「エンゲージメント」の意義や重要性は? 企業の改善事例【5選】を紹介
※2020年9月1日更新
従業員が会社に対してどのくらい愛着を持っているか? を表す「エンゲージメント」を重視する企業が増えてきています。
従来、「Engagement」は、「約束」や「契約」を意味する英単語です。
「顧客が、ある企業や商品に対してどれだけの好意を持っているか?」を表すマーケティング用語としても使われますが、組織と従業員の関係性を表現する際にも用いられます。
所属する組織に対して強い愛着や信頼感を持っていれば、従業員のエンゲージメントが高いということになります。これが、「業務へのコミット度合い」や「離職率」などに影響します。
簡単に言うと、組織のエンゲージメントを高めることで、1人ひとりが熱量高く自発的に仕事に取り組むような状態を実現できるのです。
そこで今回は、エンゲージメントの高い組織を作る方法について、SELECKで取材した700社以上の事例を参考に解説していきます。
<目次>
- 【定義・意義】なぜ「エンゲージメント」が重要なのか?
- 【現状把握】まずは組織の状態をモニタリングする
- 【改善施策①】組織が一体となるための目標を設定する
- 【改善施策②】従業員のパフォーマンスを正しく評価する
- 【改善施策③】上司と部下間の良好な関係を構築する
- 【改善施策④】互いに賞賛し合う文化を作る
【定義・意義】なぜ「エンゲージメント」が重要なのか?
そもそもなぜ、エンゲージメントの重要性が増しているのでしょうか。
アメリカの世論調査会社「Gallup」の調査によると、エンゲージメントの上位25%の企業は下位25%と比べて
- 顧客満足度などの顧客指数は10%高い
- 生産性は17%高い
- 売上は20%高い
- 利益は21%高い
と報告されています。
※参考:Gallup Q12® Meta-Analysis Report
このようにエンゲージメントが企業経営に与える影響が高まっている背景として、以下3点の時代の変化が挙げられます。
①価値観の多様化と、人材の流動性の高まり
人生100年時代といわれる現代では、個人の人生プランの中に「転職」が既に選択肢として存在しています。
それ故、いかに従業員を自社に定着させ、優秀な人材を引き止めるかが大きな人事課題となっています。
「この会社で働きたい」と従業員に感じてもらえるか否かが、企業にとっては非常に重要になっています。
②労働人口の減少
特に日本では、労働人口の減少に伴い、多くの企業が人手不足に悩まされています。
パーソル総合研究所と中央大学が共同で発表したデータによると、2030年には644万人の労働力が不足すると予想されています。
※参考:パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」
人手不足を埋めるためには、従業員1人ひとりのパフォーマンスを上げる必要があります。そして、従業員のパフォーマンスを高めるカギとなるのがエンゲージメントです。
③インターネットやSNSの広がりで、情報の開示性が進んだ
インターネットの普及により、以前にも増して、その企業で働くことについての情報を簡単に知ることができるようになりました。
例えば転職に際しては、候補となる企業で働いていた従業員が投稿したレビューなどを簡単に読むことができます。
▼「Employee Experience Starbucks」で検索をした際の結果例
今後、企業は「この会社で働いてみたい」と求職者が思うような状態をを作り出す必要性に迫られていくと言えるでしょう。
では、具体的にどのような施策を行えば、エンゲージメントを向上させることができるのでしょうか?
【現状把握】まずは組織の状態をモニタリングする
【参考記事】上司・人事の承認ナシで異動OK!3ヶ月で20人超が利用した新人事制度・シェイクハンズ(株式会社ディー・エヌ・エー)
エンゲージメントについて考える際には、まず、組織の状態を把握する必要があります。
同社では毎月、「あなたは仕事で自身の能力を活用できていると感じますか?」「あなたは仕事をしていてやりがいを感じますか?」というシンプルな2つの質問を通して、従業員の役割に対する満足度を調査する組織サーベイを実施しています。
その上で、必要であれば部署を異動させることで、1人ひとりが自らの可能性を発揮しやすい環境を作っています。
社員の数が増えてくる中で、より正確かつ漏れなく状況を把握するために、アンケートでの定点観測を始めたんです。
この結果を人事とマネージャーで共有して、「今、お願いしている仕事がはまっていないかも」という風に、感覚で感じていることとアンケート結果をリンクさせて、何かしらフォローできないかということを考えています。
▼アンケート結果の一例
また、自社で組織サーベイの仕組みを自作し、エンゲージメントの計測を行っている企業もあります。
メルカリグループの金融領域における新たなチャレンジとして、2017年11月に数名でスタートした株式会社メルペイ。
設立から9ヶ月で社員数が200名を突破した同社では、社員への10項目・各10点満点のアンケートを通じて組織の状態を可視化する「組織スコアリング」の仕組みを独自で開発・運用。
そのスコアを毎月公開し、経営陣が組織課題とそれに対するアクションまでを全体の前で約束することで、社内制度に対する理解度・納得度を高めています。
例えばわかりやすいのは、「組織の戦略を理解していますか」という質問です。
これはもともと、課題に感じていたポイントでもあって。ベンチャー立上げ時は戦略もどんどん変わっていくので、全員がそれにしっかりキャッチアップしているのか、という不安があったんです。
実際に、最初は戦略の理解度に対するスコアもあまり良いとは言えず、「ロードマップ議論」もけっこうありましたね。(中略)今ではオンボーディングのプロセスに「戦略インプットの会」を組み込んでいます
【改善施策①】組織が一体となるための目標を設定する
【参考記事】優秀な人が失敗するのは、目標が曖昧だから。敢えてトップダウンでOKRを運用する理由(株式会社ココナラ)
「会社がどこへ向かっているのかわからない」「自分に求められている役割が不明瞭」と従業員に感じさせてしまうことは、組織のエンゲージメントを下げる要因になります。
同社では、会社と個人の目標をリンクさせる目標管理メソッド「OKR」を導入。
全員が自らの役割と目標を理解した上で業務を進められるよう、期初にマネージャーとの1on1を通した入念なコミュニケーションが実施されています。
全社目標を達成するために必要な戦略は、部門ごと、人ごとに分解できるはずですよね。
それをOKRで設定して、メンバー全員が達成したら、全社目標も自然と達成されるという筋道を立てることは、経営陣の責任だと思うんです。
【参考記事】Googleも採用する目標管理「OKR」を徹底解説!導入事例や運用ツールも紹介
「目標と主な結果」を意味する目標管理メソッド「Objectives and Key Results」、略してOKR。
目標(Objectives)を決め、その達成のために必要な要素を3〜4の成果指標(Key Results)に分解し、進捗をトラッキングしていく目標管理の手法です。
全社→部門→個人の目標を連動させることで、会社と個人の目標をリンクさせることが、OKRの最大の特徴です。
▼目標をブレイクダウンすることで、全社と個人の目標を連動させる
【改善施策②】従業員のパフォーマンスを正しく評価する
【参考記事】VOYAGEのエンジニア評価制度の全貌。「技術力評価会」による、人が育つ組織の作り方(株式会社VOYAGE GROUP)
良い組織作りを考える上で、評価制度の設計は特に難易度の高いテーマです。不適切な評価は、従業員のエンゲージメントを大きく下げる要因になります。
同社のエンジニア評価では、被評価者が自分の半年間の仕事の中から1つネタを選び、「ビジネスとしてどういう課題があったのか」「それを解決するために、どういう施策を考えたのか」を発表する「技術力評価会」を実施しています。
評価者との90分間の対話を通して、評価の判断軸を明確に伝えることで、評価の納得感を生み、また、被評価者の成長を促進しています。
最終的に、評価結果を出してもらうのですが、5段階評価のような点数はつけていません。
点数をつけていた時期もあったのですが、数字って独り歩きしちゃうんですよね。
そうではなくて、評価内容をしっかりと文章で書いて、文章で理解してもらう。その後のフィードバックでも補足しながら、しっかりと「伝える」というところに重点を置いています。
【改善施策③】上司と部下間の良好な関係を構築する
【参考記事】ランク付けをやめ、納得感のある人事制度を実現。アドビ「チェックイン」運用の実態(アドビシステムズ株式会社)
エンゲージメントの高い組織を作るためには、社内で良好な人間関係が築かれていることが大切です。
同社では、マネージャーと部下が、個人の成長にフォーカスした内容で1on1の面談を定期的に行う「チェックイン」を実施しています。
「期待(Expectations)」、「フィードバック(Feedback)」「キャリア開発(Development)」の3つのトピックについて、定期的にコミュニケーションをとることで、従業員のパフォーマンスを向上させることに成功しました。
従業員は、マネージャーと頻繁に自身の成長について話すことで、「マネージャーに見てもらえている、サポートされている」と感じられるようになりました。
これにより、以前よりチャレンジに積極的になったり、パフォーマンスが上がるようになったんです。
従業員アンケートの結果も、「アドビを働きがいのある会社として勧められる」と回答した社員が10%増え、「上司からのフィードバックが役立つものである」と回答した社員も、同じく10%増加しています。
【改善施策④】互いに賞賛し合う文化を作る
【参考記事】賞賛と評価の可視化がカギ!マネジメント層を成長させる「人が辞めない」組織作りとは(Fringe81株式会社)
どうしても、会社の中では「成果を数字で測りやすい人」「声の大きい人」ばかりが評価されがちです。
この課題を抱えていた同社では、「◯◯さんがバグをこっそり潰してました!」というような、目立ちにくい仕事を讃える「発見大賞」というMVP制度をスタート。
さらにその評価を報酬にも反映させるべく、ピアボーナス(成果給)の仕組みを導入しました。
「評価」を可視化するために、ピアボーナス(成果給)の仕組みを2016年7月から導入しました。
具体的には、従業員が互いにポイントを送り合えるシンプルなシステムを構築し、一定数のポイントを貯めたら、Amazonギフト券と交換できる仕組みを作ったんです。
【参考ツール】「タコスの送り合い」で組織改革!?気軽にピアボーナスが導入できる「HeyTaco!」とは
チャットツール「Slack」にて、誰かに向けて、タコスの絵文字付きで賞賛のコメントを送る「HeyTaco!」。
それまでは目立たなかった良い仕事を、組織内で簡単に可視化することができます。
▼タコスの絵文字を付けて、賞賛のコメントを送る
さいごに
エンゲージメントを左右する要因と改善施策について、事例を交えて紹介をさせていただきました。
どの組織においても、より改善できる何かしらのポイントがあると思いますので、まずはアンケート等を通して、現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか?
今後もSELECKでは、エンゲージメントの高い組織を作っている事例をご紹介させていただければと思いますので、ぜひ、ご覧いただけますと幸いです。