【6社のリアル事例】人事評価制度の実態とは? 2019年最新のトレンドも併せて解説

多くの企業で「課題」として認識されることも多いのが、人事評価制度です。

会社員であれば、誰でも一度は「評価」について考えた経験があるのではないでしょうか(そして、不満を抱いたこともあるのでは…)。

人事評価制度とは、社員のパフォーマンスを評価し、それを昇進や昇給といった待遇に反映させる社内制度のことです

以前は評価と言うと、下記のような特徴がありました。

  • 四半期、半年、一年など、一定の期間ごとに実施される
  • 「上司」が「部下」の評価に対して権限を持つ
  • 年功や能力、成果、職務といった基準が用いられる
  • 人事情報として取り扱われ、社内にはオープンにされない
  • 評価に応じて「等級(序列)」が決まり、それが報酬に反映される

しかし近年、人事評価制度は多様化しています。

自社のカルチャーや事業特性に合わせて、より個人の成長を促し、さらに従業員の納得感を醸成するような仕組みづくりに、多くの企業が取り組み始めています。

そこで今回は、国内企業6社の人事評価制度に関するリアルな事例を紹介しながら、そのトレンドを紐解いていきたいと思います。

<今回ご紹介する企業(掲載順)>

株式会社メルカリ、株式会社ISAO、株式会社ココナラ、アドビシステムズ株式会社、株式会社VOYAGE GROUP、株式会社ディー・エヌ・エー

※掲載事例は、すべてSELECKが2017年〜に実施した取材記事に基づいています。元記事の公開時期によっては、最新の情報ではないケースもございます(全事例に引用元を記載しておりますので、各記事の配信日はそちらで確認できます)。

6社の事例から見えてきた、人事評価制度のトレンド

まずは、人事評価制度の事例をまとめたことで、見えてきたトレンドをいくつか紹介します。

すべてのキーワードに関して、事例を後述しておりますので、気になったものがあればぜひ後半をチェックしてみてください。

①リアルタイム

以前は「評価」というと、四半期ごと、半年ごと、といった形で、ある程度の期間ごとに実施されることが一般的でした。

しかし、長期スパンでの評価には「記憶を遡る必要があるため、評価に時間がかかる」「直近の成果が反映されがち」といったデメリットがあります

そこで最近は、「リアルタイム」にフィードバック等を実施し、その情報を評価に反映させる企業が少しずつ増えてきています。

②360度評価

このキーワード自体は、割とおなじみかと思います。「上司」のみの意見で評価を決めるのではなく、複数のチームメンバーの意見を総合して、「360度の方向から」評価を決定する仕組みです。

「評価者によって評価が変わってしまう」という属人化を避け、個人の納得感とモチベーションを高めるために効果的です。

また、従業員同士で成果給を贈り合える「ピアボーナス」の仕組みを設けることで、同様の効果を狙う場合もあります。

③バリュー評価

評価項目の中に、社員に向けた行動規範である「バリュー」を取り入れる考え方です。

最近では採用時にバリューフィットを重視する企業も多く、それを評価にも取り入れていくことで、会社としての一体感を醸成していこうとしています。

④情報のオープン化・曖昧さの排除

評価や等級に関する情報は、「人事情報」として扱われ、非公開であることが一般的でした。

しかし、このブラックボックスを排除することで、より高いレベルでの納得感と、個人の成長の促進が可能になります

評価・等級自体ではなく、評価のプロセスや基準を明確化・オープン化するという場合もあります。

例えば「OKR」のような目標設定のフレームワークを用いて、評価基準を定量的に明らかにするのはその一例です。

⑤成長志向

「何のために人事評価制度があるのか」を考える際に、その目的の中でも「個人の成長」を重視し、制度を設計するものです。

評価面談の際に「成長のためのフィードバック」を重視したり、「ノーレイティング」によってマネージャーと部下の対話に重きを置くようなケースがこちらにあたります。

ここからは、実際の企業における人事評価制度の運用事例を紹介します。

【株式会社メルカリ】OKR、バリュー評価、リアルタイム、ピアボーナス

株式会社メルカリの場合は、「OKRによる目標達成度合い」と「バリューに沿った行動」の2軸で、四半期ごとに評価を実施しています。

しかし、3ヶ月に一度のスパンだと、記憶を遡ることに労力を使う上に、特に「バリューに沿った行動をしているか」という後者の評価が難しいという課題がありました。

そこで同社では、従業員同士で「成果給」を送り合うピアボーナスの仕組みを活用し、リアルタイムな360度フィードバックを蓄積

個人のバリューに紐付いた行動を可視化し、評価時期にはそれを参照できるようにしています。

参考:同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス」運用の裏側

【株式会社ISAO】フルオープン、リアルタイム、360度評価、成長志向

株式会社ISAOの特徴は、組織自体がマネージャー不在の「超フラット」な構造になっていることです。

その組織形態を実現するために、同社では12のグレードから成る「等級制度」を構築し、等級と給与を完全に連動させました

▼グレードを決める「要素」までを徹底分解


グレードは、自ら指名した2〜7人ほどの評価者からの360度フィードバックを元に決定されます

このグレードは、年中どのタイミングでも、リアルタイムに見直しが可能。さらに、こうした等級情報が社内にフルオープンになっているというのは驚きです。

中途半端ではない「フラット」な組織を実現するために、制度を徹底して作り込んでいます。

参考:評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度

【株式会社ココナラ】OKR、曖昧さの排除、成長志向

また、納得感のある評価制度を運営するために、目標設定の仕組みを見直した好事例が、株式会社ココナラです。

同社では、全社と個人の目標を連動させ、その結果を定量的に評価するために、OKRを導入しました。

会社の目標と連動した個人目標(KR)を1人あたり2〜4つほど定め、各KRに対して「ここまでいったら何点」という基準を、目標設定の際に決定します。

その達成度で評価を決めるため、曖昧さは排除されることになります。

また、評価・育成に関する議論を体系的に行うために、11段階から成る等級制度を設定しています。

▼グレードイメージ(画像は編集部で作成)


参考①:優秀な人が失敗するのは、目標が曖昧だから。敢えてトップダウンでOKRを運用する理由

参考②:評価に「曖昧さ」は不要。5つの軸で11段階のグレードを定める、ココナラの等級制度

【アドビシステムズ株式会社】ノーレイティング、成長志向

例えばアドビ システムズでは、従来の「年次」評価制度と、「レイティング(ランク付け)」の概念を捨て、新たに「チェックイン」という制度を開発しました。

これは、継続的な面談(チェックイン)を通じて上司と部下のリレーションシップを構築することで、社員1人ひとりの成長を後押しすることを目指すものです。

この制度においては、ランク付けをなくす代わりに、給与の裁量権をマネージャーに完全委譲しています。

結果的に、評価に対する納得感も高まり、離職率も低下したそうです。

▼「チェックイン」で話される3つのトピック

参考:ランク付けをやめ、納得感のある人事制度を実現。アドビ「チェックイン」運用の実態

【株式会社VOYAGE GROUP】成長志向、オープン化、外部評価者

エンジニアの評価制度を考える上で、非常に参考になる事例です。

株式会社VOYAGE GROUPでは、半年に一度、90分の成果発表とディスカッションを通じてエンジニアの評価を決定する「技術力評価会」を設けています。

既に7年ほど運用されていますが、毎回、全体にオープンな振り返りを行うことで、制度自体の改善を行っています

また、「社外」の専門家を「3人目の評価者」として招へいすることで、新しい視点を評価に取り入れていることも特徴です。

▼評価資料はGitHubのプライベートリポジトリで社内に公開

参考:社外の専門家も評価に参加!エンジニアを育てる、VOYAGE「技術力評価会」の裏側

【株式会社ディー・エヌ・エー】360度評価、オープン化

株式会社ディー・エヌ・エーでは、2017年7月より、全社約130名のマネージャー向けに、記名式の360度フィードバックをスタートしました。

こちらは「評価」に反映されているという形ではなく、マネージャーの課題や改善点の認識を合わせるために実施されています。

▼実際の360度評価

マネージャー間でフィードバックの活用法を検討したり、実際にフィードバックを元に改善を行ったマネージャーの事例を社内報で共有したり、といったことを行っています。

参考:上司・人事の承認ナシで異動OK!3ヶ月で20人超が利用した新人事制度・シェイクハンズ

▼フィードバックのスキルを高めたい方は、こちらのebookもおすすめです▼

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おわりに

SELECKでは、引き続き様々な会社の人事評価制度や、マネジメントの実態を取材していきたいと考えています。

事例が増え次第、追記していきますので、ぜひ定期的にチェックしてみてくださいね(※取材のご依頼も、右上の「取材依頼」から常時受け付けております!)

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