- コラボレーター
- 加藤 章太朗
BtoB企業におけるマーケティングの役割とは?営業と連携し成約を最大限高める方法
BtoBマーケティングが変化していることを肌で感じます。例えば、電話などを使ってPush型の営業をするのではなく、魅力的なコンテンツを作成し、SNSアカウントやオウンドメディアを通じてWEB上に発信することで、見込み顧客を惹きつけ、獲得するインバウンドマーケティングの事例が増えてきています。
また、獲得した見込み顧客の温度感を管理し、その温度感に応じた数パターンのアプローチを自動で行うマーケティングオートメーションも少しずつ浸透してきており、マーケティングを含めたB2Bの販売活動に革新が起きているようです。
<株式会社ビズリーチがマーケティングオートメーションを取り入れた事例>
まだ情報収集段階のお客様に「すぐにお会いしましょう。」というような強めのアプローチをしてしまって、結果として距離が生まれてしまうこともありました。そして反対に、今困っているお客様への連絡が遅れて、商談の機会を失ってしまうというケースも…。お客様対応の優先順位付けが、完全に個人のスキル頼りになっていたと思います。そしていよいよ個人技では対応しきれなくなってきて、「ルールを決めて科学的にアプローチをしないとまずい」と考え、WEB上での見込み顧客の温度感を可視化できるようなマーケティングツールを探すことにしました。
そこで、今回はBtoB企業のマーケティングの役割を整理したいと思います。
BtoBの販売活動の全体像
インバウンドマーケティング中心の販売活動は、一般化すると、マーケティング、インサイドセールス、営業、に分解できます。
マーケティングの役割は、見込み顧客を発掘し、受注確率がある一定以上になった見込み顧客をインサイドセールスに渡すことです。
インサイドセールスは、マーケティングから渡された見込み顧客に対して、電話やメールを通じてアプローチをします。顧客とコミュニケーションを行って、面談機会を作ったり、関係性を深めていく役割です。営業はインサイドセールスに渡された顧客をクロージングして成約まで持っていきます。
では、BtoB企業におけるマーケティングの役割をもう少し細かく見ていきましょう。以下の4つに分けてマーケティングの役割を整理します。
- 見込み顧客の発掘
- 見込み顧客のスコアリング
- インサイドセールスに渡す見込み顧客の定義
- 死に筋のスコアを上げる
BtoB企業におけるマーケティングの役割1〜見込み顧客の発掘〜
リアルイベントでの見込み顧客発掘
セミナーや展示会などリアルイベントの企画は、昔からある手法であまり変化はありません。ただし、海外を見ると単にイベントを開催するだけではなく、イベントをブランディングして参加者をコミュニティ化する取り組みが見つかります。
例えば、Adobeの99Uはリアルイベントをブランディングして強固なコミュニティにし、見込み顧客であるクリエイターとの関係性を強めています。
99U Conferenceは、クリエイター向けのリアルイベントで、Twitter創業者のジャックドーシーなどの起業家やクリエイターを招いて、アイデアをどう実行していくかを発表したりディスカッションする場になっています。
Adobeの99U Conferenceについて詳しく書かれた記事はこちら↓
【第2回】日本は5年遅れてる!? Adobeの99Uに学ぶコンテンツマーケティング事例
このように今後、見込み顧客を発掘するために、単にリアルイベントを開催するのではなく、長期的にリアルイベントを開催しコミュニティ化する、という手法が広がっていくかもしれません。
オウンドメディアでの見込み顧客発掘
オウンドメディア(自社メディア)を立ち上げてコンテンツを発信し、見込み顧客を惹きつける手法が広がっています。Red BullなどのBtoC企業の事例が有名ですが、BtoBでもSAPがエクゼクティブ向けに1日に10記事ほど更新するDigitalist Magazineというメディアを立ち上げるなど、少しずつ事例が出てきています。
【第3回】SAPに学ぶ BtoB企業のコンテンツマーケティングのポイント
オウンドメディア運営のポイントは、営業色を出さずに見込み顧客に役立つ情報を発信してファンを作っていくことです。具体的に「どのようにオウンドメディアを構築すべきか」についてはサイボウズ式の事例が参考になります。
特に自社メディアを運営している人が注意するべきなのは、「自分たちが伝えたい情報を伝えない」ことだと思います。理由は簡単で、それは、自分たちしか興味がない情報だからです。伝えたいことではなく、読者の方が「知りたい」と考えていることの発信に専念することが非常に大切です。
BtoB企業におけるマーケティングの役割2〜見込み顧客のスコアリング〜
限られたリソースで、見込み顧客に効率よくアプローチしていくためには、受注確率の高い先のみをインサイドセールスに渡すことが重要です。そのためには見込み顧客を受注確率に応じて分類分けする必要があります。この作業をスコアリングと言います。
スコアリングの方法は、そもそも成約するための資格があるのか、そして興味があるのか、という軸で分けるとうまくいくようです。
資格というのは、購入するポテンシャルがあるかという点。例えば、BtoB企業向けの顧客管理システムを提供している企業が、BtoCのゲーム会社に営業をかけても仕方がない。
そのため、この場合は「BtoB企業である」というのが、資格があるかを判断する1要素となります。実際はこれ以外にも、様々な要素が加わり、見込み顧客の資格スコアが決定します。
興味というのは、興味をどれくらい持っているかという指標で、見込み顧客の行動から判断できます。例えば、「メールマガジンのリンクを何回クリックしているか」「WEBサイトに訪れて資料をダウンロードしたか」といった行動の積み重なりをスコアに反映します。
スコアリングについて詳しく解説している記事はこちら↓
【前編】「死に筋」を「成約」に導く!マーケティングと営業の役割分担で販売活動を革新
このようにスコアリングの基準を決めて、顧客をスコアリングすると、一定のスコア以上の顧客をインサイドセールスに引き渡すことができるようになります。
BtoB企業におけるマーケティングの役割3〜渡すべき見込み顧客の定義〜
さて、スコアリングした見込み顧客のどこから先をインサイドセールスや営業に渡すか?という定義が重要なポイントで、マーケティングの役割になります。
過去の取材先の意見をまとめると、スコアがある程度上がっている見込み顧客はマーケティングからインサイドセールスにすぐ渡したほうが良いようです。
理由1 : マーケティングの仕事が膨大になる
その理由の1つは、マーケティングがすべき仕事が膨大になる点です。例えば、BtoB企業向けの顧客管理システムを作っている会社がフォローすべき見込み顧客は様々です。
- スコアE:顧客管理に興味すら持っていない。
- スコアD:顧客管理に多少の興味はあるが、自社について全く興味が無い。
- スコアC:顧客管理・自社にも興味を持っているが、具体的な検討を始めていない。
- スコアB:具体的な検討を始めていて、他社製品との比較をしている。
- スコアA:他社製品との比較も終わり、最後の一押しが欲しい。
スコアEの顧客をスコアDにあげるためには「顧客管理システムが世の中に広がっていることを示すトレンド記事」を作成して、メールで送る必要があるかもしれません。
また、DをCに上げるためには「自社の導入事例」をメールで送らなければいけないかもしれない。同様に考えると、1〜5のスコアを上げるためにすべき作業は膨大になり、多くをマーケティングが担うことはできません。
理由2 : 受注確率が高い先は営業が勝手にフォローする
受注確率がある程度上がっている見込み顧客はインサイドセールスに渡すべき理由の2つ目は、受注確率が高い先であれば、インサイドセールスや営業は勝手にフォローするという点です。成果を上げるために勝手にフォローするので、マーケティングはそこに対して何もする必要がありません。
これら2つの理由から、ある程度スコアが上がった見込み顧客はインサイドセールスや営業に渡したほうが望ましいと言う企業が多いです。
具体的にどのくらいの受注確率を渡すか?という定義は、製品やサービスの特性によると思いますが、いずれにせよここを定義するのがマーケティングの役割の1つです。
BtoB企業におけるマーケティングの役割4〜「死に筋」のスコアを上げる〜
このように見てくると、マーケティングがスコアを上げるべき見込み顧客は、受注確率が低い先や失注先といったインサイドセールスや営業がフォローしない先、ということが見えてきます。
例えば、BtoB企業向けの顧客管理システムに全く興味がない人のスコアを上げるとしたらどのようなことが考えられるでしょうか。顧客管理システムのターゲットはおそらく営業チームのマネージャーです。そのような人たちは顧客管理に興味がなかったとしても、売上をあげたり、営業チームのマネジメントには興味がある可能性が高いです。
そのため、「すべての営業マンのためのチームマネジメント」といったコンセプトのオウンドメディアを立ち上げて、営業の成果を上げるためのティップス・経験や、チームマネジメントに関するティップス・経験を発信していくという活動ができるかもしれません。
「顧客管理」というフレーズに直で反応しなかったとしても、「営業の成果」や「チームマネジメント」に反応をしてそのために顧客管理が大切なんだという意識を醸成していけるかもしれません。
また、メールマガジンを配信し、上記のコンテンツに誘導することもできます。この時に活躍するのが「マーケティングオートメーションツール」です。コンテンツを作り、どのスコアの人にどのコンテンツが有効かを定義すれば、あとは自動でメールを送ってくれ、スコアをあげる活動をしてくれます。
このように「死に筋」のスコアをあげていかに受注確率がある見込みに変えていくか、ということがマーケティングの役割の1つになります。
まとめ
マーケティングの役割を下記の4点に整理しました。
- 見込み顧客の発掘
- 見込み顧客のスコアリング
- インサイドセールスに渡す見込み顧客の定義
- 死に筋のスコアを上げる
インバウンドマーケティングもマーケティングオートメーションも以前からある概念ですが、それが実務レベルに落ちてきて、実践する企業が増えているように感じます。
今後も多くの会社の事例を見ながら、BtoBマーケティングがどう変わっていくかを追いかけたいと思います。