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HRBP、CX、Twitterマーケetc…2019年の「ビジネストレンド」を総まとめ!【7選】

みなさま、こんにちは!SELECK編集長の山本です。今年も残すところ、あと数日となりました。2019年、みなさまにとってどのような年だったでしょうか。

個人的には「SELECKゆるのみ」という読者さんとのコミュニティを起点に、新しいコンテンツを生むことができ、今後につながる1年だったなぁと感じています。

さて、SELECKは「現場の先進的な事例」を追いかけるメディアです。業界や業種を特定せず、幅広いトピックを扱っています。その特性をもとに、今年公開した全88記事を振り返ってみると、「2019年のビジネストレンド」が見えてきました。

今回は、以下7つのキーワードから、2019年のビジネストレンドについて事例とともに解説したいと思います。

<2019年に注目されたキーワード7選>

  1. HRBP
  2. アジャイルHR
  3. CX(候補者体験)
  4. Twitterマーケティング
  5. 交通広告
  6. セールス・イネーブルメント
  7. 社会人インターン

おまけ:2020年の注目トレンド「iPaaSの登場で、SaaSがもっと盛り上がる」

※2018年のビジネストレンドは、以下記事をご覧ください。

1. 経営と人事、そして社員をつなぐ。事業に資する人事【HRBP】

HRBPとは「HR Business Partner」の略称で、経営と人事、事業と人事をつなぎ、会社や事業の成長を人事の目線から推進する役割です。

※詳しくはこちら:【徹底解説】経営を推進する戦略人事「HRBP」とは? 最新の海外動向から国内事例まで

2018年の人事界隈では、ティールやホラクラシー、OKR、1on1などの「手段」が注目されがちであったのに対して、2019年に感じた最も大きな変化は「事業に資する人事」をしていますか? という「本質」への問いかけであったように思います。

その役割を担う「HRBP」は、先進企業では数年前から導入されており、今年の人事界隈で注目を高めたトピックのひとつです。

SELECKでも、GEヘルスケア・ジャパン社、カゴメ社、DeNA社に、HRBPをテーマにした現場の事例を取材させていただきました。

HRBPの存在意義として、重要なのは経営と人事をつなぐ・事業と人事をつなぐ、ということだと思っています。なので、実際の肩書はHRBPではなく、人事部長でもCHROでも何でも良くて。(中略)

なので肩書は何でも良いですが、心持ちとして、単に「会社の人事機能を担う」のではなく、人事の視点から経営を見て、経営と人事をつなぐ。社長が今まで1人でやってきたことを、組織的にやっていく、ということが大切だと思っています

記事はこちら:HRBPは「事業に資する」人事。人事戦略から採用、評価まで、DeNAの戦略人事の動き方

HRBPといっても、採用から組織づくりまで業務領域は多岐に亘りますし、会社ごとに取り組みの内容は異なります。

自社の経営や事業にしっかりと目を向け、目的に応じて手段を使い分けることのできる人事が求められています。

2. 「計画と振り返り」でタスクの属人化を解消!【アジャイルHR】

昨年末のマネジメント変革トレンドの記事で「2019年に来る」と予想したアジャイルHR。それを導入する企業が、増えてきました。

「アジャイル(agile)」は、「すばやい」「敏捷」といった意味を持ち、もともと開発手法のひとつとして親しまれてきた言葉です。

短い「計画と振り返り」のサイクルを繰り返し、状況に応じて柔軟に優先順位を変えながら、スピーディに問題解決を行う。その開発手法をHRに転用したのが、「アジャイルHR」です。

2018年よりアジャイルHRを導入した、クックパッド株式会社の採用グループでは、業務の属人化が解消され、1人ひとりがより主体性を持って仕事に取り組めるようになったといいます。

▼カンバンでチームのタスク進捗を可視化(イメージ図は編集部作成)

記事はこちら:アジャイルHRの導入で、自律的なチームが生まれる。クックパッド採用チームの取り組み

また、サイボウズ株式会社の新卒採用チームでも、試行錯誤を繰り返しながら、自らのチームに合う形で「スクラム(アジャイル開発の一手法)」を運用しています。

<スクラム運用の独自ルール(※取材時点)>

  • タスクの所要時間を基準としたポイントづけ
  • 複数人でのタスク書き出し
  • 振り返りにおける「Try」の完了条件の明確化

記事はこちら:新卒採用チームにスクラムを導入!試行錯誤で「挫折」を乗り越えた、サイボウズの軌跡

型としてはシンプルですが、その習得が難しいアジャイル。他社事例を参考にしながら、自分たちのチームにフィットする形を模索するのが良さそうです。

さらに、HRだけでなく、中期経営計画の策定にも「アジャイル」の思想を取り入れた事例もでています。

株式会社エーピーコミュニケーションズでは、あえて未完成な中経を全社員に公開し、α版、β版、1.0版という3段階に分けて社員のフィードバックを受けながら修正し、少しずつ計画を策定していったといいます。

記事はこちら:全社員で「アジャイル中期経営計画」を策定!「伝わる・実行される」経営計画の作り方

アジャイルは、HR以外のチームでも取り入れられる思想なので、ぜひご参考になさってください。

3. 採用のUXが重視される時代へ【CX(候補者体験)】

2017年頃から「EX(Employee Experience:従業員体験)」が注目を集めてきましたが、今年はさらに入社に至る前のCX(Candidate Experience:候補者体験)」の向上に取り組む企業が増えてきました。

※詳しくはこちら:【事例3選】「CX = Candidate Experience」を徹底解剖!今「候補者体験」が注目される理由

株式会社メルカリでは、選考プロセスの体系化や、面接官トレーニングの導入などによって、CXを高める取り組みをしているそうです。

▼実際の選考プロセス(どのフェーズで何を見極めるかを整備)

記事はこちら:面接官100名超の共通言語をつくる!「CX」の最大化を目指す、メルカリの取り組みとは

また、株式会社グッドパッチでは、自分が候補者だった時のマイナス体験や、候補者からヒアリングした内容を活かすことで、結果的にCXの向上を実現したといいます。

採用数や採用単価、通過率といった目の前のことももちろん大事なのですが、その結果として、「組織がどうなったか」ということに目を向けることが大事だと思っています。これは、私も以前は考えられていなかったです。(中略)

その中でもがき続けて、結果的には、離職率や売上をはじめ、会社の数値が良くなっていた。もちろん批判されて辛いこともありましたし、全てが正しいとは思いませんが、やってきたことは間違ってなかったな、と。

それこそ、候補者の体験を作ることは組織を作ることだし、組織を作ることが会社や事業の成長につながる。こうしたことを実際に経験して、気が付いたのがいまなんですよね。

記事はこちら:CX(候補者体験)の向上が、組織の復活を後押し!グッドパッチの採用担当に聞いてみた

同社の「候補者の体験を作ることは組織を作ることであり、組織を作ることが会社や事業の成長につながる」という目線は、CXにおいて忘れてはならないポイントです。

4. SNSで唯一「ハック」できるチャネル【Twitterマーケティング】

マーケティングにおいては、2019年は「Twitter」が一番のトレンドだったように思います。

SNSの中でも、Twitterはプライベートグラフや関心のつながりを越えて情報を届けられる唯一のチャネルです。普段は届かないような潜在層に、Twitterだけは飛び越えて届くことができるため、「Twitterをハックする」ような動きが広まってきました。

献立アプリ「タベリー」を運営する株式会社10Xでは、Twitterをハックするために、ツイートの「真似しやすさ」と「生っぽさ」を意識して、UGCの増加を目指しているといいます。

▼実際の「生っぽさ」のある投稿

記事はこちら:Twitterはアプリ「外」のコミュニティ。タベリーが6ヶ月でフォロワー数を50倍にした方法

また、BtoBマーケティングにおいても、Twitterを活用している企業が増えています。

株式会社ホットリンクでは、社員1人ひとりがそれぞれの得意な領域についてツイートすることで、企業の認知度を高めることに成功したそうです。

そのポイントは、単にフォロワーの数を増やすことではなく、「関係性の濃い村」に入り、所属できるように発信していくことだといいます。

つまり、Twitterは縦軸で存在している「村」がある。ここの関係性の濃さの方が重要なので、本当は数が多いことが正義ではないですね。(中略)

でも、それは本質的じゃない。何千、何万人との薄い関係性だと、結局は発信しても流れてしまって見られないんですよ。逆に、100人しかフォロワーがいない人が500人いる村に入ったら、ここに自分の発言が常に届き続ける。これってめちゃくちゃすごいことですよね。

記事はこちら:個人のTwitterが「主戦場」!BtoBマーケティングにおける「指名検索」の増やし方とは

Twitterは、来年も引き続きビジネスチャネルとして重要な役割を担うと思いますので、ぜひ他社事例を参考に取り組んでみてください。

5. マスマーケはTVCMだけじゃない!電車やタクシーetc…【交通広告】

2019年は、マスマーケティングにも変化が訪れました。特に、BtoBマーケティングにおける「交通広告」の活用が急増したと感じています。

従来、マスマーケの主流はTVCMでした。ですが、Webマーケと比べてトラッキングしづらいために、費用対効果が測りづらいという難点がマスにはあります。

その中で、電車やタクシーなどの交通広告は、通勤・移動中の「ビジネスマン」にアプローチしやすいため、SaaSを中心としたBtoBサービスの出稿が増えています。

営業に特化したWeb会議システムを提供するベルフェイス株式会社では、調達資金の約半分にあたる2.5億円を交通広告に投資。市場の啓蒙と新規獲得を実現しています。

また同社では、効果検証をする際に「ユニットエコノミクス(※)」の考え方を採用しているといいます。

※ユニットエコノミクス:1顧客あたりの経済性のこと。「LTV(顧客の生涯価値)÷CAC(顧客獲得コスト)」によって計算される。

そうしてCMの効果を検証していく中で、途中からユニットエコノミクスの考え方を取り入れました。

というのも、認知獲得という短期的な効果だけでなく、CMを見てベルフェイスに関心をもってくれた人が後日問い合わせたり、契約を更新してくれたり、といった中長期的な効果があると考えていて。

交通広告をみて資料請求されたお客様が、商談でステップアップしていったかをSalesforceの記録に残すことで、成約に対する費用対効果も追えるようにしました。

記事はこちら:2.5億円を「交通広告」に投資!「ヒラメ筋CM」がベルフェイスにもたらした効果とは?

交通広告を開始した企業の多かった、2019年。来年は、その効果検証をふまえた現場の事例をお伝えしていけたらと思います。

6. 営業の「科学」が加速する【セールス・イネーブルメント】

営業においては、属人化を排除をする「仕組み化」を進める動きが活発でした。なかでも、注目を高めている取り組みが「セールス・イネーブルメント」です。

セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とは、アメリカで先行して広まった、IT活用や研修制度の整備などを通じて営業組織を強くする取り組みのことです。

多くの先進事例では「人材開発」が中心ですが、Sansan株式会社では、2018年4月にセールス・イネーブルメントの組織を立ち上げ、採用から案件マネジメント、教育、評価制度まで、根本的な営業改革を行ったといいます。

たとえば案件マネジメントでは、受注確度による3段階評価をやめ、「顧客の購買プロセス」をベースに営業プロセスを定義し、そのプロセスに紐づく形に変更しました。

▼営業プロセスの全体像

記事はこちら:「最強の営業組織」を創る!Sansan「セールス・イネーブルメント」による改革の全貌

営業プロセスや判断基準を明確にし、オンボーディングを強化することで、組織が拡大しても特定のハイパフォーマーに頼らない体制を構築することができます。

また、データをうまく活用することで、少人数でレバレッジの効くセールス体制をつくっている企業もあります。

LAPRAS株式会社では「データをもとに仮説を立て、確からしいものを仕組み化していく」という方法で、セールスの属人化を排除しています。こちらの事例も、ぜひご参考ください。

記事はこちら:個人の「成約件数」は追わない。セールスをデータで仕組み化し、人に依存させない方法

7. 複業などの働き方が多様化。企業の即戦力に【社会人インターン】

最後に、2018年1月の「副業解禁」によって個の働き方が多様になり、正社員以外の就業形態を取り入れる企業が増えてきました。その中で社会人インターン」を制度として導入し、成果を出している企業があります。

株式会社POLでは、創業して間もない頃から「社会人インターン」を受け入れはじめ、エンジニアからビジネスサイドまで、幅広い職種のメンバーが組織の「経験不足」を埋める活躍をしてきたといいます。

創業してまもない頃って、マネジメントや事業経験のある人の採用がなかなか難しくて。その役割をインターンの方々が担ってくれて、実際に上手く回っていたので、2018年頃から社会人インターンの採用を強化し始めました。

この2年で、累計30名ほどが社会人インターンとしてジョインしており、その内10名がそのまま社員として入社しています。さらに、これから入社予定の5名も、インターン経験者です。

その職種は、営業、広報、新規事業からエンジニアまで、多岐にわたっていますね。

記事はこちら:採用する側も、される側もハッピー!累計30人が参加した「社会人インターン」の全貌

優秀な人材の採用が困難になっている今、正社員に限らない就業形態を検討し、「社会人インターン」のような制度を設けることは、ひとつの解決策になるかもしれません。

また同社に、社会人インターンを受け入れる際に気をつけているポイントを教えていただきました。お互いに気持ちよく働けるような環境づくりは大切ですね。

<社会人インターンの受け入れTips>

  • 後回しになりがちな「緊急度が低く、重要度の高い」仕事を任せる
  • 情報オープン化と権限委譲により、コミットメントを引き出す
  • 社会人インターンを「リソース」として捉えず「ファン」化を目指す

2020年は…「iPaaS」の登場で、SaaSがもっと盛り上がる!(予想)

人事からマーケ、営業まで、幅広いジャンルから「2019年のトレンド」と思われるキーワードを選定させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

ひとつお伝えしておきたいのは、毎年「トレンド」はあるものの、日々の取り組みは一過性のものではなく、自分が解決すべき課題に実直に向き合い、地道に進めていくことが大切だということです。

実際、ここでは挙げませんでしたが、たとえばOKRや1on1など、数年前からの試行錯誤を経て以前より深化したような事例もたくさんありました。時流を掴み、他社の事例を参考にしつつも、ぜひ自分たちに合う形で実践していただけたらと思います。

そして最後に!2020年、なにが来るのか。個人的には、2019年の取材を通じてSaaSの勢いが一段と増してきたなという肌感があり、2020年はさらに加速するのではと考えています。

その理由として、ひとつはインサイドセールスやカスタマーサクセスなど、SaaSのオペレーション体制の科学化がこの数年でかなり進んだこと。

来年は、レベニューの視点からSaaSの分業体制に横串を通す「CRO(Chief Revenue Officer)」の役割が、より重視されるのではと思います。

記事はこちら:めざすはレベニューの最大化!SaaSの分業体制に横串を通す「CRO」の役割とは

そして、国内のSaaSをつなぐ、国産の「iPaaS(アイパース)」の登場が、SaaSの勢いを強めるふたつめの理由です。

iPaaS(integration Platform as a Service)とは、すごく簡単にいうと、SaaS同士をAPIでつないで、業務の自動化を進めるようなツールです。

▼国産iPaaSの「Anyflow」サービス動画

記事はこちら:新規事業の「成功確率」をどう高める? 数々のピボットから学んだ、市場選定の3軸とは

仕様変更が頻繁に起こるSaaSでは、RPAだとすぐ止まってしまうという問題がありますが、iPaaSではAPIでツール間を連携しているため、その問題が生じません。

クラウドサービスを活用する企業が増えているなかで、2020年、iPaaSの登場が仕事の生産性を高め、SaaSの導入を後押しすることになりそうです。

本年も、SELECKをご愛読いただきありがとうございました。引き続き、仕事に役立つ現場の事例を発信していきますので、来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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