想されます。その結果、秘密鍵の紛失や盗難といったトラブルも多く発生することが懸念されます。
技術は進化し続けており、社会が今後どのように変容していくかは、誰にも予想できません。情報リテラシーに自信がある人にも、そうでない人にも、知識を常にアップデートしていく姿勢が求められそうです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回はSocialFiの概要から3つの分類、抱える課題までをお伝えしてきました。次回の記事ではSociaFiの代表的なサービスをご紹介します。お楽しみに。