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ティール組織、VPoE、EX…2018年の「マネジメント変革」トレンドを徹底解説!

SELECK編集長の舟迫(ふなば)です。今年も終わりですね。早すぎ!

SELECKは2015年から運営しているWebメディアですが、カテゴリーが多岐にわたることもあり、色々な領域でその年の「トレンド」を見続けてきました

例えば…

2015年:UX・マーケティングオートメーション・ダイレクトリクルーティング

2016年:リファラル採用・カスタマーサクセス・動画マーケティング

2017年:OKR・AIチャットbot・データドリブン

※もちろん流行ったものはこれだけないですし、領域もバラバラだし、無理やり「年」でくくっている感はありますが…汗

ちなみに今年の5月には、SELECK3周年企画として、編集部が選ぶ!2018年「コレが来てる」ビジネストレンド集【10選】を公開しました。

そして今年を振り返ると、個人的には「もう2018年は『マネジメント変革year』だったわ」と思ったんですね。

ティール組織」が話題になったのは記憶に新しいですが、それに限らず、あらゆるところで組織づくりやマネジメントの話がされていましたし、新しい手法もどんどん広まっていきました。

そこで今回は、2018年のふりかえりとして、今年広まった「マネジメント変革のトレンドワード」を過去のインタビュー記事(事例)とあわせて徹底解説したいと思います。

▶本日紹介する「マネジメント変革のトレンド」

  • 組織は「自律分散型」の時代へ。ティール/ホラクラシー組織
  • マネジメントは「分権」が潮流。VPoEピアボーナス
  • 従業員の「体験」をより良くする。エンゲージメントEX
  • 【おまけ】2019年に大流行するのはたぶん…アジャイルHR

組織は「自律分散型」の時代へ。ティール/ホラクラシー組織]

今年、マネジメントの分野で最も話題になったトレンドワードは「ティール組織」かなと思います。

きっかけはフレデリック・ラルー氏の著書「Reinventing Organizations」の邦訳版である「ティール組織」のヒットでした。

ラルー氏は、組織運営のスタイルを5つの「色」で表現しています。そして、その中でも最も進化した組織の形が「ティール(青緑色)」です。

例えば「恐怖と暴力による統治」が行われるレッドに属するのは、マフィアやギャングのような組織。ヒエラルキーによる統治が行われるアンバーに属するのは、軍隊や教会といった組織です。

一方で「企業」を見てみると、その多くは資本主義の思想をベースとした「競争」「損得」によって統治が行われているため、オレンジ型ということになります

では、オレンジ型の組織とティール型の組織には、どのような違いがあるのでしょうか。

上図の通り、ティール組織は従来のようなピラミッド型の指示系統・意思決定の構造を持ちません。

いわば、従来の「中央集権型」の組織から、1人ひとりが自律し、自ら考えて行動・意思決定を行う「自律分散型」へとシフトしていると言えます。

まだまだ事例が少ないティール組織ですが、SELECKでは過去にその代表と言われているオランダ発の在宅介護の支援組織「Buurtzorg(ビュートゾルフ)」について取り上げました。

2006年に立ち上がったビュートゾルフは、およそ10年間で24ヶ国、1万人以上の介護士が働く組織に急成長を遂げた組織です。

その特徴は、マネージャーを持たない850ものチームが、「ビュートゾルフが進化する」という共通の目的のために完全に独立して運営されていることです。

【ビュートゾルフの組織の特徴】

  • 最大12名のスタッフからなる「チーム」で構成されている。
  • チームはビュートゾルフの6つの目標に沿って、自由に行動する。
  • チームは介護ケアなどの実務と、採用といったビジネスの両面をこなす
  • 850のチームを、45名のバックオフィスが支える。
  • 850のチームに15名のコーチがいて、議論の補助をする。
  • すべてのチームで情報、ノウハウ、アドバイスが共有される。
  • 上記を支えるITツール(「Buurtzorg Web」)を利用する。

参照情報:2016 Burrtzorg Study

日本にはまだまだティール組織と言える企業はほとんどないので、参考になるかと思います。

詳細はこちら:マネージャー不在の「ティール組織」ビュートゾルフの、ITを使った意思決定術とは?

また、ティール組織を実現するためのひとつの形態として、「ホラクラシー組織」があります。

ホラクラシー組織においては、権限は個人ではなく、「ロール」と称される役割に委ねられています

そして、各ロールの責務の決定や、人の任命、更には「ひずみ」と呼ばれる組織課題の解決、といった組織の意思決定プロセスのすべてには、「ホラクラシー憲法」というルールが適用されます

▼ホラクラシーの導入による組織の変化

SELECKでは今年、2018年3月よりホラクラシー憲法を導入した株式会社scoutyの組織運営についてインタビューを行いました。

詳細はこちら:組織に「法」があれば、マネージャーは要らない。「ホラクラシー組織」の運用実態とは

ホラクラシーの導入プロセスから、同社における評価・報酬制度の考え方までを詳しくお伺いしているので、ぜひ読んでみてください。

▼ホラクラシー組織を実践する、同社の組織図(※2018年10月時点のもの)

また、自社でオリジナルの自律分散型組織の形を追求している事例もあります。

株式会社ISAOでは、「99%の社員が、会社の未来を諦めかけていた」状態から、組織階層と管理職を撤廃した、「バリ(=超)フラット」という名の新しい組織形態へと移行。

「給与の適正化」「役職と階層の撤廃」「独自の目標管理手法の導入」といった組織改革を実行することで、赤字続きの状態を脱することに成功しました。

詳細はこちら:社員99%が諦めた会社の復活劇!役職ナシ・給与も公開する「バリフラット」な組織作り

▼「バリフラット」の組織形態の図(同社サイトより引用)

今後は日本でも、このように自律分散型の組織の形を追い求める企業が増えてくることは間違いないかなと思います。

マネジメントは「分権」が潮流。VPoEとピアボーナス

この「自律分散型」組織のトレンドとも重なるのですが、マネジメントの機能(目標達成、評価、育成etc)を「分権」する動きが加速していると感じています。

わかりやすい動きとしては、エンジニア組織における「VPoE(VP of Engineering)」の広まりが挙げられます。2017年の末に、一度解説の記事を出していました。

詳細はこちら:エンジニア組織を成功に導く「VP of Engineering」とは? CTOとの違いも徹底解説!

VPoEをひと言で表現すると、エンジニア組織のトップとして、マネジメントを担う存在と言えます。最高技術責任者である「CTO」とその役割を比較するとわかりやすいです。

【CTO】

  • 社内(組織)の中で、最も技術に強い存在
  • 技術課題に取り組む
  • アーキテクトであり、考察者であり、実験者であり、試験者
  • 技術戦略・技術方針を描くことに特化している
  • 多くの場合、創業期より技術面でその企業を支え、CEOやCOOのように経営に参画している

【VP of Engineering】

  • エンジニア組織を成功に導く、チームビルダー的な存在
  • 組織課題に取り組む
  • 高いコミュニケーション能力、課題解決能力が求められる
  • 採用、育成、マネジメント、プロダクトリリースなど、その業務は多岐に渡る
  • 他部署(マーケティング等)のリーダーと連携しながら、上級職メンバーとして業務を行う

このトレンドはエンジニア組織に限ったことではなく、例えば事業の成長とピープルマネジメントの役割を分担する、といった流れが加速していると感じています。

例えば株式会社Gunosyでは、マネジメントとプロダクトオーナーの役割を切り離し、CTO(技術責任者)・VP of Engineering(マネジメント責任者)・VP of Product(プロダクト責任者)の3頭体制に組織を移行。

マネジメントは「役割」のひとつ、という考え方のもとで、チーム単位でも、各プロダクトオーナーに加えてVPoEがピープルマネジメントを支えているそうです。

詳細はこちら:マネジメントは「役割」。CTO・VPoE・VPoPが3頭分立する、Gunosyのエンジニア組織

また、マネジメントの役割のひとつである「評価」に関して、今年は「ピアボーナス」という考え方が非常に広まったのかなと思っています。

ピアボーナスは、360度評価の一種です。従来の「上司が部下を評価する」という評価だけでなく、同僚や部下も含めた多角的な視点から評価を集めるための手法のひとつになります。

360度評価の詳細はこちら:360度評価(多面評価)とは? 現場のリアル事例とテンプレート、運用ツールまで【計7選】

具体的には、従業員同士がリアルタイムに「成果給(インセンティブ)」を送り合うことができる仕組みです。

日々見落とされがちな会社への貢献や成果に感謝の気持ちを表し、何らかの報酬を受け取れるようにすることができます。

▼ちなみに弊社では2017年から

「HeyTaco!」というツールを使ってピアボーナスを導入

 

例えば株式会社メルカリでは、2017年9月より「mertip(メルチップ)」と称したピアボーナスの仕組みを導入(取材は2018年のはじめに実施しました)。

毎週月曜に1人あたり400ポイントが配布され、「1ポイント=1円」として運用されています。受け取ったポイントは、毎月の給与とともに現金で個人に支払われる形です。

mertipを開始したことで、リアルタイムな360度からのフィードバックが、タイムライン上に蓄積されていくようになりました。今ではその情報を実際の「評価」の材料としても活かしているそうです。

詳細はこちら:同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス」運用の裏側

従業員の「体験」をより良くする。エンゲージメントEX

また、マネジメントにおける意思決定において「データ」を重視するトレンドが高まっています(敢えて言うのも恥ずかしいくらい、もう普通のことになっている)。

社員や組織に関するデータを収集・分析し、組織づくりに生かす組織開発の手法である「ピープルアナリティクス」の考え方もすっかり広まりましたね。

ピープルアナリティクスを実践するためには、まず自社の状態を定量的に可視化することが不可欠です。例えば…

  • 従業員のエンゲージメント(満足度)
  • 従業員の幸福度
  •  eNPS(従業員ロイヤリティ)
  •  新入社員の早期退職率
  • 優秀層の離職率
  • メンバーとマネージャー、それぞれの欠勤率

特に、従業員の「エンゲージメント(満足度)」を計測するツールを導入 or 自社で開発した企業は、この1年で急速に非常に増えたと感じています。

SELECKで取り上げた事例①:急拡大する組織でも「チャレンジ」できる環境を。LINE社のマネジメントを支える仕組み

SELECKで取り上げた事例②:メルカリをコピーするだけではダメ。設立9ヶ月で200名を超えた、メルペイの組織づくり

SELECKで取り上げた事例③:半年でeNPSが30ポイント改善!FiNCの、エンゲージメントを高める組織の作り方とは

皆さんの会社でも、定期的に組織についてのアンケートなどを実施するようになった方も多いのではないでしょうか?(ちなみに弊社もです)

そしてまた、従業員体験を意味するEmployee Experience(以下、EX)」を重視する企業も増えてきました。

プロダクト開発の現場では、User Experience(UX:ユーザー体験)という言葉があります。これは「ユーザーがプロダクトやサービスを通じて得られる体験」です。

一方でEXは、「UXの従業員版」と捉えることができ、「従業員が働くことを通じて得られる体験」を意味します。

EXを改善することで、従業員のエンゲージメントを高めることができ、その結果的として1人ひとりのパフォーマンスの向上や、離職率の低下につなげることができます。

EXの詳細はこちら:「Employee Experience(EX)」とは? 企業が「従業員体験」を向上させるべき理由

このように、従業員の状態をしっかりと把握し、それを向上させるためのマネジメントを実践することが、多くの組織で求められるようになっています

 

【おまけ】2019年に大流行するのはたぶん…アジャイルHR

ここまで、2018年の「マネジメント変革」トレンドを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

それぞれに対する理解を深めるための解説・事例記事へのリンクもたくさん貼りましたので、ぜひ参考にしてみてください。

そして、2019年。

個人的には、来年もこのマネジメント変革のトレンドは加速していくと考えています。

そしてその中でも、「アジャイルHR」という考え方は今より一層広がっていくのではないでしょうか。

このキーワード自体は、2015年あたりからすでに海外で注目を集めているものですので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

アジャイルという言葉自体は、「すばやい」「敏捷」という意味で、開発手法のひとつとして親しまれています。

アジャイル開発においては、短い開発期間を繰り返すことで、手戻りのリスクなどを最小化しながら開発を進めることが求められます

これを組織づくりに応用したものが、アジャイルHRの考え方です。

詳細は、今年の夏に公開したこちらの記事をご覧ください:AppleやUberも実践!組織を進化させ続ける「アジャイルHR」を始める4ステップ

既にアジャイルHRを実践している企業のインタビュー記事も公開しています。

詳細はこちら:「AI + ヒト」の力で、人事領域にもアジャイルな意思決定を。日本IBMのビジネスHR戦略

2019年はぜひ、アジャイルHRに注目してみてくださいね。

さて、本記事は、当媒体の2018年最後の配信記事になります。本年もSELECKをお読みいただきまして、誠にありがとうございました。

皆様、良いお年をお過ごしくださいませ!そして来年も、SELECKをどうぞ宜しくお願いいたします。

SELECK編集長 舟迫

「チームのパフォーマンスを最大化したい」と思うあなたへ

当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。

そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。

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