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  • 加藤章太朗

DXは顧客接点から。スタートアップから大企業まで「顧客接点のDX」事例3選!

SELECKではこれまで、数多くのDX(デジタルトランスフォーメーション)」の解説記事を取り上げてきました。

今回は「DX自体は何となく理解できるけど、実態を掴みづらい」という方に向けて、顧客接点のDX(顧客接点のデジタル化)の事例を紹介します。

顧客接点のDX(デジタル化)とは

DXは、社内のDXと顧客接点のDX(デジタル化)の2つに分解できます(実際はより細かく分解できますが、今回はわかりやすさを重視し2つの分解にとどめています)。

今回の記事では、顧客接点のDXの事例を紹介しますが、顧客接点のDXとは具体的にはどのようなことを指すのでしょうか?

イメージがしやすい例として、まずは「スーパーマーケット」で考えてみましょう。かつてのスーパーは、店舗での販売が中心でネットスーパー(Eコマース)は補助的な位置づけでした。

そのため、ネットスーパーのスマートフォンアプリは、スマートフォンに最適化されていない使いづらいUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)のものが多かったかと思います。

supermarket

しかし、スマートフォンが普及したことで、人々は「スマホで物を買う」という行動に慣れました。すると、わざわざ店舗に行かず、ネットスーパーからも物を買うようになりました。

これまでは、店舗の入り口、売り場、レジ、等のリアルな場のみが主な顧客接点だったのに対し、スマートフォンアプリが新たな顧客接点として大きく成長したと言えます。

このような変化に対し、新しい顧客接点であるアプリのUI/UXが最適化されていなければ、顧客は簡単に離れてしまいます。この最適化こそが、顧客接点のDXです。

また、最適な集客方法も変わります。これまで、多くのスーパーマーケットは折り込みチラシを刷って集客をしてきました。しかし、スマートフォンを使いこなす顧客層は新聞を取っていないことも多く、折り込みチラシという顧客接点を見直す必要があります。

例えば特売情報をネットスーパーのアプリのプッシュ通知に配信し、実店舗まで誘導する…といったデジタルな集客方法が必要となるかもしれません。

このように顧客接点のDX(デジタル化)とは、デジタルを前提として企業と顧客の接点を捉えなおすことです。以下では、過去にSELECKで取材してきた中で、顧客接点のDX(デジタル化)にあたる事例を紹介します。

キリンビール公式noteが紡ぐ、ブランドコミュニケーション

元記事:「これからの乾杯を考える」キリンビール公式noteが紡ぐ、ブランドコミュニケーション

キリンホールディングス株式会社は、企業のミッションや造り手の想いといった「情緒的価値」を語る場として、2019年4月にキリンビール公式noteキリンビール公式noteを開設しました。

そして、キリンへの関心度に合わせた3つのレイヤーでターゲット読者を定め、コンテンツを制作。キリンへの関心度がそこまで高くない層に対して、noteを活用した参加型の投稿コンテスト「#社会人1年目の私へ」を開催し、2ヶ月で3,000件を超える応募を生み出しました。

キリンホールディングスの事例から学べるポイントは、新たなデジタルプラットフォームへの素早い試行です。デジタル時代には、顧客が集まるプラットフォームも移り変わります。そのため、とにかく素早く試し、成果を確認することが重要です。

社内にこれだけ「語れる人」がいて、「語れるプロダクト」があるのだから、企業のミッションや社員の想いを丁寧に伝えて、読者と接点を持てるような場が新たに必要だと感じたんですね。

そこで、そういった「情緒的な価値」を伝える場として、2019年4月にキリンビール公式noteを立ち上げました。

noteを選んだ理由としては、前提としてコストが掛からず、スモールスタートできるという点があります。

また、noteにいる方々は、とても丁寧に自分の想いを発信されていて、その発信に共感した方々がTwitterで拡散したり、応援の気持ちを込めて課金したりする。

このカルチャーが土壌としてあるので、キリンの素直な想いを伝えやすく、持続的な運営が可能だと考えました。

 

より多くの方にキリンを知ってもらうことを目的に、お酒に強い嗜好性はないもののnoteのカルチャーが好きな方に向けて、主に投稿コンテストなどを実施しています。

これまでコンテストは4度開催し、一番最初に実施した「#社会人1年目の私へ」という企画では、2ヶ月で3,000件を超える応募がありました。

最上層は、きちんとファンの方々に届いているかを測るため、Twitterでのシェア数といったリファラル効果を見ています。

中間層は「他の記事も読みたい」と感じてくださったかの指標として、noteの「スキ数」を、最下層は読者との接点を増やせているかを測るために「ビュー数」を指標にしています。

このように、新たなデジタルプラットフォームを使って、素早く顧客とコミュニケーションを行ってみることが重要です。新たな顧客層の発掘や顧客のインサイトを拾い上げるきっかけになるかもしれません。

昨今、Clubhouseを始めとした音声のデジタルプラットフォームも注目され始めています(音声マーケティングの記事はこちら)。この機会に、ぜひそうした新しいプラットフォームにも目を向けていきましょう。

異色なUI/UXで競合ひしめく領域でファンを増加させるChompy

元記事:月次25%成長でファン増加中!Chompyの「プロダクトに感情を宿す」UI/UX設計の全容

フードデリバリーサービスChompyは、顧客の感情を強く意識したUI/UXをアプリに採用し、ファンを獲得しています。競合が多い領域において、合理的にサービス設計を行うだけでは、他のサービスと差別化ができません。顧客の感情を想像し、顧客接点を設計することがファン獲得にとって重要なポイントです。

「合理と感情」が共存するサービス設計と、すべての利用者が各店舗との繋がりを感じられるようなUI/UXにこだわることを決めました。

Chompy全体のイメージとして目指しているのは、「屋台感」や「食フェス感」です。検索のしやすさも大切にしていますが、そこに足を踏み入れる瞬間から購入までの体験や感情を想像して、サービスの導線を設計しています。

たとえば、実際に屋台街に入る瞬間は「◯◯屋さんがあるな」とか「賑わってるな」というのが遠目でも分かりますよね。そして食べたいジャンルをなんとなく想像しながら歩いていく。

少し近づくと料理や店員、そこに集うお客さんの雰囲気が感じられて。さらに近づくと、値段や細かい商品の内容、こだわりが分かる。そういった食選びの楽しさ」を体験できるUIにしています。

▼実際のアプリ画面(一部)

また、掲載する料理やスタッフなどの写真は、できるだけリアルかつ魅力的に伝えることにこだわって、すべて自社で撮影しています。

とはいえ、実際にお店に足を運べば五感で感じられるような、お肉を焼く音、香り、温かさ…そういった情報をアプリ上で伝えきるのは難しいです。

そこで、ソースをかけて湯気が立ち上る様子など、調理時のシズル感や臨場感を伝える15秒ほどの動画を投稿できる機能を追加しました。これらの工夫によって、オンライン上でありながらもお店のこだわりを最大限に表現できるようにしています。

▼ストーリー機能のイメージ

 

「屋台感」「食フェス感」「◯◯屋さんがあるな」「賑わってるな」「シズル感」「臨場感」など顧客の感情に関わる言葉が出てきたのが、とても印象的な事例です。顧客接点を設計する際は、ぜひ顧客の感情を言語化してみましょう。

5万人のファンをコミュニティ化したクレラップ

元記事:全国5万人のファンをコミュニティ化!「NEWクレラップ」のロイヤルユーザー育成法

「NEWクレラップ」の製造・販売を行う株式会社クレハは、2014年からオンラインコミュニティの運営を開始し、現在では5万人以上のファンが集う場になっています。

クレハは、成熟した市場においては価格競争をするよりも、愛着を持って購入し続けてもらえるロイヤルユーザーを増やすことが大切と考えました。そして、「NEWクレラップしか買わない」というコアなファンを増やすためにオンラインコミュニティをスタートしました。

オンラインコミュニティの運用では、ユーザーをライトユーザー、ミドルユーザー、ロイヤルユーザー、の3つの層に分け、コンテンツを出し分けるなどユーザー目線の運営を続けました。

更に、オンラインコミュニティで温度感が高まったユーザーをオフラインイベントに招待し、結果的に5,000人以上の参加者が集まったそうです。

クレハの事例から学べる点は、オンラインコミュニティは始めやすく発展性がある、ということです。製品に対するロイヤリティが上がる、ユーザー理解を深めることができる、オフラインの大きな企画につながる、といった発展の可能性があります。

コミュニティを開設した初年度は、料理レシピを中心に「こんな便利な調理方法や保存方法があります」といった内容を発信しながら、消費者が商品に対してどういうイメージを持っていて、実際にどう使っているのかという情報を集めました。

すると、これまで150回以上もの改良を加えてきた商品にも関わらず、その工夫したポイントや使いやすさが、消費者にはあまり認知されていないことがわかってきました。

そこで2年目からは、商品の特徴や改良の歴史を学べるような、ラーニングを目的とした発信の割合を増やすことにしました。

特に訴求したのは、商品の最大の特徴である「クレハカット」です。V字型の刃で、簡単にスパッと切れるように工夫を施したものですが、そういった商品の特徴や魅力を知っていただくことで、ロイヤルユーザー化を図っていきました。

▼実際にコミュニティに投稿した内容(一部)

 

また、運営側からコミュニティに投稿する質問は、ライトユーザー、ミドルユーザー、ロイヤルユーザーという3つの層に向けて出し分けました。

例えば、ライトユーザー向けには「どんなおにぎりが好き?」といった質問を、ミドルユーザー向けには「クレハカットをしてみた感想は?」のような質問を投げかけるイメージです。

そうしたコミュニケーションが日々飛び交う中で、最初は答えやすい質問だけに反応していたユーザーが、何度もコミュニティに遊びに来てくださるうちに、商品に関する質問にも答えてくださるようになりました。

また、コミュニティ運営と併行して、様々なリアルイベントを実施してきました。その中に、2018年から開催している「クレハカット選手権」があります。

全国主要5都市での地区大会と、その上位者での決勝大会からなるクレハカット選手権は、「30秒間で何個のお皿にラップがかけられるか」を競うイベントになります。

2019年の第2回開催では、競技以外にも様々な参加型コンテンツを用意した結果、5,000人以上のお客様にご参加いただきました。

いきなりオフラインの大きなイベントやコミュニティを企画するのは大変ですが、オンラインコミュニティであれば手軽に始めることができます。顧客接点のDXの取り組みとして、まずはオンラインコミュニティを始めてみてはいかがでしょうか。

以上、3社の顧客接点の事例を紹介させていただきました。もともとアナログだった顧客接点をデジタル化した事例や、初めからデジタル化前提で顧客接点を設計した事例まで様々でしたね。

DXを推進するためには全体の設計等も大切ですが、デジタル領域の取り組みを現場でとにかくやってみることも重要です。事例を参考にまずは小さくトライしてみると良いかと思います。

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