【保存版】エンジニア採用・組織づくりを成功させる、最先端企業15社の事例を総まとめ
日本の労働市場における大きな課題である「IT人材」の不足。経済産業省の調査(2019年3月)によると、2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足するといわれています。
中でも特に深刻なのが、「エンジニア」の人材不足です。
多くの企業が開発の内製化に踏み切る中、その担い手であるエンジニアの採用を加速させており、採用市場は激戦化する一方。
更には、十分にエンジニアを採用できたとしても、その組織づくりに苦戦し、組織崩壊や離職を招いてしまうといった課題もあります。
そこで本記事では、これまでSELECKで取材をしてきた「エンジニア採用・組織づくり」の事例をまとめてお届けします。
企業のエンジニア組織規模(※取材時)ごとに分類してお届けしますので、ぜひ、自社のフェーズにあった事例をご覧いただき、参考にしてはいかがでしょうか。
※掲載事例は、すべてSELECKが過去に実施した取材記事に基づいています。企業規模などの各情報は、取材当時のデータですのでご了承くださいませ(全事例に引用元を記載しておりますので、各記事の配信日はそちらで確認できます)。
<目次>
- 【立ち上げ〜50人規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
- 1人目のエンジニア採用は「狩り」の姿勢で挑んだ:プログリット
- 「最初の3名がすべて」ゼロからの開発組織づくり:イオンドットコム
- 「一本釣り」の採用で組織が急成長&多様性が生まれた:キャディ
- エンジニア組織とビジネスサイドをつなぐ「スクワッド組織」:READYFOR
- エンジニアが10名に満たないタイミングでのチーム分離:hokan
- 【〜100人規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
- 開発組織の70%がリファラル入社!文化が福利厚生に:Ubie
- 「多拠点・多人種」のエンジニア組織の在り方:AnyMind Group
- CTO・VPoE・VPoPの3頭分立でマネジメントを分業:Gunosy
- 【〜300人規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
- 「エンジニア100人採用」の宣言で組織規模を2倍に:ヘイ
- 自ら「価値判断」できるエンジニアを育成する:GMOペパボ
- 既存業務を抜け、好きなテーマで開発に挑戦できる「巨匠制度」:freee
- 【数百人〜規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
- CTO直下のDevRel組織がクリエイターの熱量をつなぐ:ヤフー
- 全社の開発業務を1週間止める「Mercari Hack Week」を開催:メルカリ
- 巨大な「技術的負債」に立ち向かい、エンジニア組織を再編:ラクスル
- 100名→30名→600名に。ゼロから開発組織を再構築:クラスメソッド
【立ち上げ〜50人規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
まずは、エンジニア組織の立ち上げ期における事例を5社ご紹介します。
1人目のエンジニア採用は「狩り」の姿勢で挑んだ:プログリット
英語コーチングサービスを展開する株式会社プログリットでは、創業時より英語学習をアプリで完結させる世界観を描いていたものの、社内にエンジニアはおろか、テクノロジーの知見を持ったメンバーが誰もいない状態でした。
そこで、制作会社への外注という形でアプリ開発に踏み切ったものの、度重なるトラブルにより三度、白紙状態に。こうした背景から、開発の内製化を決意し、エンジニアの採用をスタートしました。
「ブランドでは勝てないからこそ、狩りにいく」スタイルで採用活動を行った結果、2020年には最初の正社員エンジニアの採用に成功し、現在は6名のエンジニア組織を編成しています。
記事はこちら:「三度の白紙化」を経てアプリ開発を内製化。プログリットのエンジニア組織立ち上げの全貌
「最初の3名がすべて」ゼロからの開発組織づくり:イオンドットコム
小売業界の最大手である、イオングループ。そのデジタル事業を担うイオンドットコム株式会社では、2015年に最初のエンジニアが入社。その後、開発の内製化を目指してさらなるエンジニアの採用を開始しました。
それにあたっては、「最初の4名が組織の文化をつくる」という考えのもと、最初のエンジニアに続く3名は大切に、2ヶ月ほどかけて採用。「その人と空港で一晩を一緒に明かせるか」という人間性と、「自分よりもスキルが高い人」というふたつの基準を軸に、紹介と採用媒体を用いて活動を実施しました。
結果として翌年の2016年には、50名規模の開発組織をつくることに成功しています。
記事はこちら:リアルとデジタルの融合で業界トップへ!イオンドットコム、ゼロからの開発組織づくり
「一本釣り」の採用で組織が急成長&多様性が生まれた:キャディ
製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」を運営するキャディ株式会社。2021年8月には、シリーズBラウンドにて海外を含めた複数の投資家から総額80.3億円の大型資金調達を行ったことでも話題になりました。
その創業期では、「生きるか死ぬか」という状態にありながらも、「一本釣り」方式で少しずつエンジニアを採用。その結果として、非常に多様性のあるチームがつくれたといいます。
現在は40名強が所属する同社の開発組織ですが(※2021年10月の取材時)、2023年までには180名規模に達することを目指し、採用と組織づくりに取り組んでいます。
記事はこちら:製造業×BtoBの「スルメ的」面白さを伝えたい。キャディ開発組織が挑む壁
エンジニア組織とビジネスサイドをつなぐ「スクワッド組織」:READYFOR
クラウドファンディングサービス「READYFOR」を運営する、READYFOR株式会社。
同社では、組織全体が100名、エンジニアが10名を超えた頃から、フロントエンド・バックエンド・プロダクトマネジャーといった役割ごとにチームを分け、OKRを用いてそれぞれが異なる目標を設定していました。
しかし2020年1月には「組織の中にエンジニアリングが自然に溶け込んでいる『乳化』の状態」 を目指し、「スクワッド組織体制」を導入。異なる職種のメンバーがワンチームとなって、同じ目標を追うための仕組みづくりを行いました。
記事はこちら:組織の「乳化」を目指す。職種を超えた連携を生み出す「スクワッド組織」運営とは
エンジニアが10名に満たないタイミングでのチーム分離:hokan
2017年に創業し、保険営業のためのクラウド型顧客・契約管理サービス「hokan」を提供する、株式会社hokan。
同社では、まだエンジニアが10名に満たない2020年のタイミングで、CRE(カスタマーサクセスを担うエンジニア)専任のチームを立ち上げました。
アーリーフェーズからプロダクト開発とCREを分離し、それぞれが100%各領域に専念できるようにしたことで、開発速度を落とさずにお客様対応の品質を向上させることができたといいます。
記事はこちら:顧客継続率99.4%!ユーザーの不安を解消するエンジニア「CRE」をhokanが導入した理由
【〜100人規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
続いては、立ち上げフェーズを経て、拡大フェーズに入ったエンジニア組織の事例を3社ご紹介します。
開発組織の70%がリファラル入社!文化が福利厚生に:Ubie
2017年に創業し、気になる症状から関連する参考病名と適切な受診先を調べられるアプリ「AI受診相談ユビー」などを展開するUbie株式会社。
累計調達額は44.8億円を達成し、創業4年で130名を有する組織に成長した同社では、開発組織である「Ubie Discovery」の採用経路のうち70%をリファラルが占めるといいます。
リファラルによって優秀メンバーが続々と入社したことで、結果的に「社内に合う人しかいない」という状態になり、それがUbieの福利厚生のひとつと言えるほどになったのだそうです。
記事はこちら:専任人事ナシ、リファラル70%。Ubie社が向き合うスタートアップ採用の最前線
「多拠点・多人種」のエンジニア組織の立ち上げ:AnyMind Group
2016年の創業後、世界13マーケット、17拠点に事業を拡大し、累計の資金調達額は6,200万ドル(約68億円)を超えるAnyMind Group株式会社。
同社のサービスを支える7つのプロダクト開発を担うのは、およそ70名から構成されるProduct Developmentチームです。
同チームでは、スピーディーに成果を発揮することを何よりも重視し、「チームは小さく」「スプリント(開発サイクル)は1週間で回す」「マネジメントは現場の邪魔をしない」「個人には多めに任せる」「個人よりチームの目標達成にフォーカスする」といった方針のもとで、組織づくりを行っています。
記事はこちら:創業5年で13ヵ国に展開!AnyMind社の「現場の意思決定を邪魔しない」開発チームの在り方
CTO・VPoE・VPoPの3頭分立でマネジメントを分業:Gunosy
多角的なメディア展開で成長を続ける株式会社Gunosyは、2015年4月に東証マザーズ、2017年12月に東証一部への上場を達成。しかし、上場に向けて突き進む中で、マネジメントを強化できず、組織全体が疲弊してしまう状態にあったといいます。
そこで組織を立て直すべく、CTOによる「1頭体制」をから、CTO(技術責任者)・VP of Engineering(マネジメント責任者)・VP of Product(プロダクト責任者)の3頭体制にエンジニア組織を移行しました。
ピープルマネジメントは「役割」のひとつという考え方のもと、各プロダクトオーナーをVPoEが支える形をとっているのだそうです。
記事はこちら:マネジメントは「役割」。CTO・VPoE・VPoPが3頭分立する、Gunosyのエンジニア組織
【〜300人規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
続いては、さらなる組織拡大によって権限委譲も進んでくるフェーズの事例を3社ご紹介します。
「エンジニア100人採用」の宣言で組織規模を2倍に:ヘイ
ネットショップ開設やキャッシュレス決済、オンライン予約システムなど、「お商売のデジタル化」を支援する「STORES プラットフォーム」を展開するヘイ株式会社。
同社の社員数は現在350名ほどで、うちエンジニアは100名ほどですが(※2022年4月時点)、2022年中に「エンジニア100人採用」を目標に掲げ、仲間を2倍に増やしていこうとしています。
その達成のため、メンバーの働きやすさをサポートする人事・福利厚生制度の追加に加えて、エンジニア組織の「マニフェスト」の制定を行うなど、「攻め」の採用戦略と「守り」の組織づくりを展開しています。
記事はこちら:エンジニア100人を採用する!heyの開発組織が描く「攻めと守り」の採用戦略とは
自ら「価値判断」できるエンジニアを育成する:GMOペパボ
約100名のエンジニアを有する(※2018年10月の取材時)、GMOペパボ株式会社では、2012年より「立候補制」を取り入れたエンジニアの職位制度を運用してきました。
具体的には、8段階あるグレードの4〜6等級について、立候補者に対する昇格審査を半期に一度実施(※取材時)。面談でのディスカッションを通じて「立候補した職位に相応しい」と認められると、昇格する仕組みです。
その背景には、立候補制にすることで「エンジニア自ら、課題設定や行動の価値を判断してほしい」という思いがあるといいます。
記事はこちら:自ら「価値判断」できるのがプロフェッショナル。「立候補制」で昇格審査をする理由
既存業務を抜け、好きなテーマで開発に挑戦できる「巨匠制度」:freee
2012年に創業し、「クラウド会計ソフト freee(フリー)」などを開発するfreee株式会社では、創業から5年で100名以上のエンジニアを採用してきました。
同社では社員が20名規模の頃から、経営陣を中心にリファラル採用を強化。専用の管理ツールを用いて効率的な運用を実現していることもあり、他の採用手法と比べ、採用に至る決定率が非常に高いのだといいます。
また、入社後に活躍できる環境を作るべく、2週に1度のペースでの1on1を実施したり、一定の期間、既存業務を抜けて好きなテーマで開発にチャレンジできる「巨匠制度」も導入しています。
記事はこちら:創業から5年で100人以上のエンジニアを採用!freeeの開発組織づくりの全貌
【数百人〜規模】のエンジニア採用・組織づくりの事例
最後に、数百名を越えて紛れもなく「大企業」と呼べるフェーズに入った企業の事例を4社ご紹介します。
CTO直下のDevRel組織がクリエイターの熱量をつなぐ:ヤフー
ヤフー株式会社では、以前から現場で行われていたDevRel(※)活動を統括する形で、2018年にCTO直下のDeveloper Relations組織を立ち上げ。
※Developer Relationsの略で、自社製品やサービスと開発者の良好な関係性を築くためのマーケティング・技術ブランディング手法
年に一度開催されるテックカンファレンス「Yahoo! JAPAN Tech Conference」をはじめ、ハッカソンイベント「Hack Day」、クリエイター向け勉強会コミュニティ「Bonfire」など、多岐にわたる施策を運営しています。
また社外向けの発信に留まらず、社内のクリエイター(エンジニア、デザイナー)が「ヤフーで働いていて良かった」と感じられるような機会の提供や、誰でもDevRel活動に参加できるアソシエイト制度の運用も行っているそうです。
記事はこちら:ヤフーの「DevRel」って何する人? 社内外クリエイターの熱量をつなぐ取り組みの全貌
全社の開発業務を1週間止める「Mercari Hack Week」を開催:メルカリ
株式会社メルカリでは、半年ごとにエンジニアが「自由に」開発できる期間を設けることで、非連続な技術力の成長を後押ししています。
従業員1,000人を越え、数百名のエンジニアを有する同社では、上場した2018年頃から組織が急拡大したことで「個人の裁量が減った」「目標ドリブンになりすぎて、新しい技術の習得が難しい」といった声が挙がり始めていたといいます。
そこで、開発スケジュールにメリハリをつけることや、新しい技術を検証してプロダクトに還元することを目的に、エンジニアのための技術のお祭り「Mercari Hack Week」を開催。100以上のアイデアが生まれ、その中には実際のプロダクトに実装された機能もあるのだといいます。
記事はこちら:全員参加の技術の祭典!「自由な開発」で成長スピードを高める、メルカリの組織づくり
巨大な「技術的負債」に立ち向かい、エンジニア組織を再編:ラクスル
ラクスル株式会社では、2017年に「Raksul Platform Project」を立ち上げ。「触れば誰でも怪我をする」PHP40万行、JavaScript10万行という規模の巨大なアプリケーションが抱えた技術的負債の返済に着手しました。
その目的は、既存ラクスルを解体し、一枚岩のシステムを機能ごとに小分けすること。それにより、個々に独立したチームが、アジャイルに顧客に価値を届けられる状態を目指しました。
結果として、機能別の小さなチームの中で開発効率を追求できるようになり、多角化な事業展開に大きく貢献できたといいます。
記事はこちら:成長事業の代償「技術的負債」を解消する!既存ラクスルの「解体」が生んだ新たな価値
100名→30名→600名に。ゼロから開発組織を再構築:クラスメソッド
2004年に創業し、累計1,300社以上のAWS導入実績を誇る、クラスメソッド株式会社。
技術力を強みに急成長を遂げている同社ですが、実は2012年前後にはおよそ100名いた社員が30名に落ち込み、そこからエンジニア組織をイチから再構築していったのだそうです。
その取り組みの中では、ほぼ機能していなかった人事考課の仕組みを整備し、40項目におよぶ360度評価の導入や、ミドルマネジメント層の擁立などを実行したといいます。
記事はこちら:崩壊しかけた組織が「自走」するまでの軌跡。ゼロから始めるエンジニア組織の作り方
今回は以上になりますが、いかがでしたでしょうか。読者の皆さまにとって、エンジニア採用・組織づくりにご参考になる事例がありましたら幸いです!